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|名称 = ハスカップ
|色 = lightgreen
|画像=
|画像キャプション = (上)ハスカップ(北海道苫小牧市・2006年7月)</br>(下)ハスカップの果実
|界 = [[植物界]] [[:w:Plantae|Plantae]]
|門階級なし = [[被子植物]] {{Sname||Angiosperms}}
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|英名 = ハニーベリー(Honeyberry)
}}
'''ハスカップ'''(和名:'''クロミノウグイスカグラ'''(黒実鶯神楽、学名:''Lonicera caerulea'' var. ''emphyllocalyx'')は[[スイカズラ科]][[スイカズラ属]]の
== 分類について ==
一般にハスカップ、とされる植物として、'''クロミノウグイスカグラ'''のほか、枝や葉がほぼ無毛の'''マルバヨノミ'''(学名:''Lonicera caerulea'' var. ''venulosa'')、葉の幅が狭く、葉や若枝に[[毛]]が密生し高山性の'''ケヨノミ'''(学名:''Lonicera caerulea'' var. ''edulis'')がある<ref>[http://www.zuncono.sakura.ne.jp/keyonomi/index.html ケヨノミ]</ref><ref>[http://tokitsukaze.sblo.jp/article/29199128.html ケヨノミ]</ref>。ただし、これら3種は識別が困難であり、分類する必要については見解が分かれている<ref name=":3">[https://kinomemocho.com/sanpo_haskap.html クロミノウグイスカグラの商品はなぜ〝ハスカップ〟と呼ばれるのか]</ref>{{Efn|これらの基準種にあたる'''ヨーロッパヨノミ'''(学名:''Lonicera caerulea'' L.)が、ヨーロッパに分布するが、この実は苦くて食べられない<ref>[https://yamashina-botanical.com/botanical/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%82%B0%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%B0%E3%83%A9/ クロミノウグイスカグラ | 山科植物資料館]</ref>。}}。
== 特徴 ==
枝は褐色で、薄く折り重なるような特徴のある樹皮を持つ。[[葉]]は、長さ3-8cm、幅1.5-3.0cmの楕円形で、対生する。[[葉縁]]に鋸歯はなく全縁である。5月中頃、ラッパ状で、先端が5裂した[[クリーム色]]の花を2個ずつ下向きにつける<ref>[https://blog.goo.ne.jp/kt23takahashi/e/2b8332cace7d691440e47e4515b60ae5 「ハスカップ」ブルーベリーに似た北海道の果物の花!春の花の種類は豊富!]</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=a0Jkfs3XkHU 厚真の農業を学ぼう!ハスカップの花編]</ref>。果実ははじめは黄緑色だが、熟すと果皮の表面に[[ブルーム (果実)|ブルーム]]が生じ粉白色を帯びるため、青みがかった黒色になる。果実の大きさは、1-1.5cm位である。果実の形は丸みを帯びた円錐形で、長円、卵形、銚子形、円筒形などの変異がある。野生のものは酸味が強く甘みはほとんどなく、やせた土壌ではより酸味が強くなる。味や、利用法は[[ツツジ科]]の[[ブルーベリー]]によく似ている。
== 名称について ==
[[アイヌ語]]の'''ハㇱカㇷ゚'''(haskap)に由来する。これはこの植物の果実の呼び名であり{{Efn|アイヌ語では、樹木の名称はその果実の名称からとられることが多い。}}、原義は「枝条・の上・にたくさん〔なる〕・もの」を意味する「ハㇱカオㇷ゚(has-ka-o-p)」からであるとされている<ref name=":0">{{Cite web |url=https://ainugo.nam.go.jp/siror/dictionary/detail_sp.php?page=book&book_id=P0040 |title=日本語名:クロミノウグイスカグラ(ハスカップ) アイヌ語名:ハシカプ |accessdate=2022-02-19 |publisher=アイヌ民族文化財団 |archivedate=2022-02-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220219144616/https://ainugo.nam.go.jp/siror/dictionary/detail_sp.php?page=book&book_id=P0040}}</ref>。これが北海道に入植した和人によって方言として取り入れられたものが定着した'''<ref name=":0" />'''。
また、アイヌ語では'''エヌミタンネ'''(enumitanne)という呼び名もある'''<ref name=":0" />'''。これはハスカップのなかでも細長いタイプの果実に対しての呼称で、「頭・の粒・長い」を意味する「エヌミタンネ(e-numi-tanne)」が原義とされている'''<ref name=":0" />'''。この呼び名も和人によって方言として取り入れられ、'''エノミダニ<ref name=":0" />'''や'''ゆのみ'''<ref name=":1">{{Cite web |title=ハスカップについて |url=http://yoitomake.jp/has01.html |website=yoitomake.jp |accessdate=2022-02-20 |publisher=三星 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20211208223440/https://yoitomake.jp/has01.html |archivedate=2022-02-20}}</ref>として呼ばれる。
和名の'''クロミノウグイスカグラ'''は、近縁の[[ヤマウグイスカグラ|ウグイスカグラ]]にちなみ「黒い実をつける[[ヤマウグイスカグラ|ウグイスカグラ]]」という意である{{Efn|クロミノウグイスカ'''ズ'''ラとする表記もあるが、ツル性の植物ではないため、これは誤りである。}}。
このほか、'''やちぐみ'''、'''やちのみ'''、'''フレップ'''{{Efn|アイヌ語でキイチゴを「フレㇷ゚(Hurep)」(赤い・もの、の意)と呼ぶ。}}、'''ネズミフレップ'''などの別名がある<ref>[http://kampong.life.coocan.jp/Nov05/Part1/contents/haskap.html 果物歳時記]</ref>。
日本国外でも、'''ハスカップ'''(Haskap)、'''ハスカップ[[ベリー]]'''(Haskap Berry)、'''ハニーベリー'''(Honeyberry)<ref>[https://www.berriesunlimited.com/growing-honeyberries/info_22.html Growing Honeyberry bushes, about Honeyberry] Berries Unlimited USA</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=PlrBnfHMffY&t=16s]</ref>、'''ブルーハニーサックル'''(Blue Honeysuckle)<ref>[https://shun-gate.com/en/roots/roots_73.html Blue Honeysuckle: A Berry of Longevity That Only Grows in Harsh Climates] THE ROOTS OF SHUN (July / BACK NUMBER 2018)</ref>などと呼んでいる。ハニーサックルとは[[スイカズラ属]]のことであり、ブルーハニーサックルとは「青いスイカズラ」といった意味になる。
== 分布 ==
北方系の植物で、[[シベリア]]、[[中国東北部]]、[[朝鮮半島]]、[[サハリン]]([[樺太]])、[[千島列島]]、[[カムチャツカ半島]]などの[[寒冷地]]に分布する。原産地はロシアの[[バイカル湖]]周辺で、[[渡り鳥]]が排泄した[[糞]]に混入していた[[種子]]が[[発芽]]して、根付いたものと思われる。
日本では、[[北海道]]を中心に、[[本州]]でも中部以北に自生する<ref name=":2" />。
北海道では[[檜山振興局]]と[[留萌振興局]]を除いた12の振興局で自生が確認されているが、連続的な分布ではなく、散在している。しばしば後述の[[勇払平野|勇払原野]]のみに自生するとされるが<ref name=":1" />、これは商品を販売するための創作である<ref name=":2" />。[[胆振総合振興局|胆振地方]]の[[勇払平野|勇払原野]]を中心とした地域が、最大の群生地であったが、1960年代の[[苫小牧港]]<ref>[https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kk/kou_kei/ud49g7000000au7y.html]</ref>や、[[苫小牧東部地域]]<ref>[http://tomatoh.co.jp/ 苫東]</ref>の開発の波を受けて、同地におけるハスカップの自生地は急速に縮小した。現在では、[[ウトナイ湖]]周辺と、[[弁天沼 (北海道)|弁天沼]]周辺などに、わずかに残る程度となった<ref>[http://www.iburi.pref.hokkaido.lg.jp/ss/num/grp/hascuphistory.pdf ハスカップの歴史]</ref>。その他、[[釧路湿原]]<ref>[http://www.kusiro.com/hana-kurominouguisukagura.html 釧路湿原の花]</ref>、[[別寒辺牛湿原]]<ref>[http://akkeshi-bekanbeushi.com/josei/report/report_h29/2017_06p.pdf 別寒辺牛湿原に自生するハスカップの生態特性と遺伝的多様性の解明]</ref>、[[霧多布湿原]]、[[大樹町]]周辺、[[別海町]]周辺、[[標津湿原]]など、北海道東南部の海岸沿いの低湿地や、[[大雪山]]、[[美幌峠]]、[[ピヤシリ山]]、[[知床]]、[[横津岳]]など、高山から亜高山にかけて分布する<ref>[http://www.iburi.pref.hokkaido.lg.jp/ss/num/grp/2hasukappulinnku1.pdf ハスカップの自生地]</ref><ref>[http://www.akkeshi-bekanbeushi.com/josei/report/report_h21/02hoshino_p.pdf クロミノウグイスカグラの地理的分布と倍数性調査。]</ref><ref>{{Cite conference|和書|author=星野洋一郎 |title=HUSCAPと私の研究 |year=2010 |month=oct |conference=5周年記念HUSCAP講演会 |journal=5周年記念HUSCAP講演会 講演1「HUSCAPと私の研究」. 平成22年10月21日. 北海道大学 |publisher=北方生物圏フィールド科学センター |url=https://hdl.handle.net/2115/44090}}</ref>。
[[本州]]以南では[[高山植物]]に相当し、栃木県の日光[[戦場ヶ原]]<ref>[http://tsukasan.hiho.jp/2011/110522NPVkaikachousa.htm 戦場ヶ原]</ref><ref>[http://tsukasan.hiho.jp/flower/album/kurominouguisukagura.htm クロミノウグイスカグラ]</ref>や、静岡県の[[荒川岳]]など、標高の高い地域に、わずかに自生している。
== 栄養成分・効能 ==
[[鉄]]分の100g当たりの含有量は、0.6mgで、ブルーベリーや、プルーンの含有量0.2mgの約3倍である<ref>[https://www.sakurai-s.blog/2020/06/18/%E3%83%8F%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AB%E3%81%AF%E9%89%84%E5%88%86%E3%81%8C%E3%81%9F%E3%81%A3%E3%81%B7%E3%82%8A%EF%BC%81%E8%B2%A7%E8%A1%80%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%81%AB%E3%82%82%E3%82%B0/ ハスカップには鉄分がたっぷり!貧血予防にもグッド!]</ref>。[[カルシウム]]は、ブルーベリーの約5倍である、100g当たり38mg含まる。
果実の[[苦味]]の成分として、[[生薬]]として利用されている[[ロガニン]]が含まれている<ref>[https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/article/764 いいね!Hokudai]</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=9F5BLRfZ08w&t=63s 北海道大学発 ハスカップ研究 HOKUDAI Only One! No.9]</ref><ref>[http://www.fsc.hokudai.ac.jp/farm/agroecosystem/blog/staff/hoshino-yoichiro/ スタッフ紹介 星野 洋一郎]</ref><ref>[https://projectdb.jst.go.jp/grant/JST-PROJECT-08069847/ ハスカップ苦味成分ロガニンの解析と未利用資源「葉」の有効利用]</ref>。なお、ロガニンは、果実より葉に著しく多く含まれており、今後の利用が期待されている<ref>[https://www.kudamononavi.com/gallerys/view/id=5824 ハスカップ(葉)]</ref>。また、果実には[[キナ酸]]が多く含まれている<ref>[https://www.nakashima-foundation.org/kieikai/pdf/20/20.pdf ハスカップの新規系統育成と加工品開発研究]</ref>。
== 利用の歴史 ==
=== アイヌによる利用 ===
もともとアイヌによって食用として利用されていた'''<ref name=":0" />'''。しばしば「アイヌの不老長寿の妙薬」といわれて宣伝されることがあるが<ref name=":1" /><ref name=":2" />、これは後述の菓子会社[[三星 (菓子製造)|三星]]が、商品宣伝のために捏造したものであると後年自ら明言している<ref name=":2">{{Cite web |url=https://ainugo.nam.go.jp/siror/monthly/201604.html#02 |title=《図鑑の小窓12》ハスカップ「不老長寿の妙薬」てんまつ記 |accessdate=2022-02-20 |publisher=アイヌ民族博物館 |author=安田千夏 |date=2016-04 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220219151335/https://ainugo.nam.go.jp/siror/monthly/201604.html |archivedate=2022‐02-20}}</ref>。
==== 伝承とその真偽 ====
アイヌに伝わるハスカップの伝承として、次のようなものが紹介されたことがある<ref name=":2" />。
{{Quotation|昔、アイヌの若者が小さい舟にのって漁をしていた。舟出した頃は天気がよかったが一天にわかに曇り海は荒れるにあれた。一生懸命に陸に向かってこいだが遂に力がつきていつの間にか若者は眠ってしまった。そして一夜がすぎて目を覚ましたら天候も回復し若者の舟は川の入り江に流れついていた。ところが腹が空いて思うようにうごけない。やっとの思いで川沿いにのぼったところ、見たことのない黒い実のなっている木を発見した。若者は夢中になって口の中にほうりこんだ。毒なのか、味がどうとかはわからなかったであろう。そのうちに次第に元気になり、浜に出て妻子の待っているコタンに帰ることができた。そして若者は勇払の浜に神の木があると話をし、神の食べものとして毎年神社にまつったという。|1979.7.13 [[苫小牧民報]]|「ハスカップ物語」}}
これについて、安田千夏は、前後して静内(現:[[新ひだか町]])で採録された海難伝承との類似性や、神社にまつる、など和人文化の影響がある点を指摘し、「アイヌによって語られたものであったとしても、昭和50年代まで語り継がれていた本来の海難伝承から派生したアレンジ」であり、「栄養分析の結果とアイヌの伝承があたかも一致したかのような『よくできた話』がいつのまにか流布して行った、というのが真相なのでは」と分析している<ref name=":2" />。
=== 和人入植後の利用 ===
* ハスカップはかつて、勇払原野、及び[[白老町]]から[[苫小牧市]]、[[厚真町]]、[[早来町]]、[[千歳市]]の一帯周辺に沢山自生していて、古くからこの地域の人々には大変なじみの深い果実であった。小学生が学校帰りにハスカップを摘みながら帰ったり、放課後にハスカップを摘みに行ったりしていた。また、初夏になるとハスカップを摘む風景が見られた。採ったハスカップの実は、そのまま生食としたほか、[[塩漬け]]<ref>[https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1790009888/ 使い方いろいろ☆ 「ハスカップの塩漬け」 レシピ・作り方]</ref>、[[砂糖漬け]]、[[焼酎]]漬けなどの保存食にしていた。また、この地域では[[梅干し]]代わりに塩漬けにしたハスカップを[[おにぎり]]の具材として使うという独特な[[食文化]]がある<ref>[https://ameblo.jp/atsuma-kankoukyoukai/entry-11345201203.html 厚真町観光協会認定おむすび発売!]</ref><ref>[https://cookpad.com/recipe/1915609 ハスカップおにぎり&ハスカップ巻き寿司]</ref>。
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* 昭和22~23年頃の沼ノ端小学校では、「ハスカップ休暇」というものがあって、ハスカップの最盛期の7月に3日間休校し、その間、児童たちは、ハスカップ群生地で摘み採りをした。
* 昭和30年(1955年)頃には、[[三星 (菓子製造)|三星]]が[[よいとまけ]]や[[羊羹]]の製造を開始し、それらの菓子の原料となるハスカップを買い入れることになったため、ハスカップが自生する原野には、ハスカップ狩りに来る人の数が急増した。摘み採ったハスカップの買い付けは、[[沼ノ端駅]]前の星野商店が行った。それは、自生地の開発が進む昭和40年代まで続いた。ハスカップ摘みの人は、主に小遣い稼ぎの主婦やお年寄りだったが、小さなミルク缶を持った小学生も多かった。ハスカップをミルク缶一杯に摘むと、当時で数百円にもなったため、小学生が苫小牧のお祭りで使うには、ちょうど良い小遣いとなった。当時の市営バス上厚真線は、群生地の[[沼ノ端]]、柏原、静川を通るため、ハスカップ摘みの季節になると、ハスカップ摘みの人達で百名近くの行列が出来た。ハスカップ摘みの人達は、独特なスタイルをしていて、当時「ガンガン部隊」<ref>[https://www.sapporo.coop/common/img/chocopdf/2020.07_web_all.pdf 「ガンガン部隊」、いざ出陣!]</ref>と呼ばれた。長袖のヤッケを着て、[[モンペ]]、ゴム長靴を履き、背中には[[リュックサック]]の中に[[一斗缶]]を入れたものを背負い、手に小さな[[缶]]を提げていた。親指、人差し指、中指の先の部分をカットして、細かい作業がしやすいようにした[[軍手]]をして、摘み採りをした。手に提げた缶が、摘んだハスカップの実で一杯になると、一斗缶に実を移した。こうして摘み採られたハスカップは、市場にも出荷された<ref>[http://www.iburi.pref.hokkaido.lg.jp/ss/num/grp/hascuphistory.pdf ハスカップの歴史]</ref>。
=== 野生種の採取から栽培へ ===
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* [[千歳市]]では[[新千歳空港]]の工事によってハスカップの群生地が壊されることとなったため、それを見かねた千歳市農協と農家は、1978年(昭和53年)頃から、千歳空港周辺や、自衛隊演習地に自生するハスカップ株を採集し、各農家の畑に移植して、[[栽培]]が始まった。
* [[美唄市]]では、[[三星 (菓子製造)|三星]]から委託され、1977年(昭和52年)からハスカップの栽培が行われている。
* [[苫小牧市]]や[[厚真町]]では、1980年(昭和55年)から1982年(昭和57年)の3年で、苫小牧西港の臨海工業基地や[[苫小牧東部地域]]の企業立地予定地から約23,000株のハスカップが各農家の畑に移植され、栽培が始まった。
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=== 品種の誕生 ===
ハスカップの野生種には、酸味がきつい系統、果実が小さい系統、苦み果(果実に苦みがある系統)、着色不良果(着色の薄い系統、果頂部の着色が遅れる系統)など、個体によって味などに "ばらつき" が見られるが、近年では[[農業試験場]]、又は、各ハスカップ農家によって優良な系統のハスカップが選抜されてきており、[[糖度]]が高く、大粒で、収量性が高い[[品種]]が作られてきている。日本では現在「'''ゆうふつ'''」、「'''あつまみらい'''」、「'''ゆうしげ'''」、「'''みえ'''」の4[[品種]]が登録されている。
==== ゆうふつ ====
国内初となったハスカップの品種である。1967年(昭和42年)に[[北海道立中央農業試験場]]が[[苫小牧市]][[沼ノ端]]のハスカップ自生地から株を採取し保存していたものを、1986年(昭和61年)に選抜したもので、1990年(平成2年)3月、北海道の優良品種に採用、1992年(平成4年)1月16日に品種登録された<ref>[https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kankoubutsu/syuhou/67/67-3.pdf ハスカップ新品種「ゆうふつ」の育成について]</ref>。
自家結実率28%(一般に数%以下)と比較的高いため収量性が高く、。自然受粉による結実も良好である。酸度はハスカップとしては低く、[[糖度]]は11度弱で中位である。
==== あつまみらい・ゆうしげ ====
[[厚真町]]のハスカップ栽培農家山口農園が選抜、登録した国内2番目・3番目のハスカップ品種。どちらも厚真町のみで栽培されている地域限定品種であり、現在、厚真町の90軒近くの農家が栽培を行っている<ref>[https://hasukappu.com/ ハスカップファーム 山口農園]</ref><ref>[http://www.jsapa.or.jp/pdf/mister/24/223yamaguchi_yoshinori.pdf]</ref><ref>[https://www.tfm.co.jp/lh/index.php?itemid=144509 北海道厚真町のハスカップ農家・山口善紀さん]</ref>。
もともと稲作・畜産複合経営農家であった山口家の畑には、山口美紀子が1978年(昭和53年)から3年間かけて、山採りして来た野生種のハスカップ株、約1,000本が移植されていた。
これは、美紀子が当時流通していたハスカップには、酸味の強い実や、苦味・渋味のある実もあったため、これでは、ハスカップはやがて売れなくなるだろうと予想したためで、美紀子は、自分が畑に移植したハスカップ株の実を、一本ずつ息子たちに味見させていき、酸味の強い株や、苦味や渋味のある株に印を付けさせ、善紀たちが印を付けた食味の悪いハスカップ株を抜いて焼却するという独自の方法によって、約30年の歳月をかけ「選抜育種」を行い、糖度が高く、且つ、大粒な実のなるハスカップを残していき、優良な系統の株を約30種類くらいまで絞り込んでいった。さらにその中から優良なものを20種類くらいまで絞り込んだ。
そして最終的に、実の大きさ、食味の良さなどの点が最も優秀と思われる2種に絞り込み、2009年(平成21年)12月21日に美紀子の息子である善紀が、2つをそれぞれ「あつまみらい」と「ゆうしげ」として品種登録した。
「あつまみらい」は、厚真町の未来を思って命名され、大粒で、実は固く甘く、ハスカップらしい爽やかな酸味がある点が特徴である。一方「ゆうしげ」は、善紀の祖父母の名前から命名された。同じく大粒で、酸味は少ない特徴がある。糖度はどちらも12度以上(リンゴやナシと同レベル)で、中には糖度14~15度になるものもある。また、どちらの実も2.5cm程で、野生種のハスカップの倍以上の大きさがある。
==== みえ ====
2012年(平成24年)に苫小牧市のハスカップ農家によって品種登録された<ref>[http://kampong.life.coocan.jp/Nov05/Part1/zok/haskap/haskap1.html 行きましたハスカップで町おこしの厚真町]</ref>。果実の形状は円形である。
=== ハスカップ加工の歴史 ===
ほとんどの場合、食品として加工された状態のものが流通している。これは、果実の日持ち性が悪く、生のままの保存が極めて難しい(生のままだと、徐々に果肉や皮が柔らかくなり、溶け出して液状化してしまう)ためである。近年では冷凍技術の発達により、実を冷凍した状態で流通している場合もあるが、流通量は極少である。
* ハスカップを原料にした菓子の製造を行った人物の先駆けとなったのは、1923年(大正12年)に[[苫小牧市]][[沼ノ端駅]]に近藤待合所(個人の待合所)を開いた'''近藤武雄'''と思われる。近藤は、当時沼ノ端駅の周辺一面に自生していたハスカップを何とか活用出来ないかという思いがあった。そして、1933年(昭和8年)に「ハスカップ'''[[羊羹]]'''」と「ハスカップ'''[[最中]]'''」を考案し販売した。更に「ハスカップ'''[[飴]]'''」を販売し、これらを駅の立ち売りで販売したのが最初である。これらの商品は、[[沼ノ端]]の名産として評判が良かった。「ハスカップ羊羹」はハスカップジャムと[[白あん]]、[[ザラメ]]を原料とし、四角いものと丸いものがあった。白あんにハスカップ果汁を練り込み、色は綺麗な深い紫色であった。「ハスカップ羊羹」は1936年(昭和11年)9月、陸軍特別大[[演習]]<ref>[https://www.city.sapporo.jp/ncms/shimin/heiwa/rekishi_senseki/senseki/senseki_06/ 北海道 陸軍特別大演習大本営(北海道大学)]</ref>で来道した[[天皇陛下]]に献上しており、[[宮内省]]から表彰されている。また、1943年(昭和18年)には、ハスカップ[[ジャム]]や[[ジュース]]も販売している。
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== 育て方 ==
ハスカップは、[[耐寒性]]に優れるが、耐暑性があまりないため、暖地での栽培には向かない。[[本州]]においては、[[東北地方]]の北部ぐらいまでが平地での栽培の限界と思われる。東北以南では、[[避暑地]]などの真夏でも30度を超えない高地であれば、栽培可能と思われる<ref>[https://www.sodatekatalab.jp/contents/detail/831/#contents-1 ハスカップの育て方・栽培・家庭菜園]</ref><ref>[https://www.sodatekatalab.jp/matome/detail/198/ ハスカップの育て方・栽培]</ref>。[[自家不和合性 (植物)|自家不和合性]]が高いため、果実の付きを良くするためには、受粉樹を混植する必要がある。受粉樹には開花時期が近い、他品種のハスカップを2本以上混植させると良いとされる<ref>[https://shop.takii.co.jp/simages/shop/selection/kaju1110_02.html 基礎から覚える 果樹の受粉マニュアル]</ref><ref>[https://botanica-media.jp/2052 ハスカップの育て方・栽培方法!水やりのコツや肥料の与え方など!]</ref>。
=== 主な病害虫 ===
ハスカップには、[[灰色かび病]]、[[うどんこ病]]、枝枯れ症、菌核病など5種の病害と、ニンジン[[アブラムシ]]<ref>[http://gaityuu.com/yasai/ninzin/ninzinabura/page0001.htm ニンジンアブラムシ] - 診断に役立つ埼玉の農作物病害虫写真集</ref>、ハマキムシ類、ナミ[[ハダニ]]、カタ[[カイガラムシ]]の一種、[[毛虫]]類、ナガチャコガネ<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=9pIr_aqtYUE ナガチャコガネ]</ref>など45種の[[害虫]]の発生が確認されている<ref>[https://www.japanfruit.jp/Portals/0/images/fruit/endemic/pdf/hasukappu.pdf ハスカップ] 公益財団法人 中央果実協会</ref><ref>[https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kankoubutsu/syuhou/67/67-3.pdf ハスカップの新品種「ゆうふつ」の育成について] - 道総研</ref>。
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== ハスカップの近縁種 ==
* [[ヤマウグイスカグラ|ウグイスカグラ]]
* [[ヤマウグイスカグラ]]
* [[ヤマウグイスカグラ|ミヤマウグイスカグラ]]
* [[コウグイスカグラ]]
*
== 市町村の花に指定している自治体 ==
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