知恵熱(ちえねつ)とは、本来は乳幼児期に突発的に起こることのある発熱を指す[1]。代表的なものとしてヒトヘルペスウイルス6型および7型による突発性発疹に伴う発熱が挙げられる[2]。なお、日本語の「知恵熱」については本来の意味とは異なる「深く考えたり頭を使ったりした後の発熱」という用法がみられるようになっている[1](後述)。

幼児の発熱 編集

医学が発展していなかった時代に原因不明の乳幼児の急な発熱が「知恵熱」と呼ばれたが、その原因の多くは実際には突発性発疹であると考えられている[3]。また、乳歯萌出開始期(7か月~9か月頃)にあたる生歯期の発熱であることから「生歯症」と呼ばれたこともあるが、歯の萌出と発熱等の全身症状との間には直接関連はない[4]

英語圏では「歯が生え始める時期の熱」という意味で"teething fever"と呼ばれることがあるが、この語は乳幼児期の言語の獲得の文脈でも用いられる[5]

誤用や俗用 編集

「知恵熱」という文字面から「頭の使い過ぎによる発熱」という意味で誤用されることが多々ある[6]。例)篠原ともえのシングル「クルクルミラクル」の歌詞。

文化庁の「平成28年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」によると、「知恵熱」について「乳幼児期に突然起こることのある発熱」を意味すると回答した人が45.6%、「深く考えたり頭を使ったりした後の発熱」を意味すると回答した人が40.2%、両方と回答した人が6.9%、これらとは全く別の意味と回答した人が4.5%、わからないと回答した人が2.7%だった[1]

なお、成人にみられる極度のストレスにより体温が上がる症状は俗に「大人の知恵熱」と呼ばれることがあるが、その原因としてストレス性高体温症が挙げられている[7]

脚注 編集

  1. ^ a b c 平成28年度「国語に関する世論調査」の結果の概要”. 文化庁. 2023年6月7日閲覧。
  2. ^ 中込治ほか、『標準微生物学』、医学書院、2016年1月15日 第12版 第2刷、422ページの右段の本文の下部
  3. ^ 知恵熱ってあるの?赤ちゃんの高熱の本当の原因と対処法”. hoplus. 2023年6月7日閲覧。
  4. ^ 第5編 予防接種”. 長野県. 2023年6月7日閲覧。
  5. ^ 岩垣 守彦. “言葉の習得とコモンセンス”. 人工知能学会第2種研究会. 2023年6月7日閲覧。
  6. ^ 言葉の誤用 - 意味にご用心
  7. ^ 風邪でもないのに高熱って、知恵熱?実は「ストレス性高体温症」という病気だった!”. 講談社 FORZA STYLE. 2023年6月7日閲覧。