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'''部分軌道爆撃システム'''(ぶぶんきどうばくげきシステム、'''F'''ractional '''O'''rbital '''B'''ombardment '''S'''ystem、略称:FOBS)は、[[1960年代]]に[[ソビエト連邦]]で研究・開発された[[核攻撃]]システムの名称である<ref name="毎日20211018">[https://mainichi.jp/articles/20211018/ddm/007/030/121000c 「中国新兵器実験成功 英報道/極超音速 米防衛網を回避」]『[[毎日新聞]]』朝刊2021年10月18日(国際面)</ref>。[[大陸間弾道ミサイル|ICBM]]のような[[弾道ミサイル]]よりも、より対処が難しいと考えられた[[人工衛星の軌道]]([[低軌道]])を通って目的地に到達する。英語表現は[[アメリカ中央情報局
21世紀に[[中華人民共和国]]などが開発・実験している[[極超音速機#兵器|極超音速兵器]]の一部がFOBSに類似しているとの指摘がある<ref name="毎日20211018"/>。
== 経過 ==
[[1960年代]]までに米ソは互いを目標とする核弾頭装備の
当時のソ連当局にもこの事は理解されており、これらのレーダー網をかいくぐってアメリカに回復不可能な打撃を与えるために、弾道飛行ではなく衛星軌道(
== 開発 ==
[[1950年代]]の終わりには、この方式の研究が検討され始めていた。「グローバル(地球)ロケット」と呼ばれた計画では三つの提案が検討されている。
# OKB-
# OKB-52(V.N.チェロメイ[[設計局]])による、UR-200
# OKB-
結局、[[ロシア戦略ロケット軍|ソ連戦略ロケット軍]](RVSN)はヤンゲリ設計局の提案を採用し、[[1962年]][[4月16日]]に承認された。開発中のテスト発射で軌道に乗った軌道[[ペイロード]]は、単に[[コスモス衛星|コスモス-XXX衛星]](XXXは三桁の番号)とだけ呼称された。
R-36-Oは、原型となったR-36と同様に[[ロケットエンジンの推進剤#液体ロケット|貯蔵可能な液体燃料]]を用いた二段式のロケットで、<!--[[核弾頭]]の代わりに-->軌道ペイロードと呼ばれる逆噴射と軌道修正のための液体燃料エンジンを持つ三段目を搭載していた。軌道ペイロードは第一段・第二段によって高度150kmの[[低軌道|地球低軌道]](LEO)へ投入され、二段目と分離した後は軌道上を飛行し、[[地球]]を周回する前に逆噴射により減速、弾頭を分離して目標へ投射、以後、弾頭は目標へ向けて自由落下に入る仕組みだった。地球を周回させないのは、[[核兵器]]の宇宙空間への持ちこみを禁じた[[1967年]]の[[宇宙条約]]に抵触しないようにするためである。
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== 原理と運用 ==
弾道ミサイルは人工衛星より低速であり(それでも秒速4.5kmから6km以上にもなる)、発射地点から目標までの最短距離を飛行する。この
FOBSは、人工衛星と同じ秒速7.9km程度の速度で地球を周回する軌道に投入される。その高度は100kmから150kmほどで、大陸間弾道ミサイルの頂点高度よりはるかに低いため大規模レーダー網でも早期発見は困難である。しかも地球周回軌道を取るため、北極回りの最短距離も関係がなく、どの方向から飛んでくるかも事前に分からない。1960年代、当時のソ連首相[[ニキータ・フルシチョフ]]は「[[南極]]越えでアメリカを攻撃できる」と豪語したが、実際にフルシチョフの発言通りFOBSは南極回りでアメリカを攻撃することも可能で、そのような経路を取った場合、アメリカ側は攻撃を察知できず、不意討ちとなって大被害を受ける事になる。▼
このようにFOBSには戦略兵器として有利であるが、不利な部分も多い。
▲FOBSは、人工衛星と同じ秒速7.9km程度の速度で地球を周回する軌道に投入される。その高度は100kmから150kmほどで、大陸間弾道ミサイルの頂点高度よりはるかに低いため大規模レーダー網でも早期発見は困難である。しかも地球周回軌道を取るため、北極回りの最短距離も関係がなく、どの方向から飛んでくるかも事前に分からない。1960年代、当時のソ連首相[[ニキータ・フルシチョフ]]は「南極越えでアメリカを攻撃できる」と豪語したが、実際にフルシチョフの発言通りFOBSは南極回りでアメリカを攻撃することも可能で、そのような経路を取った場合、アメリカ側は攻撃を察知できず、不意討ちとなって大被害を受ける事になる。
== 脚注・出典 ==
▲このようにFOBSには戦略兵器として有利であるが、不利な部分も多い。 [[弾道ミサイル]]とは異なり、この方式では弾頭を「いったん衛星軌道に乗せ、さらに、その軌道速度から減速して落下させる」必要がある。それには弾道ミサイルよりさらに大きな速度が必要であるので、ロケットは大型の大出力のものになり、一方では搭載する核弾頭は軽量化(低威力化)しなければならない。しかも、目標に向かって投射されるだけの弾道ミサイル弾頭とは異なり、FOBS弾頭は、大気圏に再突入するために逆噴射を行なって減速しなければならず、それに必要な装備に重量を食われ、ますます核弾頭の威力が小さくなってしまう。しかも逆噴射による減速はタイミングが難しく、[[平均誤差半径|命中精度]]も大きく落ちる( = [[平均誤差半径|CEP]]が大きい)。また、FOBSは地上配備のレーダー網をかいくぐる事は可能だったが、軌道上の赤外線[[早期警戒衛星]]からは隠れることができず、アメリカはR-36-Oの発射を早期に知る事ができた。このような多くの難点があり、[[第二次戦略兵器制限交渉]]の妥結もあって、短期間で廃止された。
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