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'''代返'''(だいへん)とは、[[教育機関]]などにおいて[[出欠]]確認をする[[授業]]で、欠席者の出席を装うために他者が代わって返事をする一種の不正行為である<ref>{{cite web|url=https://kotobank.jp/word/%E4%BB%A3%E8%BF%94-558326|title=代返とは|work=[[コトバンク]]|publisher=VOYAGE GROUP|accessdate=2021-10-24}}</ref><ref name="sn">{{cite web|url=https://www.shingakunavi.ne.jp/column1/%E4%BB%A3%E8%BF%94/|title=代返 受検・進学・入試用語集|work=[[進学ナビ]]|publisher=インフォクレスト&キッズ・コーポレーション|accessdate=2021-10-24}}</ref>。特に[[大学]]において、欠席者が不正に出席点を獲得する目的で行われる([[学年制と単位制|単位]]認定に一定量の授業への出席が必須とされたり<ref name="sk">{{cite web|url=https://www.sankei.com/article/20150919-KVCPFYK3B5I6BMXEB476EEPEGU/|title=「お前が代返サボったから留年する」後輩から授業料恐喝 おバカ大学生に検察官が〝法廷説教〟|date=2015-09-19|work=衝撃事件の核心|publisher=[[産経新聞]]|accessdate=2021-10-24}}</ref>、重視される場合がある<ref name="gm">{{cite web|url=https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/23664|title=あなたが経験した「代返防止」のシステム、どんなのがあった?|work=マイナビ 学生の窓口|author=学生の窓口編集部|publisher=マイナビ|date=2015-11-05|accessdate=2021-10-24}}</ref>)。大学によっては発覚した場合、単位の剥奪など処分を受けることがある<ref name="sn"/>。
 
[[2016年]]4月に[[マイナビ]]が実施した調査によると、現役大学生の25.6%が代返を依頼したことがあると回答した<ref name="mn">{{cite web|url=https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/36370|title=今ではシステム的に不可能?! 「代返」頼んだことがある現役大学生の割合は……|work=マイナビ 学生の窓口|author=学生の窓口編集部|publisher=マイナビ|date=2016-05-06|accessdate=2021-10-24}}</ref>。代返を依頼する主な理由は、[[遅刻]]や寝坊、[[クラブ活動|部活動]]・[[アルバイト]]と講義の時間の重複などがある<ref name="mn"/>。
 
== 手法 ==
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== 発覚時の処分 ==
不正行為であるので、発覚すると代返の依頼者は処分される<ref name="sn"/>。大学によっては、代返が発覚した[[学期]]に履修していたすべての単位を剝奪する<ref name="mn"/>。[[2016年]]には[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[アイオワ大学]]で中国人留学生約100人が代返を依頼したとして、[[退学]]処分を通告された<ref>{{cite web|url=https://web.archive.org/web/20160521224427/https://www.recordchina.co.jp/a138994.html|title=中国人留学生100人、「代返」で米大学を退学処分の危機―米華字メディア|date=2016-05-20|publisher=[[Record China]]|accessdate=2021-10-24|quote=Internet Archiveによる2016年5月21日時点のアーカイブページ。}}</ref><ref name="bj">{{cite web|url=https://biz-journal.jp/2016/06/post_15376.html|title=米国の中国人留学生、不正横行で大量退学処分!替え玉テスト受験や論文代筆は当たり前|author=佐久間賢三|work=Business Journal|publisher=[[サイゾー]]|date=2016-06-06|accessdate=2021-10-24}}</ref>。代返に気付いても学生には何も告げず、出席点を引いておく教員もいる<ref name="itm">{{cite web|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1912/30/news018.html|title=「ピ逃げ」は恥だし役に立たない〜学生たちとの出席頭脳戦〜|author=松尾公也|publisher=[[ITmedia]]|date=2019-12-30|accessdate=2021-10-24}}</ref>。
 
依頼者だけでなく、代返を引き受けた者も処分の対象となる大学がある<ref name="sn"/>。
 
== 日本国外における代返 ==
[[インド]]の大学では、''proxy'' (代理)という言葉が偽りの出席の意味で用いられている<ref>{{cite web|url=https://www.quora.com/What-does-proxy-mean-in-colleges-and-universities-in-India|title=What does "proxy" mean in colleges and universities in India?|work=[[Quora]]|accessdate=2021-10-24}}</ref>。インドの私立医科大学の学生に対して行われた[[アンケート]]調査によると、回答者の75%が代返の経験があり、特に男子学生は92.6%が経験していた{{sfn|Babu et al.|2011|pp=759-760}}。
 
2016年に行われた[[アラブ首長国連邦]]の医学生を対象にしたアンケート調査では、42%が代返をしたことがあると回答し、そのうちの71%は代返が悪いことであると認識していた{{sfn|Abdulrahman et al.|2017|pp=3-4}}。
 
[[中華人民共和国|中国]]の大学では代返(身代わり出席)が横行しており、代返依頼者から料金を取って稼いでいる学生が存在する<ref name="bj"/>。アメリカの大学では、出席点に相当する''attendance'' のほかに、授業への積極的な参加、授業での積極的な発言を採点する''participation'' という評価点があり、代返することが難しい<ref>{{cite web|url=https://ryugaku.myedu.jp/edit/gi/gi7.html|title=YOU CAN DO IT(第7回):attendance vs participation|work=毎日留学ナビ グローバルキャリア塾・連載コラム|publisher=毎日エデュケーション|date=2010-08-01|author=池田剛|accessdate=2021-10-24}}</ref>。また、発覚した場合の処分は重い<ref name="bj"/>。
 
== 大学による代返防止対策 ==
教員が代返を放置すると、まじめに受講している学生の学習意欲を減退させたり、教員への信頼を低下させたりするおそれがあるので、できるだけ代返を排除する必要がある{{sfn|吉川|2007|p=69}}。大学では、教員による新たな代返防止策の実行と、学生による対策の攻略が繰り返されている<ref name="itm"/>。
 
古典的には、出席票を1人ずつ手渡し・手回収する{{sfn|吉川|2007|p=69}}、出席票に授業のコメントを書かせることで代返を依頼された者が簡単に実行できないようにする<ref name="sn"/>、毎回違う出席票を使う、[[筆跡鑑定]]をする、本人以外の者が容易に知り得ない[[個人情報]]を書かせるなどの方法が採られてきた<ref name="gm"/>。[[グループ学習|グループワーク]]を行わせ、代表者に出席票を取りに行かせることで代返が行われる可能性を減じる方法もある<ref>{{cite web|url=https://www.kochi-u.ac.jp/_files/00153096/06archive_teachertips_10.pdf|title=高知大学の教育の質を保証するため授業時間外学修を確保しよう!|author=高知大学大学教育創造センター|publisher=高知大学学務課総務係|accessdate=2021-10-24}}</ref>。
 
[[2000年代]]中頃には、代返防止を目的として、[[立命館大学]]や[[日本大学]]など一部の大学で、出欠確認に[[学生証]]や[[携帯電話]]の利用が始まっていた<ref>{{cite web|autnor=[[共同通信]]|work=[[47news]]|url=https://web.archive.org/web/20071010111652/http://www.47news.jp:80/CN/200704/CN2007040501000642.html|title=立命大“代返”許しません 電子学生証で出席確認|date=2007-04-05|accessdate=2021-10-24|quote=Internet Archiveによる、2007年10月10日時点のアーカイブページ。}}</ref><ref>{{cite web|work=日本大学新聞|publisher=[[日本大学新聞社]]|url=https://web.archive.org/web/20170414110907/http://www.nu-press.net/archives/article000912.html|title=商 携帯電話で出席確認 後期授業期間に試験導入|date=2008-10-06|accessdate=2021-10-24}}</ref>。日本で最初に電子システムによる出欠確認を導入したのは、携帯電話を利用する[[青森大学]]と、非接触[[ICカード]]を利用する[[札幌大学]]であり、ともに[[2005年]]に開始した{{sfn|米川|2012|p=1}}。
 
[[2000年代]]中頃には、代返防止を目的として、[[立命館大学]]や[[日本大学]]など一部の大学で、出欠確認に[[学生証]]や[[携帯電話]]の利用が始まっていた<ref>{{cite web|autnor=[[共同通信]]|work=[[47news]]|url=https://web.archive.org/web/20071010111652/http://www.47news.jp:80/CN/200704/CN2007040501000642.html|title=立命大“代返”許しません 電子学生証で出席確認|date=2007-04-05|accessdate=2021-10-24|quote=Internet Archiveによる、2007年10月10日時点のアーカイブページ。}}</ref><ref>{{cite web|work=日本大学新聞|publisher=[[日本大学新聞社]]|url=https://web.archive.org/web/20170414110907/http://www.nu-press.net/archives/article000912.html|title=商 携帯電話で出席確認 後期授業期間に試験導入|date=2008-10-06|accessdate=2021-10-24}}</ref>。[[青山学院大学]]では[[ソフトバンクモバイル]]と提携して[[社会情報学部]]の全学生に対し、[[2009年]]5月に[[iPhone]]を配布し、[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]の[[位置情報サービス|位置情報]]を利用して講義への出欠を確認するシステムを導入した{{sfn|宮治・飯島|2010|p=4, 9}}。学生がiPhoneからにインストールされた出席通知アプリを起動し、「出席ボタン」を押すと、端末情報と位置情報が[[サーバ]]に送信される{{sfn|宮治・飯島|2010|p=9}}。出席情報がサーバに記録されているかどうかは、学生自身が確認することができる{{sfn|宮治・飯島|2010|p=9}}。同学では、出席カードによる出席確認は代返の可能性や(教員の)転記の手間があり、学生証の[[携帯情報端末|PDA]]での読み取りによる出席確認は端末トラブルでデータが消去されてしまうという問題があるとし、この方式を採用した{{sfn|宮治・飯島|2010|p=9}}。(なお、[[2011年]]に[[奈良産業大学]]方式米川雅士が行った実験によると、当時の携帯電話のGPSの精度では、出席情報教室のある棟から大きくずれた位置が記録されているかどうかをしまったため、学生が確認どの建物にいたかを把握することは困難きるあった{{sfn|宮治・飯島米川|20102012|ppp=913-14}}。
 
以上のほか、[[生体認証|指紋認証]]を行う大学もあった<ref name="gm"/>。また、[[2019年]]には[[兵庫医科大学]]が日本初の[[顔認識システム]]による出欠確認を導入した<ref name="nw">{{cite web|url=https://newswitch.jp/p/17238|title=もう「代返」は通用しない!兵庫医大、顔認証で出欠確認|work=ニュースイッチ|publisher=[[日刊工業新聞社]]|date=2019-04-13|accessdate=2021-10-24}}</ref>。同学では全学生に顔を事前登録させ、授業の冒頭で[[タブレット (コンピュータ)|タブレット端末]]を順次回して出欠を取る<ref name="nw"/>。なお、同学が導入する以前より、自作の顔認証システムを採用する教員は存在した<ref name="gm"/>。
 
電子システムによる出欠確認は、代返の防止だけでなく、教員の出欠記録作成の手間を削減でき、学生の見守り(休みがちの学生の把握)などにも役てるこされができるなど、代返防止以外にも効果がある<ref>{{cite web|url=https://www.asahi.com/articles/ASM7W469GM7WPTIL006.html|title=大学の出欠確認に顔認証 「代返」防ぐだけじゃない狙い|publisher=[[朝日新聞社]]|date=2019-08-09|author=坂東慎一郎|accessdate=2021-10-24}}</ref>。
 
=== ピ逃げ ===
[[ICカード]]化された学生証を端末にかざして出欠を取る方法が普及すると、学生の間で「ピ逃げ」や「ピー逃げ」と呼ばれる手法が横行するようになった<ref name="itm"/>。ピ逃げとは、授業の冒頭にICカードを端末に読み取らせて出席扱いにし、授業を受けずに帰ることである<ref name="itm"/>。(「ピ」は読み取り時の電子音にちなむ<ref name="itm"/>。)ピ逃げをせずとも電子システムによる出席確認の場合、他者に学生証や携帯電話を貸し出すことで代返可能である{{sfn|増田ほか|2016|p=639}}。
 
教員側のピ逃げ対策としては、授業の途中で読み取り情報をリセットし再度学生にICカードの読み取りを求める方法や、紙の出席票を配布する方法<ref name="itm"/>、講義中に提示した[[パスワード]]を出席管理システムに入力させる方法などがある{{sfn|増田ほか|2016|p=639}}。パスワード方式は、学生間でパスワードを教え合う可能性があるので、対策としては不十分である{{sfn|増田ほか|2016|p=639}}。座席に[[ICタグ]]を設置し、学生の持つICカードと紐付けることで、同一の座席から二重に出席申請が為されないようにするシステムも開発されているが、導入費用が高い上に、本人以外の者が空席のICタグを使って出席申請する可能性があるため、万全ではない{{sfn|米川|2012|pp=1-2}}。
 
== 事件 ==
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* {{cite journal|和書|author=宮治裕・飯島泰裕|title=青山学院大学社会情報学部におけるiPhoneの導入―初年度総括 ねらいと効果について―|journal=コンピュータ&エデュケーション|volume=28|page=4-10|year=2010|publisher=一般社団法人CIEC|doi=10.14949/konpyutariyoukyouiku.28.4|naid=130004715701|ref={{sfnref|宮治・飯島|2010}}}}
* {{cite journal|和書|author=吉川歩|title=出欠の個人認証と授業評価の匿名性を両立する出欠・評価収集システム|journal=甲南会計研究|publisher=[[甲南大学]]会計大学院|issue=1|page=69-77|year=2007|doi=10.14990/00000201|naid=110006245090|ref={{sfnref|吉川|2007}}}}
* {{cite journal|和書|author=米川雅士|title=新しい出欠管理システムに向けた提案|journal=情報学フォーラム|publisher=奈良産業大学情報学部|issue=8|page=1-17|year=2012|naid=120005844065|ref={{sfnref|米川|2012}}}}
* {{cite journal|author=Mahera Abdulrahman, Shahd Alsalehi, Zahra S. M. Husain, Satish C. Nair & Frederick Robert Carrick|title=Professionalism among multicultural medical students in the United Arab Emirates|journal=Medical Education Online|publisher=[[テイラーアンドフランシス|Taylor & Francis]]|year=2017|volume=22|issue=1|page=1-7|doi=10.1080/10872981.2017.1372669|ref={{sfnref|Abdulrahman et al.|2017}}}}
* {{cite journal|author=Thirunavukkarasu Arun Babu, Noyal Mariya Joseph & Vijayan Sharmila|title=Academic dishonesty among undergraduates from private medical schools in India. Are we on the right track?|journal=Medical Teacher|volume=33|year=2011|page=759-761|doi=10.3109/0142159X.2011.576717|ref={{sfnref|Babu et al.|2011}}}}