「余部橋梁」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
m編集の要約なし
235行目:
現橋梁は2007年3月29日着工、2010年8月11日に切り替え工事が完成し、同年8月12日に開通した。総事業費は30億円。架設位置は旧橋梁よりも約 7 m 南側(内陸側)で、これに伴い、餘部駅のホーム位置が従来線路の南側にあったものが北側に変更された<ref name="Kami" />。橋梁の構造は[[プレストレスト・コンクリート]]製のエクストラドーズド形式を用いており、上部は桁上高さ 5 m の主塔から張られた斜材が桁を吊っており、下部は橋脚4基と橋台2基で構成。旧橋梁時代に問題視されていた部分において、高さ 1.7 m の透明アクリル製防風壁を整備して風速 30 m/s まで運行可能となったことで定時性確保・向上を図り、コンクリート製となり橋梁上に[[バラスト]]も敷かれたため騒音も大きく軽減され<ref>{{Cite web|url=http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003306604.shtml|title=余部新橋に一番列車 地元住民ら開通祝福|publisher=神戸新聞|date=2010-08-12|archiveurl=https://web.archive.org/web/20101009135034/http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003306604.shtml|archivedate=2010年10月9日|accessdate=2010-12-27|deadlinkdate=2017年9月}}</ref><ref name="asahi20100812" />、落下物に関しては20年確率での積雪量を想定した貯雪スペースを設けた構造にして橋下への落雪を防止するなどの各種対策が施されている<ref name="detail_design" /><ref name="Tamura_p157" />。
 
デザインは「直線で構成されたシンプルな美しさ」「風景にとけ込む透明感」が魅力的な部分であり<ref name="kobe20100811-2" />、旧橋梁のイメージ印象を取り入れて薄い橋桁にする<ref name="kobe20100811-2" />など、スレンダーで細く直線的なイメージ印象を継承するように設計された<ref>{{Cite web|url=http://www.shimz.co.jp/ir/pdf/108zentai.pdf|title=第108期 報告書|format=PDF|page=42(PDFとしてのページ数はp.43)|publisher=[[清水建設]]|accessdate=2010-12-25}}</ref><ref name="ce200907">{{Cite web|url=http://www.nikkenren.com/doboku/ce/ce0907/project.html|title=[プロジェクトナウ]余部橋梁改築工事|publisher=CE / 建設業界([[社団法人]] 日本土木工業協会)|date=2009年7月号|accessdate=2010-10-10}}</ref>。
 
=== 架け替えの議論と進展 ===
257行目:
下部構造は橋脚4基と橋台2基で構成され、旧橋梁と同様に起点の京都側から第1号 - 第4号の橋脚番号が付けられている<ref name="history_and_design" />。このうち第1号から第3号の橋脚の太さが 4 m, 第4号が 3 m である<ref name="history_and_design" />。また支間は橋台から第1号の間が 50.1 m, 第1号 - 第2号と第2号 - 第3号が 82.5 m, 第3号 - 第4号が 55.0 m, 第4号と橋台の間が 34.1 m となっている<ref name="history_and_design" />。この支間の配置は、第1号と第2号の間を長谷川および国道178号が通ること、既設橋梁の橋脚を避けて新しい橋脚を建設する必要があること、上部工張り出し架設のバランスなどを考慮して決定された<ref name="history_and_design" />。橋脚の高さは第4号の 33.67 m から第1号の 36.0 m までばらつきがあり、また地下に最大 23.0 m におよぶ杭を打ち込んで基礎としている<ref name="history_and_design" />。橋脚の下部3分の1ほどについては、下から見上げたときの視覚的不安を解消するために末広がりの構造となっている<ref name="history_and_design" />。余部橋梁は橋脚の高さが比較的高く、地震で損傷したときの修復工事に難があることから、特に高い耐震性を確保するように設計されている<ref name="history_and_design" />。
 
上部構造は、高さ 3.5 m の一定高さの桁橋となっている<ref name="history_and_design" />。これはデザインコンセプトとして「旧橋梁のイメージ印象を継承する橋」としたことから、スレンダーなデザイン細身の意匠とするために採用されたものである<ref name="detail_design">「余部橋りょう改築における橋りょう詳細設計」</ref>。またこのコンセプト構想から、主塔の高さも 3.5 m と低く抑える設計を当初は検討していたが、地元からの「よりシンボリックにするため、主塔を高くしたい」という要望があり、主塔とケーブルの保守管理性も考慮のうえで 5.0 m の高さとなった<ref name="detail_design" />。
 
橋の上に敷設する軌道は、長大スパンのPC橋でクリープや乾燥収縮による桁そりの変化量が大きいことから、保守性を考慮して[[バラスト軌道]]を採用している<ref name="detail_design" />。これにより騒音も軽減された<ref name="Tamura_p157">『余部鉄橋物語』p.157</ref>。またPC橋であり軌道の間が空いていないことから、軌道間から吹き上げる風の列車への影響がなくなると共に、列車からの落下物が地上に到達することもなくなった<ref name="Tamura_p157" />。風対策として高さ 1.7 m の防風壁が整備されて風速 30 m/s まで運行可能とし、眺望を確保するため材質は透明アクリル板を用いた<ref>{{Cite web|url=http://www.ryoutan.co.jp/news/2010/08/01/002465.html|title=鉄鋼からコンクリートへ 余部橋梁架け替え着々|publisher=[[両丹日日新聞]]|date=2010-08-01|accessdate=2010-09-27}}</ref>。余部地区は降雪が多く、橋梁にも積雪対策が必要とされたが、水による融雪方式では地上から高さ 40 m の橋上まで水をポンプアップする設備が必要となりその保守などに手がかかることから、経済性にすぐれる貯雪方式が採用された<ref name="detail_design" />。20年確率での積雪量 116 [[センチメートル|cm]] を想定して軌道脇に貯雪スペースが設けられており、橋の下への落雪を防いでいる<ref name="detail_design" /><ref name="Tamura_p157" />。また、将来的に[[鉄道の電化|電化]]される場合にも対応できる構造とされている<ref>『余部鉄橋物語』pp.134 - 135</ref>。