「マクラーレン・MP4/4」の版間の差分

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当初、1988年に向けてのモノコックデザインはマクラーレンの元テクニカルディレクターであった[[ジョン・バーナード]]がデザインした前年用「[[マクラーレン・MP4/3|MP4/3]]」をリファインして使用する予定であった<ref name="THAS 61">『THE HERO AYRTON SENNA』三栄書房、2012年、p.61、ISBN 978-4-7796-1425-5</ref>。しかし、レギュレーション改訂によってドライバーの足を前車軸より後ろに下げる規定(新フットボックス規定)が定められたこと、[[ブラバム]]から[[ゴードン・マレー]]が加入していたことなどが重なり、MP4/3までの大柄なスタイルから一変。MP4/4はマレーが2年前に設計し「[[ヒラメ|フラットフィッシュ(ヒラメ)]]」の異名をとった[[ブラバム・BT55]]とよく似て全高が低く、[[抗力|ドラッグ]]が少ないデザインとなった。
 
マレーの[[風洞実験]]によるデータでは、シートの角度を通常より寝た姿勢となる35度にすることで、7%優れた空力特性を得られる利点が判明していた。7%数字が変わるというのはそれまで聞いたことも無い数であり、マレーは前年ブラバム所属時代のBT55設計時からこのアイディアの導入を強く望んでいた。マクラーレン合流後に[[スティーブ・ニコルズ]]と[[ニール・オートレイ]]にも図面を見せ、このコンセプトに賛同を得られたことからMP4/4のドライバーポジションは強く寝ているマシンとなった。マレーによると、このマシンに乗る際にドライバーはそれまでには無かったような角度に体を斜めに寝かせ、首を立てる姿勢になるが、それには慣れが必要で特にプロストは姿勢よく背中を立てた状態で座りたがるスタイルだったため、シェイクダウン直後のテストではプロスト用のシートは角度を上げてアジャストしていた<ref>レース・トゥ・パーフェクション ~偉大なるF1の歴史~(3) [[Sky Sports]] 2020年</ref>。しかしそれだとヘルメットの位置が理想の位置より上になってしまうため気流を遮断してしまい、セナよりタイムで損をするだけでなくコクピット内に大量の空気が入り込むことが判明したので、プロスト用のシートポジション設定はかなり時間がかかった。マレーの要請により、搭載したホンダの[[ホンダ・RA168E|RA168Eエンジン]]も、前年型のRA167Eから[[クラッチ]]と[[フライホイール]]を小径化することなどで全高は50mm以上<ref name=rcengines108>{{Cite book|和書
|author=イアン・バムゼイ
|translator=三重宗久
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モノコックを低くしたためフロントサスペンションは前年までのようなプッシュロッドがレイアウトできず、ガイドローラーを介したプルロッドとなった。
 
ターボエンジン最終年のこの年、燃料搭載量が195Lから150Lに引き下げられ、ターボエンジンに求められる[[燃費]]性能はより厳しくなった。しかしホンダはこの条件を逆手にとり、低燃費ハイパフォーマンス技術を駆使して他のエンジンメーカーを圧倒した<ref name="Gallery"/>。
 
ホンダ・RA168Eエンジンは大きく3つの仕様が投入された。開幕戦の[[1988年ブラジルグランプリ|ブラジルGP]]ではXE1型と呼ばれるものが使われたが、第2戦の[[1988年サンマリノグランプリ|サンマリノGP]]ではXE2型を投入した。XE1型ではスロットルバルブが各シリンダに配置されていたが、XE2型ではスロットルバルブがエアチャンバーの手前に移動された<ref name=rcengines108 />。これはターボの過給圧を2.5バール以下でより正確にコントロールするためである<ref name=rcengines108 /><ref>[[GPX (雑誌)|GPX]] 1988年サンマリノグランプリ号 p29. [[山海堂 (出版社)|山海堂]]</ref>。第4戦[[1988年メキシコグランプリ|メキシコGP]]では、より高回転で高出力を得ることができるXE3型が投入された。これは主に高地対策によるもので(メキシコGPは高度2300mの[[エルマノス・ロドリゲス・サーキット|メキシコシティ]]で開催のため)メキシコ同GPのみで使用。以後のレースではXE2型が使用された<ref name=rcengines108 />。
 
シーズン前半までは、[[サイドポンツーン|サイドポッド]]上面に[[シュノーケル]]状のダクトを設け、そこからターボへと空気を送り込んでいたが、[[1988年イギリスグランプリ|第8戦イギリスGP]]ではサイドポッド上のダクトを廃し、サイドポッド前端から入る空気をターボに送り込むようにダクトをデザイン変更したマシンを持ち込んだ。ところが初日である金曜日にこのマシンは不調だったため、その金曜の夜のうちにシュノーケル状のダクトを付けた仕様に戻され<ref>{{Cite book