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m 「合成」節を増やした。あと、CAS登録番号は、アルシンの性質を何ら表さないので、templateに書いてあれば、本文には必要無いです。無論、Chemboxのtemplateを使用しないなら、本文に書くしかないですけれども……。
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'''アルシン'''
# ヒ素の水素化物。本稿で詳述する。({{lang-en-short|arsine}})
# [[帝政ロシア]]における長さの[[単位]]。({{lang-en-short|arshin}})。[[アルシン (単位)]]を参照。
# カナダのプロボクサー、[[ヨアキム・アルシン]]。
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| OtherFunctn = [[アンモニア]]<br />[[ホスフィン]]<br />[[スチビン]]<br />[[ビスムチン]]}}
}}
 
'''アルシン''' ({{lang-en-short|arsine}}) )とは、[[化学式]]が AsH<sub>3</sub> と表される[[ヒ素]]と[[水素]]の[[化合物]]である。'''水素化ヒ素''' ({{lang-en-short|arsenic hydride}}))や、'''ヒ化水素''' ({{lang-en-short|hydrogen arsenide}}) とも呼ばれる。[[分子量]] 77.95、[[CAS登録番号]]は [7784-42-1]
 
== 性質 ==
アルシンの化学式はAsH<sub>3</sub>であるため、その[[分子量]]は、77.95である。アルシンの常圧における[[融点]]は-116 ℃、[[沸点]]は-62 ℃なので、常温常圧では気体として存在する。なお、気体のアルシンに色は無い。
* [[沸点]] -62 ℃
* [[融点]] -116 ℃
 
[[立体構造]]は[[アンモニア]]に近いが、水素の[[結合角]]はアンモニアのそれよりも小さく直角に近い。[[極性溶媒]]に溶けやすく、有機溶媒に溶けにく。しかし、窒素の電気陰性度3.0のアンモニアとは異なり、ヒ素の電気陰性度は2.0なのに対して、水素の電気陰性度は2.1と、極性が弱いためアルシンは水素結合作らない。
{{仮リンク|ヒ化カルシウム|en|Calcium arsenate|de|Calciumarsenat|nl|Calciumarsenaat|ru|Арсенат кальция|sh|Kalcijum arsenat|sr|Kalcijum arsenat|zh|砷酸鈣|fa|کلسیم آرسنات|ar|زرنيخات الكالسيوم}}などに希[[硫酸]]を作用させると発生する。
: <chem>Ca3As2\ + 3H2SO4 -> 2AsH3\ + 3CaSO4</chem>
[[ニンニク]]に似た特徴的な臭気を持つ、無色の[[気体]]。ニンニク臭は、不純物の[[テルル]]によるものとも言われる。熱、光、水分によって分解され、ヒ素と[[水素]]を生じる。燃焼すると[[水]]及び[[三酸化ヒ素]]を生じる。[[酸化剤]]と爆発的に反応する。
 
アルシンは[[還元]]作用を示し、例えば、[[硝酸銀]]水溶液に通ずると[[銀]]を遊離する。なお、その[[標準酸化還元電位]]は以下の通りである。
ヒ素を含む試料に[[亜鉛]]と希硫酸を作用させるとアルシンが発生し、水素ガスと伴に燃焼させて炎を冷たいガラスまたは磁製皿に触れさせると単体のヒ素が付着し、光沢のある「ヒ素鏡」ができる。これは[[マーシュ法]]と呼ばれるヒ素の検出法の一つである。
 
[[立体構造]]は[[アンモニア]]に近いが、水素の[[結合角]]はアンモニアのそれよりも小さく直角に近い。[[極性溶媒]]に溶けやすく、有機溶媒に溶けにくいが、極性が弱いため水素結合は作らない。
 
[[還元]]作用を示し、[[硝酸銀]]水溶液に通ずると[[銀]]を遊離し、その[[標準酸化還元電位]]は以下の通りである。
: <chem>As\ + 3H^+\ + 3 \mathit{e}^- = AsH3\ ,</chem> ''E'' &ordm; = -0.225 V
: <chem>2AsH3\ + 12AgNO3\ + 3H2O -> 12Ag\ + As2O3\ + 12HNO3</chem>
 
猛毒濃厚な硝酸銀水溶液あり{{仮リンク|米国産業衛生専門家会議|en|American Conference of Governmental Industrial Hygienists|it|American Conference of Governmental Industrial Hygienists}}(ACGIH)ヒ化銀を含む黄色勧告による許容濃度は、時間加重平均濃度にて 0.005 [[ppm複塩]]。吸入した場合、血液・腎臓に影響 Ag<sub>3</sub>As&middot;3AgNO<sub>3</sub> あり死に至沈殿すのように、そある。も還元性を示す物質な症状で、強力な[[酸化剤]]と数時間から数日遅れて現れることもあるため医学爆発な経過観察が必要とされに反応する。[[がって、引火]]・[[し易く、爆発]]しやすいに至る場合もあるので取り扱いには注意を要する<ref>危険性とその対処については[http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0222c.html 国際化学物質安全性カード]にまとめられている。なお2009年5月現在、リンク先では許容濃度について『0.005 ppm (TWA) への変更を提案中である (ACGIH 2006)。』となっ書かれているが、これは ACGIH 2007 にて実際に変更された。</ref>
濃厚な硝酸銀水溶液ではヒ化銀を含む黄色の[[複塩]] Ag<sub>3</sub>As&middot;3AgNO<sub>3</sub> が沈殿する。
 
なお、酸素との反応、すなわち、燃焼すると、[[水]]及び[[三酸化ヒ素]]を生じる。
猛毒であり、{{仮リンク|米国産業衛生専門家会議|en|American Conference of Governmental Industrial Hygienists|it|American Conference of Governmental Industrial Hygienists}}(ACGIH)の勧告による許容濃度は、時間加重平均濃度にて 0.005 [[ppm]]。吸入した場合、血液・腎臓に影響があり死に至ることもある。その症状は数時間から数日遅れて現れることもあるため、医学的な経過観察が必要とされる。また[[引火]]・[[爆発]]しやすいので取り扱いには注意を要する。<ref>危険性とその対処については[http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0222c.html 国際化学物質安全性カード]にまとめられている。なお2009年5月現在、リンク先では許容濃度について『0.005 ppm (TWA) への変更を提案中である (ACGIH 2006)。』となっているが、これは ACGIH 2007 にて実際に変更された。</ref>
 
[[シェーレグリーン]]という顔料を[[カビ]]や[[バクテリア]]で分解すると、アルシンが発生する。
そもそもアルシンは比較的不安定な化合物であり、熱・光・水分によって分解され、ヒ素と[[水素]]を生じる。
 
== 毒性 ==
ヒトに対してアルシンは猛毒であり、{{仮リンク|アメリカ合衆国産業衛生専門家会議|en|American Conference of Governmental Industrial Hygienists|it|American Conference of Governmental Industrial Hygienists}}(ACGIH)の勧告によるアルシンの許容濃度は、時間加重平均濃度にて 0.005 [[ppm]]である。アルシンを大量に吸入した場合、血液・腎臓に影響が出て、最悪の場合には死に至る。
 
アルシンの曝露された結果の症状は、数時間から数日遅れて現れる場合もあるため、その間は医学的な経過観察が必要とされる。
 
== 合成 ==
例えば、{{仮リンク|ヒ化カルシウム|en|Calcium arsenate|de|Calciumarsenat|nl|Calciumarsenaat|ru|Арсенат кальция|sh|Kalcijum arsenat|sr|Kalcijum arsenat|zh|砷酸鈣|fa|کلسیم آرسنات|ar|زرنيخات الكالسيوم}}など[[硫酸|希硫酸]]を作用させると発生する。
 
: <chem>Ca3As2\ + 3H2SO4 -> 2AsH3\ + 3CaSO4</chem>
 
この合成法によって合成したアルシンは、ニンニクに似た特徴的な臭気を持つとされるが、このニンニク臭は、不純物の[[テルル]]による匂いだとも言われる。
 
また、ヒ素を含む試料に、触媒として[[亜鉛]]を加えて、そこに希硫酸を作用させるとアルシンが発生する。このようにて発生させたアルシンを、水素ガスとに燃焼させて、その炎を冷たいガラスまたは磁製皿に触れさせると単体のヒ素が付着し、光沢のある「ヒ素鏡」ができる。これは[[マーシュ法]]と呼ばれるヒ素の検出法の1つである。
 
なお、これは積極的な合成法ではないものの、[[シェーレグリーン]]という呼ばれる顔料を[[カビ]]や[[バクテリア]]分解すると、アルシンが発生し得る。
 
== 用途 ==
[[ヒ化ガリウム]] (GaAs) や[[ヒ化インジウム]] (InAs) 等の化合物半導体の原料として重要である。アルシンを原料としての半導体製造においては、[[有機金属気相成長法]](MOCVD)や[[分子線エピタキシー法|ガスソース分子線エピタキシー法]](GS-MBE)が用いられる。原料ガスとしてアルシンを管内に送り込むこと方法均等に層を積み上げる成長工程を担う<ref>[https://www.tn-sanso.co.jp/jp/business/electronics/products/mocvd.html]</ref>。
 
== 有機アルシン ==
有機化学において、水素化ヒ素を親化合物とし、一般式が RR<sup>1</sup>R<sup>2</sup>As(各置換基は H または有機基)と表される一連の誘導体も、俗に「アルシンと呼ばれる。[[トリフェニルアルシン]] ((C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>)<sub>3</sub>As) など、[[配位子]]としての用途がある。
 
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
* [[ホスフィン]](PH<sub>3</sub>)
* [[水素化アンチモン]](SbH<sub>3</sub>)
* [[セレン化水素]]
* [[テルル化水素化ビスマス]](Bi<sub>3</sub>)
 
{{水素の化合物}}
{{ヒ素の化合物}}
{{Normdaten}}
 
{{DEFAULTSORT:あるしん}}
[[Category:無機化合物]]