「17歳の瞳に映る世界」の版間の差分

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m →‎評価と反響: 作品の傾向が違うので一旦資料確認してからにします
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本作は物語が単純で<ref name=mainichi_20210716>「シネマの週末・この1本:17歳の瞳に映る世界 騙りえぬ痛み、戦列に」『毎日新聞』東京夕刊6面、2021年7月16日。</ref>、台詞と音楽を最小限に抑え、代わりに人物のクローズアップを利用している{{R|jojoh_p88}}。映画監督の[[城定秀夫]]は、この演出が少女たちの心情を描いていると述べている{{R|jojoh_p88}}。映画ジャーナリストの野島孝一は『[[エコノミスト (日本の雑誌)|週刊エコノミスト]]』にて、2人の少女を淡々と映す手法から[[ドキュメンタリー映画]]を鑑賞しているように感じると述べている<ref name=economist_p93>野島孝一「アートな時間 映画 17歳の瞳に映る世界」『エコノミスト』4707号、2021年7月13日、93頁。{{全国書誌番号|00002195}}</ref>。野島は撮影を担当しているエレーヌ・ルヴァールはドキュメンタリー映画でのリアルな描写を得意とすることに言及し、その中で少女たちの戸惑いや臨場感が伝わると述べている{{R|economist_p93}}。
 
映画批評家の常川拓也は、本作を{{仮リンク|ジリアン・ロベスピエール|en|Gillian Robespierre}}の''[[:en:Obvious Child|Obvious Child]]''の流れを組む、[[プロチョイス]]映画の一つとして捉えている{{sfn|常川|2021|p=14}}。常川は[[1956年]]に改正された[[ヘイズ・コード]]にて、中絶の話題を扱うことが推奨されず、仮に触れた場合は非難するものと規定したことに触れている{{sfn|常川|2021|p=14}}。2007年に公開された『[[JUNO/ジュノ]]』や『[[無ケーカクの命中男/ノックトアップ]]』での中絶の扱いから、映画やドラマの世界では中絶を検討したとしても最終的に出産を選択するを美徳としていたと述べている{{sfn|常川|2021|p=14}}。常川はこの流れが変わったのは、2014年に公開された''Obvious Child''だとしている{{sfn|常川|2021|p=14}}。この作品での中絶とロマンティックコメディの両立以降、望まない妊娠と中絶を扱った映画が製作されていると述べている{{sfn|常川|2021|p=14}}。常川は本作を<!--2020年に公開された『[[:en:Unpregnant|Unpregnant]]』や-->2021年に公開された『[[:en:Plan B (2021 film)|Plan B]]』と、田舎で暮らす未成年が中絶のために、親の同意が不要な州に所在のあるプランド・ペアレントフッドへ友人と向かう共通点を指摘している{{sfn|常川|2021|pp=14-15}}。また、2018年に公開された『{{仮リンク|ヘヴィ・ドライブ|en|Little Woods}}』などを並べ、ロウ判決以降存在する中絶へのアクセスのための移動となる中絶ロードムービーが制作されていることに言及している{{sfn|常川|2021|p=15}}。これらの作品の中の特徴として、常川は『[[ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー]]』にも見られるように苦難を明るく描くことで、重いテーマをポジティブに描いているのに対し、本作は日常的に性的な対象として消費される姿や中絶に至る経緯をリアルで詳細に描いていると述べている{{sfn|常川|2021|p=15}}。
 
本作についていくつかの批評では、女性間の連帯について言及されている。映画ジャーナリストの林瑞絵は[[アニエス・ヴァルダ]]の『[[歌う女・歌わない女]]』と比較し、それぞれ不安や孤独に対し明るい音楽やトーンと対照的であるとしつつ、共通点として女性同士の繋がりがあることに触れている{{sfn|林|2021|pp=12-13}}。映画執筆家の児玉美月は、「[[#MeToo]]」運動が行われる時代において、女性間のシスターフッドが必要とされることに言及している{{sfn|児玉|2021|p=16}}。その際[[クリスティアン・ムンジウ]]による『[[4ヶ月、3週と2日]]』に触れ、主人公が中絶を受ける友人よりも奔走する姿に、とある女性の問題が別の女性の問題と繋がっているとの考えを述べている{{sfn|児玉|2021|p=17}}。児玉はこの姿をスカイラーがオータムのために自身を切り売りする姿と、二人が小指を繋ぐ仕草から、自分が被害者たりうる可能性からくる連帯であると述べている{{sfn|児玉|2021|p=17}}。