「柔道整復師」の版間の差分

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== 業務内容 ==
[[打撲]]、[[捻挫]]、[[脱臼]]および[[骨折]]などの各種損傷に対して、外科的手術や投薬といった医療的手技を使用せずに、その回復を図ることを目的に施術を行う<ref name="hellow_work"/>。柔道整復師法改正後は、[[医業類似行為]]に分類され、法定4種の医業類似行為([[按摩|あん摩]]・[[鍼|はり]]・[[灸|きゅう]]・柔道整復)の1つである<ref>[https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000011dm5-img/2r98520000011dps.pdf 厚生労働省に寄せられた「国民の皆様の声」の集計報告について 平成23年1月31日 厚生労働省  大臣官房総務課情報公開文書室 (本省受付分)p3]</ref><ref>[https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1a.html 医業類似行為に対する取扱いについて 平成三年六月二八日 医事第五八号]</ref>。
 
柔道整復師は、各種損傷をまず評価し、[[関節]]や[[骨]]を適切な位置に整復して固定する。その他に柔整マッサージなどの手技療法、運動療法、温熱などによる[[物理療法]]も用いられる<ref name="hellow_work"/>。ただし、骨折や脱臼の処置の場合は、[[医師]]の同意が必要とされる(緊急の場合はこの限りではない)<ref name="hellow_work"/><ref>柔道整復師法第十七条</ref>。[[レントゲン]]装置なども使用することは出来ない。[[厚生労働省]]は平成16年の国会答弁で、柔道整復師の業務としては一般的に『骨折、脱臼、打撲、捻挫』等の「急性期の新鮮な状態」に対する施術であるという認識を示しており<ref name="syugiin1590024">[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/159/0035/15903010035001.pdf 予算委員会第五分科会議録(厚生労働省所管)第一号  平成16年3月1日 』]</ref><ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/063/0200/06303120200004a.html 第063回国会  社会労働委員会  第4号 昭和四十五年三月十二日(木曜日)]</ref>、按摩や鍼灸が扱うような慢性期の疾病は柔道整復師の扱う対象ではないとしている<ref name="syugiin1590024"/>。慢性期の疾病に対して施術を行い、急性期の病名を付けて保険請求することは[[療養費の不正請求]]となる。
 
== 正式名称 ==
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== 養成 ==
=== 養成学校 ===
厚生労働省管轄の施設と、[[文部科学省]]管轄の施設の2種類がある。また形態としては、[[専門学校]]、[[短大]]、[[大学]]、[[夜間学校]]など多様な形態があるが、いずれも3-4年制の施設である。[[柔道整復師学校養成施設指定規則]]により、各施設に求められる要件が定められている<ref>柔道整復師法第十二条</ref>。養成施設数は1998年の14校だったものが2015年には109校に急増し、定員も1050人から8797人に増加した<ref name="Shingikai-10801000">[https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000106911.pdf 柔道整復師学校・養成施設数、定員  年度別推移 厚生労働省  医政局  総務課]</ref>。一方で定員に対する養成学校の入学者は減少傾向である。厚生労働省所管分でも2015年には定員の63.6%6%の入学者に留まり<ref name="Shingikai-10801000"/>、定員割れしている学校が多い。2015年、相次ぐ療養費の不正請求により、厚生労働省は「柔道整復師学校養成施設カリキュラム等改善検討会」が設け、養成学校でのカリキュラム改革についての議論を重ねた。2017年3月、「柔道整復師学校養成施設指定規則の一部を改正する省令」が纏められ、同年4月より施行された<ref>[https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2612&dataType=1&pageNo=1 柔道整復師学校養成施設指定規則の一部を改正する省令の施行について(通知) 平成29年3月31日 28文科高第1240号/医政発0331第74号]</ref>。
 
=== 試験 ===
[[1989年]]([[平成]]元年)までは、都道府県知事が認定試験を行っていたが、柔道整復師法改正により[[1993年]](平成5年)より柔道整復師[[国家試験]]が開始され、毎年1度の試験が全国10カ所程度の会場で実施される。受験資格は前述の[[柔道整復師養成施設]]等で最低3年間以上のカリキュラムを受講して卒業または卒業見込みである必要がある<ref name="judouseihukushi"/>。試験科目は解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学、柔道整復理論、関係法規となっている<ref name="judouseihukushi">[https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/judouseihukushi/ 柔道整復師国家試験の施行 厚生労働省 平成29年9月1日  厚生労働大臣  加藤  勝信]</ref>。国家試験合格率も低下しており、1998年には85.6%6%だったものが、2015年には65.7%7%に減少した<ref name="Shingikai-10801000"/>。
 
== 勤務形態 ==
多くが施術所(接骨院)を設立し独立開業していたが、近年はその割合が減少し、平成19年-23年の統計では約20%20%となっている<ref name="Shingikai-10801000"/>。残りの80%80%は、柔道整復及びあん摩・はり・きゅう施術所のほか、病院、診療所、介護関連事業所、スポーツジム等で雇用されているが、全く無関係の職に就く者も7.8%8%程居る<ref name="Shingikai-10801000"/>。外科や整形外科で雇用される場合は<ref name="hellow_work">[https://www.hellowork.go.jp/doc2/B15301juudouseifukusi.pdf ハローワーク  インターネットサービス  職業説明  B153-01  柔道整復師]</ref>、看護師、准看護師、あんま・マッサージ・指圧師と同様に、約1日程度で終了する講習会を受講すれば、整形外科の専門医が勤務する医療機関で診療報酬上の「運動器リハビリテーション」を算定する要員となることが可能になる<ref>[http://www.nichiiko.co.jp/stu-ge/phplib/s_getdoc_mpi.php?member=&filepath=368-6kennshuu_sonota.pdf 研修を要件とする 診療報酬点数2014(その他職種編) - 日医工]</ref><ref>[http://www.jsmr.org/qualification_training.html 平成30年度前期セラピスト資格取得研修会 資格取得研修会開催情報 - 日本運動器科学会]</ref>。
 
== 資格者数 ==
厚労省の「平成24年保健・衛生行政業務報告」によると<ref name="iseihoukoku2012">[https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/12/dl/h24_gaikyo.pdf 平成 24 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 ]</ref>、就業している柔道整復師は58,573人であった<ref name="iseihoukoku2012"/>。柔道整復の施術所数は42,431施設であり、柔道整復師数、施術所数ともに近年急増している。2002年(平成14年)から2012年の10年間で柔道整復師数は1.8倍に増加した<ref name="iseihoukoku2012"/>。2012年の柔道整復の施術所数は42 431施設であり、2002年の1.6倍となっている<ref name="iseihoukoku2012"/>。
 
== 特記事項 ==
* WHOは「世界各国の[[伝統医学]]と法的地位」レポートにおいて柔道整復師を「Judo Therapist(柔道セラピスト)」と定義している<ref>{{Cite report|url=http://apps.who.int/medicinedocs/en/d/Jh2943e/9.6.html |title=Legal Status of Traditional Medicine and Complementary/Alternative Medicine: A Worldwide Review |date=2001|publisher=[[世界保健機関]] }}</ref>。
* 柔道整復師は[[業務独占資格]]であり、医師と柔道整復師以外のものが柔道整復を行うことは許されない。顎関節脱臼については、歯科医業独占を定めた歯科医師法により歯科医師自身又は歯科医師の指示下にて行うべきであるが、柔道整復師もこれを行うことができる(柔道整復師の場合は応急処置以外では医師同意が必要)<ref>[http://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/1871/1/109_218.pdf{{Cite journal|和書|author=米津博文 |title=顎が外れた患者さんへの対応は? -|journal=齒科學報 |ISSN=00373710 |publisher=東京歯科大学]学会 |year=2009 |month=apr |volume=109 |issue=2 |pages=218-219 |naid=10025673081 |url=https://hdl.handle.net/10130/1871}}</ref>。
* 柔道整復師はレントゲン機器の操作は出来ないが、2018年現在、養成課程のカリキュラムに、放射線衛生学やエックス線撮影技術学、放射線安全管理学を加えて、関節や骨に対するレントゲン一般撮影を可能とする柔道整復師法の一部を改正案が検討されている<ref name="g19302110"/>。この法案が可決された場合でも、可能になるのは「撮影」のみであり、レントゲン写真を「診断」することは出来ない<ref name="g19302110"/>。レントゲン写真の診断については連携する医師や医療機関を予め定めておき、そこに診断を依頼する形となる<ref name="g19302110"/>。また既存の柔道整復師についてはこの改正は適応されない<ref name="g19302110">[http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19302110.htm 柔道整復師法の一部を改正する法律案 衆議院  第一九三回  参第一一〇号  柔道整復師法の一部を改正する法律案]</ref>。
* [[韓国の医療|韓国]]においては、1961年にクーデターが勃発し、翌[[1962年]]には新たな医療法が成立。軍事革命の国家再建最高会議で国民医療法第59条を削除し、医療法附則警戒規定(鍼士、灸士、按摩士および接骨士の既得権者に対する管理規定)を設定することによってこれらの制度は廃止となり、それにより韓国国内で接骨士は一代限りの取扱いとなった<ref>{{Cite news|newspaper=柔整ホットニュース |date=2013-12-01 |title=インターナショナルセッション -世界に羽ばたく柔道整復- |url=http://www.jusei-news.com/gakujutsu/topics/2013/12/20131201_02.html}}</ref>。
 
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柔道整復師の施術は、医療保険各法に定める「[[療養の給付]]」には該当せず、患者は別途「[[療養費]]」の支給を受ける扱いになる。この療養費は歴史的経緯により柔道整復師による受領委任払いが認められているが、柔道整復師による療養費の不正請求が全国で後を絶たない。
 
1998年の養成施設の新設を制限した[[厚生省]]の決定を不適切と認定した判決を受けて、当事14校だった養成学校が2017年には110校に急増した<ref name="nagasaki20180819"/>。長崎県では1998-2018年の20年間で3校の新設校があり、柔道整復師の人数は663人と約2.5倍に増加、施術所も517カ所と2倍に増加している<ref name="nagasaki20180819"/>。以前は資格取得後5-10年間の勤務を経験して施術所を設立して独立開業することが多かったが、2018年頃には卒業生の2割が資格取得直後に独立開業するようになった<ref name="nagasaki20180819"/>。知識や経験を積まず、違法行為に手を染めてしまう整復師が問題視されている。「整骨院同士でスタッフの[[保険証]]を交換し、架空請求しているところもある。」「騙し取った金でクルーザーを買った人もいる。」と業界の不正の実態を訴える声がある<ref name="nagasaki20180819"/>。[[淑徳大]]の結城康博教授は「[[性善説]]に基づく自己申告制と保険適用の対象がグレーなことが不正受給の要因となっている。」として抜き打ち審査などによる厳格な調査を提案している<ref name="nagasaki20180819">{{Cite news|title=過当競争「経営苦しく」  柔道整復師の療養費詐取(長崎新聞)|url=https://this.kiji.is/403569005711344737?c=174761113988793844|accessdate=2018-08-19|language=ja-JP|work=長崎新聞}}</ref>。
 
== 関連団体 ==
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* [[柔道整復研修試験財団]]
* [[全国柔道整復学校協会]]
* [[日本柔道整復師会]]  (1万7000名の会員を持ち最大勢力と目される)
* [http://www.zenjukyo.gr.jp 協同組合日本接骨師会]
* [http://www.zenjukyo.gr.jp 全国柔整鍼灸協同組合]
ほか
 
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== 脚注 ==
{{reflistReflist|230em}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|title=スペシャルリポート 代替医療との"仁義なき闘い"--整形外科医と柔道整復師の共存は可能か? |date=2003-08 |publisher=日経BP社 |journal=日経メディカル |volume=32 |number=8 |naid=40005905029 |pages=50-52}}
 
== 外部リンク ==
* [https://www.shadan-nissei.or.jp/ 公益社団法人日本柔道整復師会]
* [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/ 厚生労働省:柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて]
* [https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ml1d-att/2r9852000002mpyk.pdf 厚生労働省:第1回社会保障審議会医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会配付資料  柔道整復に係わる療養費の概要]
* [https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/12/dl/h24_ahaki.pdf 厚生労働省:平成22年衛生行政報告例の概要 3 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所]
 
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