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[[File:Relief Samothrace Louvre Ma697.jpg|thumb|250px|サモトラキ島から出土した紀元前560年頃の[[アガメムノーン]]とタルテュビオス、[[エペイオス]]の[[レリーフ|レリーフ彫刻]]。[[ルーヴル美術館]]所蔵。]]
'''タルテュビオス'''({{lang-grc-short|Ταλθύβιος}}, {{ラテン翻字|el|Talthybios}})は、[[ギリシア神話]]の人物である。エウリュバテースとともに[[ミュケーナイ]]の王[[アガメムノーン]]に仕える伝令使<ref>『イーリアス』1巻320行。</ref>。アガメムノーンに従って[[トロイア戦争]]に参加した。
 
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タルテュビオスはアガメムノーンの伝令使としてトロイア戦争の開戦前から様々な役目を果たしている。[[アポロドーロス]]によると、[[メネラーオス]]、[[オデュッセウス]]とともに[[キプロス島]]に行き、[[キニュラース]]王にトロイア遠征軍に参加するよう説得した<ref>アポロドーロス、E(摘要)3・9。</ref>。またアガメムノーンが[[女神]][[アルテミス]]の怒りを買ったために遠征軍がアウリスから出航できなくなった時は、[[イーピゲネイア]]を犠牲に捧げるためにオデュッセウスとともに[[クリュタイムネーストラー]]のもとに遣わされた<ref>アポロドーロス、E(摘要)3・22。</ref>。
 
トロイア戦争ではタルテュビオスは[[エウリュバテース]]とともに[[アキレウス]]の陣営に行き、[[ブリーセーイス]]を引き取りに行った<ref>『イーリアス』1巻318行以下。</ref>。メネラーオスが[[ヘレネー]]を賭けて[[パリス]]と一騎討ちをした際には、アガメムノーンに命じられて[[大地母神]][[ガイア]]と[[太陽神]][[ヘーリオス]]に捧げる[[仔羊]]1頭を船から運び<ref>『イーリアス』3巻118行‐120行。</ref>、メネラーオスが[[パンダロス]]の矢で傷を負うと、医術に長けた[[マカーオーン]]を呼びに遣わされた<ref>『イーリアス』4巻192行‐207行。</ref>。[[ヘクトール]]と[[大アイアース]]の両軍を代表した一騎討ちが日没に達しても決着がつかなかったときには、[[プリアモス]]の伝令使[[イーダイオス]]とともに戦いを止めた<ref>『イーリアス』7巻276行-282行。</ref>。さらにアガメムノーンとアキレウスが和解した際には、大神[[ゼウス]]とヘーリオスに捧げるために[[イノシシ]]を1頭用意し、アガメムノーンが執り行う供儀を補佐した<ref>『イーリアス』19巻196行‐267行。</ref>。
 
タルテュビオスはその性格上、[[ギリシア悲劇|悲劇]]作品にも登場している。トロイア陥落後を描いた[[エウリーピデース]]の『[[トロイアの女]]』ではタルテュビオスは[[プリアモス]]の老いた妻[[ヘカベー]]にトロイア王家の女たちの運命を告げる役目を担う。すなわち、[[カッサンドラー]]はアガメムノーンに、[[アンドロマケー]]は[[ネオプトレモス]]に、そして当のヘカベーはオデュッセウスに与えられることが決まり、[[ポリュクセネー]]はアキレウスの墓前で殺されたことを告げる<ref>エウリーピデース『トロイアの女』235行-291行。</ref>。またアンドロマケーに対しては、ヘクトールの忘れ形見である[[アステュアナクス]]が殺されなければならないという決定を告げる<ref>エウリーピデース『トロイアの女』709行-728行。</ref>。同じく『[[ヘカベ (エウリピデス)|ヘカベー]]』でも、タルテュビオスはヘカベーにポリュクセネーが殺されたことを告げている<ref>エウリーピデース『ヘカベー』484行-610行。</ref>。
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* [[ホメロス]]『[[イリアス]](上・下)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
* [[高津春繁]]『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年)
 
== 関連項目 ==
* [[エウリュバテース]]
 
{{イーリアスの登場人物}}