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[[File:Cornucopia.png|180px|thumb|カリフォルニア州をコルヌコピアに例えたポスター。]]
'''コルヌコピア'''(Cornucopia)、'''コルヌー・コーピアエ'''([[ラテン語]]: Cornū Cōpiae)とは、古代ギリシア・ローマ世界において、食べ物と豊かさの象徴として用いられた角のイメージである。その起源は紀元前5世紀に遡る。'''コルヌ・コピア'''<ref>{{Cite book|和書 |author = [[鶴岡真弓]] |year = 2017 |title = ケルト再生の思想 ハロウィンからの生命循環 |publisher = [[筑摩書房]] |page = 158 |isbn = 978-4-480-06998-6}}</ref>、'''コーニュコピア'''とも。
'''豊饒の角'''、'''アマルテイアの角'''、'''収穫の円錐'''とも呼ばれる。コルヌコピアは、ラテン語のコルヌ(角)とコピア(豊かさ)に由来する。
 
西アジアやヨーロッパでは、収穫したばかりの食材を入れて運ぶために、伝統的にこの形のバスケットやパニエが使われていた。角型のかごは背中に背負うか、胴体にぶら下げて、両手を自由に使って収穫することができた。
[[ギリシア神話]]によれば、[[アマルテイア]]は[[ゼウス]]を[[ヤギ]]の乳で育てたという。返礼にゼウスはアマルテイアに羊の角を与えた。角には、持ち主に望みのものを与える力があった。ここからコルヌコピアの伝説が生まれた。
 
[[File:Antoninianus Claudius II-RIC 0137.jpg|thumb|left|200px|ローマ神話の女神がコルヌコピアを手にしている。]]
== 起源 ==
果物と花で満たされた羊の角で表現される。神、特に[[フォルトゥーナ]]は、コルヌコピアとともに描かれる。近代の表現においてコルヌコピアは一般に、柳の枝を角型に編んだ籠をさまざまな果物や野菜で満たした形で表される。コルヌコピアは[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では、[[感謝祭]]や収穫と関連付けられるようになっている。
ギリシア・ローマ神話において、コルヌコピアの起源について様々な説明がなされている。最もよく知られているのは、幼い[[ゼウス]]の誕生と育児についてのものである。幼いゼウスは、[[クレタ島]]のイーダ山の洞窟で父[[クロノス]]から隠され、多くの神の眷属に保護されていた。その眷属の一人である、ヤギの[[アマルテイア]]は自身の乳をゼウスにあげ、育てた。ある日、ゼウスはアマルティアと遊んでいる際に誤って角を折ってしまうが、その角は養母と同じように滋養を与える神通力を持っていた<ref>{{Cite journal|last=MIKALSON|first=JON D.|date=2007-02-06|title=(R.) Parker Polytheism and Society at Athens. Pp. xxxii + 544, ills, maps. Oxford: Oxford University Press, 2005. Cased, £65. ISBN: 978-0-19-927483-3.|url=http://dx.doi.org/10.1017/s0009840x06003659|journal=The Classical Review|volume=57|issue=1|pages=147–150|doi=10.1017/s0009840x06003659|issn=0009-840X}}</ref>。
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別の神話では、[[ヘラクレス]]が川の神アケラスと格闘してその角を引きちぎり、コルヌコピアを作ったとされている。<ref>{{Citation|title=The Cult of Virtues and Roman Imperial Ideology|last=Fears|first=J. Rufus|date=1981-01-31|url=http://dx.doi.org/10.1515/9783110850680-007|publisher=De Gruyter|access-date=2022-06-02}}</ref>この神話は、アメリカの画家[[トーマス・ハート・ベントン (画家)|トーマス・ハート・ベントン]]による壁画「アケラスとヘラクレス」に描かれている。
 
コルヌコピアは収穫や繁栄、精神的な豊かさに関連する神々の象徴とされている。穀物の女神[[デメテル]]の息子である[[プルトス]]、[[ニンフ]]の[[マイア]]、繁栄を与える力を持つ幸運の女神[[フォルトゥーナ]]など、大地を擬人化した神々と関連づけられることが多い。ローマ帝国の教義では、平和([[パクス・ロマーナ]])と繁栄をもたらす抽象的なローマ神話の神々もコルヌコピアを持って描かれ、「豊かさ」を擬人化した[[アブンダンティア]]や、ローマ市への穀物供給を司る女神アンノーナが描かれている。冥界の支配者である[[ハデス]]も、農産物や鉱物、精神的な豊かさを与える存在であり、絵画などではしばしばコルヌコピアを手にして描かれている<ref>{{Cite web |title=Supplementum Epigraphicum GraecumAthens. Myth and Cult: The Iconography of the Eleusinian Mysteries. |url=http://dx.doi.org/10.1163/1874-6772_seg_a42_241 |website=Supplementum Epigraphicum Graecum |access-date=}}</ref>。[[File:Antoninianus Claudius II-RIC 0137.jpg|thumb|left|200px|ローマ神話の女神がコルヌコピアを手にしている。]]
 
== 現代における描写 ==
現代では、コルヌコピアは籐の枝を角型に編んだ籠をさまざまな果物や野菜で満たした形で表されることが多い。
 
北米では、コルヌコピアは[[感謝祭]]や収穫と関連付けられるようになっている。アイダホ州の国旗と州章には、2つのコルヌコピアが描かれている。ノースカロライナの国章には、プレンティがコルヌコピアを持つ姿が描かれている。コロンビア、パナマ、ペルー、ベネズエラの紋章と、オーストラリアのビクトリア州の紋章にも、繁栄を象徴するコルヌコピアが描かれている。
 
コルヌコピアのモチーフは、書籍シリーズ『[[ハンガー・ゲーム]]』でも使われている。シリーズで描かれる同名の剣闘試合では、武器や装備の詰まった大きな角のような入れ物がスタート地点に置かれる。この入れ物は「コルヌコピア」と呼ばれ、ゲーム開始からの数分間は戦いの焦点となる。映画では、シリーズの主な舞台であるパネムの国歌が「豊穣の角」と呼ばれ、歌詞中でも複数回言及される。{{clear}}
 
== 脚注 ==