「バルブ挟み角」の版間の差分

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高出力を追求するレース用エンジンにおいては、長期間にわたってバルブ挟み角の大きな2バルブエンジン(吸気1、排気1)が用いられていた。[[1940年代]]に、[[クライスラー]]は60°未満という従来より狭い挟み角を持つ、[[クライスラー・ヘミエンジン|ヘミエンジン]]を開発した。これは同社が航空機用エンジン[[クライスラー・IV-2220]]用に開発した技術で、以後同社の自動車用エンジンを代表する技術となった。一方、4バルブエンジンは[[水冷エンジン|水冷]][[V型12気筒|12気筒]]の航空機用エンジンで広く用いられていたが、バルブ挟み角は非常に狭いものであった。
 
当初、自動車用高性能エンジンでもバルブ挟み角の大きな2バルブエンジンが用いられていた。これは当時のエンジンは[[過給機|過給]]するために[[圧縮比]]が低く、バルブ挟み角を広くしても支障がなかったためである。しかし、[[第二次世界大戦]]後は二輪および四輪の自動車レースで[[自然吸気]]エンジンが次第に高性能化し、吸気2、排気2の4バルブシリンダーヘッドが用いられるようになった。レース用は高回転化により性能向上を達成するため、[[ボアストローク比]]が小さいビッグボア/[[ショートストローク]]エンジンへと移行していった。ストロークが短くなると吸気の慣性を利用しにくくなり、充填効率が下がる。また、ボアが大きくなると火炎伝播に時間がかかるようになる。しかも、大径バルブのせいで[[点火プラ]]が燃焼室の中心に配置できなくなる<ref>ビッグバルブの半球形燃焼室を持つエンジンでは、バルブを避けて点火プラグを2本装備するものもある。</ref>。これらの対策には、容積を小さくできる浅いペントルーフ形の燃焼室、点火プラグを中央に配置できる4バルブ、強いタンブル流(縦渦流)を発生させる直立した吸気ポートの組み合わせが適しており、[[1967年]]に登場した[[フォード・コスワース・DFVエンジン]]では30°台のバルブ挟み角となった。以後、レース用高回転型エンジンではこれがスタンダードとなり、現在では20°台が標準となっている。
 
市販車では、レース用エンジンほどのショートストロークエンジンは希ではあるが、バルブ挟み角を小さくすることによって燃焼室がコンパクトになり、冷却損失の低減等により燃費にも良い影響を及ぼすため、バルブ挟み角は20 - 30°台が広く用いられ、クライスラー・ヘミも、今日では30°台となっている。