「日本人バイカル湖畔起源説」の版間の差分

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なお、21世紀に入って、[[ミトコンドリアDNA]]や[[Y染色体]]の分析にかかる知見が一段と蓄積され、[[日本列島]]のヒト集団のDNAが明らかになったこともあり異論も多い。特に弥生人の総数については当初よりかなり少ない数であったことや、稲作伝播を担ったY染色
 
== Gm遺伝子からのバイカル湖畔起源説 ==
[[松本秀雄]]([[大阪医科大学]]名誉教授)が、[[抗体]]を形成する[[免疫グロブリン]]を決定する[[遺伝子]](Gm遺伝子)頻度が民族ごとに固有の値となり、民族を示すマーカーとなるという仮定に基づき、東~東南アジアを中心に130の集団から約20,000人の血清資料を採集(シベリアの少数民族の血清はソ連科学アカデミーからのり提供)調査した結果、日本人の起源は基本的に北アジアであり、特にシベリアのバイカル地方の可能性が高いとした説である。なお、遺伝子の決定は血清に対する抗原抗体反応によって行われた。松本はGm遺伝子から日本人の起源について以下の研究結果を出した。
 
# Gm遺伝子の分布によって、[[モンゴロイド]]は、「南方系」と「北方系」に大別される。そして、日本人のほとんどは「北方系」である。南方系モンゴロイドとの混血率は低く7~8%以下である。
# 日本人は、北海道から沖縄に至るまで、基本的に北方型の遺伝子を持ち、ことGm遺伝子に関する限り、アイヌと島嶼を除き、顕著な等質性を示した。
# [[アイヌ]]と沖縄・宮古の人々は他の日本人集団よりも北方型遺伝子の一つの頻度が高く、南方型遺伝子の一つの頻度が低い等、幾分の相違を示し、その両者は特に等質性が高い。
# 台湾の土着の民族や約300年前に南中国から移住した人々の子孫である台湾人を調べると、典型的な南方系モンゴロイドのパターンを示しており、沖縄やアイヌの人々とは高い異質性を示している。
# [[朝鮮民族]]は、朝鮮半島(韓国)の人々と中国の朝鮮族とは高い等質性が認められ、日本人と同じように北方系モンゴロイドに属するGm遺伝子パターンを持つが、日本人以上に南方遺伝子の頻度が高く、日本人との異質性が存在することから、当初は日本民族と非常に近い遺伝子パターンを持っていたが、中国と朝鮮とのあいだの、相互移民や侵入などによって、海で隔てられた日本に比べ、北方少数民族や漢民族との混血をする機会がはるかに多く、これが民族の形成に影響したと考えられる。
# 中国の場合は、Gm遺伝子の頻度分布に、南北方向の勾配がみとめられる。漢民族の場合は、「北方型」と「南方型」の二つの型の存在を考えないと、分布パターンの説明が難しい。
 
これに対し名古屋大学理学部の[[吉田茂生]]は2007年に書評の中で、調査結果からは日本人とブリヤートの遺伝子構成が非常に近いことがわかるだけで、両者の共通祖先が他の所にいた可能性等もあり、日本人の起源がバイカル地方にあるとは言えないと主張している。
以上のような研究結果から、日本民族に高頻度に見られるGm遺伝子パターンの特徴は、バイカル湖畔のブリアートをピークとして四方に流れており、蒙古、朝鮮、日本、アイヌ、[[チベット]]、[[イヌイット]]に高頻度で、その源流はバイカル地方とするのが妥当であると推定した。
 
これに対し名古屋大学理学部の[[吉田茂生]]は2007年に書評の中で、調査結果からは日本人とブリヤートの遺伝子構成が非常に近いことがわかるだけで、両者の共通祖先が他の所にいた可能性等もあり、日本人の起源がバイカル地方にあるとは言えないと主張している。
 
東京大学理学部の[[尾本恵市]]と国立遺伝学研究所の[[斎藤成也]]は共同論文<ref>Genetic origins of the Japanese: a partial support for the dual structure hypothesis.</ref>の中で、すべての日本人の故郷をバイカル湖畔とする松本の説は、埴原を含め、日本の人類学者らの強い反論に合い、我々もまた、人類の個体群の起源についての判断は単独ではなく多くの遺伝子座の情報に基づくべきであると信じる、と述べている。
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しかし同時に松本と同じく埴原の原日本人(アイヌを含む縄文人)の南方起源説には賛成しかねると述べている<ref>尾本恵市 (1996)分子人類学と日本人の起源, 裳華房</ref>。
 
また、松本の研究では「日本人と韓国・中国人との異質性」や「北海道から沖縄に至るまで日本人の等質性」を示している(松本1992)が、斉藤と尾本の共同研究による系統図では「本土日本人はアイヌや沖縄県人、チベットと近く、韓国人、また中国人とは離れている」という研究結果を出している<ref name="saito">斉藤成也『DNAからみた日本人』筑摩書房 p56</ref>。
 
[[ペンシルベニア州立大学]]のRoychoudhuryと[[根井正利]]は、Gmがモンゴロイドを分けるために有意な役割を果たすと述べる一方、[[フェニルケトン尿症]]遺伝子の分布が松本の仮説を支持するように見えるが、この見方は、中国の北部と南部のより広い地域で大々的な標本調査が行われない限り受け入れ難く、また、単独の遺伝子座による情報は個体群の違いに歪んだ見方を与え得ることに注意すべきである、と述べている<ref>The Emergence and Dispersal of Mongoloids</ref>。