「線型方程式」の版間の差分

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'''線型方程式'''(せんけいほうていしき、''linear equation'')とは、[[線型性]]を持つ[[写像]]([[関数 (数学)|関数]]・[[作用素]])の等式で表される[[方程式]]のことである。
 
線型方程式においては、その線型性から[[]]の'''重ね合わせ'''が成り立つなどいくつものよい性質が成り立つ。線型方程式(特に多変数の一次代数方程式)の研究から[[行列]]などの手法が整備され、[[線型代数学]]という一分野が形成された。
 
[[線型代数学]]の整備により、多くの場合に線型方程式の[[係数]]を[[実数]]や[[複素数]]に限らず、[[四則演算]]が自由にできる(つまり[[体 (数学)|体]]と呼ばれる[[代数的構造]]をもつ)[[集合]]からとったとして広く適用できる結果が知られている。
 
以下、特に断らない場合は[[係数]]をとる[[集合]] ''K'' を(可換な)体とする。多くの場合 ''K'' は、[[実数]]全体の成す[[集合]] '''R''' または[[複素数]]全体の成す[[集合]] '''C''' のことと思って差し支えない。
 
==一次方程式==
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'''a''' = (''a''<sub>1</sub>, ''a''<sub>2</sub>, ..., ''a''<sub>''n''</sub>), '''x''' = (''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub>) とおくと、
:<math>a_1 x_1 + a_2 x_2 + \cdots + a_n x_n + b = 0</math>
と書いても同じことである("一次" 方程式というのは、"一次[[多項式]]" を 0 に等しいとおいて[[定義]]される[[方程式]]という意味である)。''b'' = 0 のとき斉次または同次形であるという。
 
''f''<sub>'''a'''</sub>('''x''') = ('''a''', '''x''') とおいて得られる写像 ''f''<sub>'''a'''</sub>: ''K''<sup>''n''</sup> &rarr; ''K'' は '''x''' に関して線型性を持つ。
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参考:[[一次関数]]
 
''n'' 元一次方程式を ''m'' 本連立させた[[線型方程式系|方程式系]]を考えよう。このとき、各[[方程式]]
('''a'''<sub>''i''</sub>, '''x''') + ''b''<sub>''i''</sub> = 0 ('''a'''<sub>''i''</sub> = (''a''<sub>''i'' 1</sub>, ''a''<sub>''i'' 2</sub>, ..., ''a''<sub>''in''</sub>), ''i'' = 1, 2, ..., ''m'') で与えられているなら、[[線型代数学]]で取り扱われるように、''m'' 行 ''n'' 列の[[行列]](係数行列) ''A'' = (''a''<sub>''ij''</sub>) を用いて、この[[方程式]]系を
: ''A'' '''x''' + '''b''' = 0
の形に整理することが出来る(ただし、'''b''' = (''b''<sub>1</sub>, ''b''<sub>2</sub>, ..., ''b''<sub>''m''</sub>)<sup>T</sub>: 縦ベクトル)。これも '''b''' = 0 のときには斉次の[[方程式]]系であるという。[[方程式]]の本数 ''m'' は[[行列]] ''A'' の[[行列の階数|階数]] rank ''A'' まで減らすことが出来る。また、''m'' = rank ''A'' かつ ''m'' &gt; ''n'' のとき、''m'' - ''n'' 個の任意定数を導入する(あるいは ''m'' - ''n'' 個の変数を任意定数と見做す)ことで、議論を ''m'' = ''n'' のときに帰着することが出来る。
 
''f''<sub>''A''</sub>('''x''') = ''A'' '''x''' と置いて得られる写像 ''f''<sub>''A''</sub>: ''K''<sup>''n''</sup> &rarr; ''K''<sup>''m''</sup> は '''x''' に関して線型性を持つ。
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==線型微分方程式==
===高階単独型===
''x'' の[[関数]] ''y'' の高階微分 ''d<sup>i</sup>y''/''dx<sup>i</sup>'' および、可微分関数 ''a''<sub>''i''</sub>(''x'') (1 &le; ''i'' &le; ''n''), ''b''(''x'') により
:<math>\frac{d^n y}{dx^n} + a_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}} + \cdots + a_1(x)y = b(x)</math>
で表される[[微分方程式]]を'''単独高階型の線型微分方程式'''という。''b'' = 0 であるとき'''斉次'''であるといい、
:<math>\frac{d^n y}{dx^n} + a_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}} + \cdots + a_1(x)y = 0</math>
を元の方程式に'''属する斉次方程式'''という。
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微分作用素 ''f''(''d'' /''dx) を
:<math>f(d/dx) = \frac{d^n}{dx^n} + a_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}}{dx^{n-1}} + \cdots + a_1(x)</math>
で定めると、未知[[関数]] ''y'' への作用 ''f''(''d'' /''dx'')''y'' は ''y'' に関して線型性をもつ。
 
===一階連立型===
各成分が[[変数]] ''x'' の(適当な階数の)可微分関数である ''n'' 次元縦ベクトル '''y'''(''x''), ''m'' 次元縦ベクトル '''b'''(''x'') および ''m'' &times; ''n'' [[行列]] ''A''(''x'') に対し、
:<math>\frac{d\mathbf{y}}{dx} = A(x)\mathbf{y} + \mathbf{b}</math>
で定義される[[微分方程式]](系)を ''A''(''x'') を'''係数行列'''とする'''一階連立型線型微分方程式'''などとよぶ。
'''b'''(''x'') = 0 (for all ''x'') であるとき、'''斉次'''(または'''同次''')であるといい、
:<math>\frac{d\mathbf{y}}{dx} = A(x)\mathbf{y}</math>
を元の[[方程式]]に'''属する斉次方程式'''という。右辺の ''A''(''x'')'''y''' は '''y''' に関して線型性を持つ。
 
高階単独型線型微分方程式は、変換
:<math>y_i := \frac{d^{i-1}y}{dx^{i-1}}</math>
(''i'' = 1, 2, ..., ''n'') により一階連立型の[[微分方程式]]に変形できる。
 
==重ね合わせの原理==
 
斉次方程式の持つ線型性から、''X'', ''Y'' がその[[方程式]][[]]ならばその一次結合 &alpha;''X'' + &beta;''Y'' もやはりその[[方程式]][[]]となる。このことを指して'''重ね合わせの原理'''が成り立つという。
斉次でない[[方程式]]も、一つの特殊解が見つかれば、ほかの[[]]はその[[方程式]]に属する斉次方程式の解を加えることにより得られる。
 
したがって、線型方程式の[[]]の全体は一つのベクトル空間(あるいは[[アフィン空間]])をつくる。これを方程式の'''解空間'''という。
 
===超平面===
0 でない ''n'' [[変数]]の ''K'' 係数一次多項式 ''a''<sub>1</sub>''x''<sub>1</sub> + ''a''<sub>2</sub>''x''<sub>2</sub> + &hellip; + ''a''<sub>''n''</sub>''x''<sub>''n''</sub> (''a''<sub>''i''</sub> &isin; ''K'') に対し、
:<math>a_1 x_1 + a_2 x_2 + \cdots + a_n x_n = b \quad (b \in K)</math>
つまり、一本の一次方程式の解空間として[[定義]]される ''K<sup>n</sup>'' の ''n'' - 1 次の[[部分空間|部分線型空間]]を、'''超平面'''と呼ぶ。