犬身』(けんしん)は、日本の小説家松浦理英子による小説

犬身
著者 松浦理英子
発行日 単行本:2007年10月5日
文庫版:2010年9月7日
発行元 朝日新聞出版
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 単行本:四六判上製本
文庫版:文庫判
ページ数 単行本:512
文庫版上巻:344
文庫版下巻:304
公式サイト 単行本:犬身 単行本 朝日新聞出版
文庫版上巻:犬身 上 朝日文庫
文庫版下巻:犬身 下 朝日文庫
コード 単行本:ISBN 978-4-02-250335-0
文庫版上巻:ISBN 978-4-02-264565-4
文庫版下巻:ISBN 978-4-02-264564-7
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株式会社パブリッシングリンクが提供する電子書籍配信サービス "Timebook Town" 上に2004年4月から2007年6月まで連載される[1]。単行本は、2007年10月5日に朝日新聞社より刊行された[2]。単行本の装幀は、ミルキィ・イソベによる[1]。第59回(2007年度)読売文学賞小説賞を受賞している[3]。第7回(2007年度)センス・オブ・ジェンダー賞大賞に選出されたが、辞退している[4]。文庫版は、2010年9月7日に朝日文庫より刊行された[5]

著者の松浦は、「犬好きの人はなぜ犬を愛するのか。犬はなぜ人を慕うのか。言葉も交わせないのに、そこには確実な愛情関係がある。性的欲求とは別の、愛情と、皮膚感覚の官能的な喜びを描けるのではないかと考えました」[6]と述べている。

あらすじ 編集

3年ほど前に狗児市にやってきた八束房恵は、『犬の眼』という名前のタウン誌編集者として働いている。房恵は、をこよなく愛するあまり、「犬になりたい」という願望をもっており、自分は、身体が人間で魂は犬という「種同一性障害」であると考えている。房恵は、自分の愛犬が怪我をすることより、他人が怪我をすることを選ぶ陶芸家、玉石梓に強い好意を感じ、やがて彼女の犬になりたい、と思うようになる。そして、房恵は、バー「天狼」のマスターであり魂のコレクターを自称する朱尾献と、死後に魂を譲り渡す契約を結び、オスの仔犬に変身を遂げ、梓にフサと名付けられ、彼女とともに暮らし始める。

主な登場人物 編集

八束房恵
タウン誌『犬の眼』編集者。
久喜洋一
同編集長。
玉石梓
女性陶芸家。
朱尾献
バーのマスター。

書評 編集

小説家の中沢けいは、「『柔らかくて激しい小説』などという言い回しは少し変かも知れない。しかし、そういう表現が可能だと思えるほど、この小説は豊かな広がりを持っている」[7]と評価している。評論家の荻上チキは、「ジェンダーをめぐる問いを幾重も経由した果ての、再帰的な回答として提示された物語の重さがある」[8]と評価している。小学館のサイト「小説丸」には、「遠く離れた世界の住人になれること、現実にはありえない出来事に素直に共感できること、どちらも小説を読む喜びを存分に味わえる作品」[9]とする書店員による書評が掲載されている。

脚注 編集

  1. ^ a b 『犬身』 2007.
  2. ^ 犬身 単行本”. 朝日新聞出版. 2018年12月14日閲覧。
  3. ^ 読売文学賞 第51回(1999年度)~第60回(2008年度)”. 読売新聞社. 2018年12月14日閲覧。
  4. ^ 2007年度 第7回Sense of Gender賞 大賞”. ジェンダーSF研究会. 2018年12月14日閲覧。
  5. ^ 犬身 上 文庫版”. 朝日新聞出版. 2018年12月14日閲覧。犬身 下 文庫版”. 朝日新聞出版. 2018年12月14日閲覧。
  6. ^ “性も種も超える愛「犬身」 松浦理英子氏、7年ぶり長編小説”. 朝日新聞. (2007年10月31日). オリジナルの2007年12月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071204173333/https://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200710310092.html 2018年12月14日閲覧。 
  7. ^ 中沢けい (2008年1月1日). “柔らかくて激しい小説 - 松浦理英子著『犬身』(朝日新聞社)書評”. 2018年12月14日閲覧。
  8. ^ 荻上チキ. “2007年度 第7回Sense of Gender賞 講評”. 2018年12月14日閲覧。
  9. ^ 初夏の清々しい気持ちとともに読書に没頭 ひと時いまを忘れて魅力的な物語の世界へ”. 小学館 (2011年5月5日). 2018年12月14日閲覧。

参考文献 編集

  • 松浦理英子『犬身』朝日新聞出版、2007年。ISBN 978-4-02-250335-0