「少額訴訟制度」の版間の差分

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== 背景 ==
従来この制度が設けられるまで、金銭の支払いに関わるトラブルを法的に解決するためには、通常の[[民事訴訟]]で債務の支払いを求めるほかなかった。しかし、訴訟金額が少額である場合、例えば
*[[アルバイト]]・[[パート]][[賃金]]の不払い
*賃貸住宅からの退去に際して[[敷金]]の返却がなされない
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== 特徴 ==
債権の目的が金銭の支払いに限られ、また取り扱う金額に制限がある。一方で、原則1日で審理を終えて迅速に判決を得られる。簡易・迅速に審理を行うため、通常訴訟に比べて下記のような特徴や制約がある。
*同一の[[簡易裁判所]]において同一の年に少額訴訟ができる回数は10回までであり、訴えの提起の際にその年に少額訴訟を求めた回数を申告しなければならない([[b:民事訴訟法第368条|第368条]]第1項、第3項、[[民事訴訟規則]]第223条)。
**個人の利用を想定した制度であり、業としての債権回収に多用されることや、そのために個人の訴訟手続が圧迫されるのを防止するためである。
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*通常は1日で審理を終え、その日のうちに判決が下される([[s:民事訴訟法#370|第370条]]、[[s:民事訴訟法#374|第374条]])。
**証拠、[[証人]]等は、1日で扱える内容に限られる([[b:民事訴訟法第371条|第371条]])。
**その場で吟味ができない証拠等がある場合、鑑定が必要な場合や、口頭弁論が1回で終わらないと判断された場合は、裁判官の職権で通常訴訟に移行される。これは[[原告]]・[[被告]]ともに拒否できない。
*被告は通常訴訟への移行、被告側管轄の裁判所への移送を申し立てることができる([[b:民事訴訟法第373条|第373条]]第1項)。
**通常訴訟への移行申立ては口頭弁論における陳述前までに行う必要がある。原告は通常訴訟への移行を拒否できない。
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*被告は[[反訴]]ができない([[b:民事訴訟法第369条|第369条]])。
**反訴も扱うと審理が複雑になり簡易・迅速な審理を旨とする少額訴訟制度の目的から逸脱するためである。
**反訴を行う場合は通常訴訟への移行を申し立ててから行う。
*被告に資力がない場合は、[[判決]]で分割払い、支払の猶予などを定めることができる([[b:民事訴訟法第375条|第375条]]第1項)。
*[[控訴]]ができない([[s:民事訴訟法#377|第377条]])。ただし、判決に不服がある場合は異議申立てができる([[b:民事訴訟法第378条|第378条]])。
**異議審は口頭弁論前まで差し戻され、その後の訴訟の流れは通常訴訟と同じであるが、異議後の判決に対して[[控訴]]ができない([[b:民事訴訟法第380条|第380条]]1項)。ただし[[特別上告]]は可能(第380条2項)。
**通常訴訟の控訴審や上告審では裁判所が変わり[[裁判官]]も交代になる控訴審や上告審違い異なり少額訴訟の異議審は同一裁判所で同じ裁判官が審理するので、新たな証拠を出さない限り、原則として判決が覆ることはない。
 
<!--WP:NOTMANUAL == 対処 ==
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出頭せず欠席裁判の結果、有効な[[債務名義]]となりいつでも[[強制執行]]できる状態になった場合には、当該少額訴訟判決が確定する前であれば、[[s:民事訴訟法#378|民事訴訟法第378条]]の[[異議]]で、確定後であれば、[[民事執行法]]上の請求異議の訴えで争うしかない。いずれのケースでも強制執行が開始された場合は、裁判所が定める請求金額の3分の1ほどの担保を[[供託]]などして[[強制執行停止決定]]を得る必要がある。-->
 
== 課題 ==
架空請求詐欺の手段としてこの制度が悪用される事例がある。身に覚えのない請求は無視するべきとの架空請求に関する世間の認識を逆手に取ったもので、裁判所からの通知も被害者が無視し出廷しないことを見越し、[[欠席裁判]]に持ち込んで債権に法的根拠を得て支払いを強制すことを狙う。身に覚えのない請求であっても、裁判所の正規の書類が送られてきた場合は訴訟手続に則って適切に反論する必要がある<ref>{{Cite web|url=https://www.courts.go.jp/toyama/about/osirase/20050705/index.html|title=裁判所を悪用した架空請求事件にご用心|accessdate=2019年12月23日|publisher=富山簡易裁判所}}</ref>。
 
実際に、架空請求と思われる件について審理が行われた例がある<ref>[http://allabout.co.jp/gm/gc/372439/ 無視できない架空請求の裁判はどうなった? 今後は? 「架空・不当請求」裁判のゆくえ] - 実際の裁判例</ref>。この事案では、被告は弁護士の協力を得て、詐欺業者の訴訟取下げを認めず通常訴訟への移行を申し立てると共に、[[慰謝料]]の支払いを求める反訴を行った。業者側が一度も出頭しなかったため、原告の本訴請求(架空請求)は退けられ、被告の反訴請求(慰謝料支払い)は認められた。