「四畳半襖の下張」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
11行目:
「はじめの方は、ちぎれてなし」という説明ののちにはじまる「古人作の春本」は、[[老人]]もしくは[[中年]]者と思しき人物の回顧ふうな文章が冒頭に置かれており、[[性]]的体験の遍歴や年齢とともに変ってゆく女性観・性意識などが述べられた後、「おのれ女房のお袖」が[[芸者]]であった時分の交渉が物語られる。[[性行為]]の描写が終わると、お袖との結婚後の模様が作者の女遊びなどを交えて簡潔に記され、小説は唐突に終る。
 
小説・春本としての特色としては、性行為を描きながらも読者を興奮させるための[[ポルノ]]性の高い直接的な描写が少なく、逆に、短いながらも行為を通して女の情や性格をスケッチしてゆくするどい観察や描写にあるといえるだろう。

たとえば男が女の疲れを気遣って[[射精]]を我慢したまま行為を終えた後に、女が「あなたもちやんとやらなくちやいやよ、私ばかり何ば何でも気まりがわるいわ、と軟に鈴口を指の先にて撫でる工合」を見て、「この女思ふに老人の旦那にでもよくよく仕込まれた床上手と覚えたり」と男が思うあたりには、作者の観察の鋭さ、人間描写の巧みさがあらわれているだろうし、騎上位での行為の後、男の体の上で素裸になっていることに気づいた女が「流石に心付いては余りの取乱しかた今更に恥かしく、顔かくさうにも隠すべきものなき有様、せん方なく男の上に乗つたまゝにて、顔をば男の肩に押当て、大きな溜息つくばかりなり」と感じるあたりは、女性特有の心理をこまかく描いて、凡百の春本から一線を画すものである。『'''四畳半襖の下張'''』(しじょうはんふすまのしたばり)は、[[永井荷風]]作とされる[[性愛文学]]あるいは[[官能小説]]
 
==エピソード==