「野焼き」の版間の差分

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=== 健康上の問題 ===
野焼きはPM2.5などの汚染物質を大量に排出するため、慢性[[心不全]]などの循環器疾患や[[呼吸器疾患]]、[[癌]]、子供の早死、[[アルツハイマー病]]や[[パーキンソン病]]、[[認知症]]のリスクを高めることが懸念されている<ref name="Cassou2018" /><ref name="CDC2020"/><ref name="UNECE2021"/><ref name="UNEP2021"/>。
 
野焼きの煙は特に[[喘息]]や[[慢性閉塞性肺疾患]] (COPD) を増悪させる<ref name="UNECE2021"/>。秋田県の医師の間では、稲の収穫期を迎えて[[籾殻]]や[[稲わら]]などの作物残渣が野焼きされる季節になると喘息発作の救急外来が急増するという事象がよく知られていた<ref>{{Cite journal|和書 |author=萱場広之 |title=2 稲作地域における環境因子と気管支喘息 : 穀物粉塵と野焼きを中心に(化学物質過敏症の診断・治療と問題点) |url=https://doi.org/10.15036/arerugi.53.224_1 |journal=アレルギー |publisher=日本アレルギー学会 |year=2004 |volume=53 |issue=2 |pages=224 |naid=110002432669 |doi=10.15036/arerugi.53.224_1 |issn=0021-4884}}</ref>。
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=== 農業生産力の低下 ===
本来、植物残渣などの有機物は施用・[[堆肥化]]によって土壌有機物([[腐植]])となり、土壌の理化学性・生物性ひいては地力を維持・増進する役割がある。この機会が野焼きによって失われ、また表土も焼かれることで、必要な施肥量の増大や、土壌[[侵食]]、収量低下などを引き起こし、経済的損失や生物多様性の低下を招く<ref name="UNECE2021"/>。[[国際連合環境計画]]によれば、野焼きは土壌の保水力や[[土壌肥沃度]]を25 - 30%低下させる<ref name="UNEP2021">{{Cite web|url=https://www.unep.org/news-and-stories/story/toxic-blaze-true-cost-crop-burning|title=Toxic blaze: the true cost of crop burning|publisher=UNEP|date=2021-8-16|accessdate=2021-11-14}}</ref>。
 
野焼きで得られる[[草木灰]]は、伝統的な「肥料」として利用される場合があるが、これは誤った認識に基づいた慣習とされ、前述の有機物の土づくり効果が失われるほか、燃焼に伴い栄養の多くが失われることが知られている<ref name="UNECE2021"/><ref name="Cassou2018" />。[[アジア工科大学院]]のMohammad Esmaeil Asadiによれば、稲藁の野焼きは炭素のほぼ全量、窒素の99%、リンの18%、カリウムの44%を失わせる<ref name="Asadi2019">{{Cite news|url=https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1763179/open-burning-is-a-needless-way-to-lose-money|title=Open burning is a needless way to lose money|author=Mohammad Esmaeil Asadi|newspaper=Bangkok Post|publisher=Bangkok Post|date=2019-10-2}}</ref>。オーストラリアの[[ビクトリア州]]政府によれば、小麦藁の野焼きは窒素の80%、リンの40%、カリウムの60%、硫黄の50%を失わせ、また長期的には土壌の酸性化を招く<ref name="StateOfVictoria">{{Cite web|url=http://agriculture.vic.gov.au/agriculture/grains-and-other-crops/crop-production/stubble-burning|title=Stubble Burning|publisher=State of Victoria|accessdate=2019-12-26}}</ref>。
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=== 地球温暖化 ===
[[地球温暖化]]の観点からは[[雪氷圏]]の温暖化に影響が大きい{{仮リンク|ブラックカーボン|en|Black carbon}}の排出源として最大の分野であると考えられている<ref name="Cassou2018" />。これにより[[氷河]]などの融解のほか、とりわけ[[アジアモンスーン]]への影響といった[[気候変動]]が懸念される<ref name="UNEP2021"/>。
 
[[温室効果ガス]]排出の観点では、[[二酸化炭素]]については[[カーボンニュートラル]]と捉えることができ、[[メタン]]や[[一酸化二窒素]]についても全体への寄与は目立たないが、土壌微生物に影響を与え土壌の温室効果ガス排出を増加させる<ref name="Cassou2018" />。