緊急離着陸場(きんきゅうりちゃくりくじょう、英語: Emergency Helicopter Landing Facilities)とは消防活動のために高層ビルの屋上に設置されたヘリコプターの離着陸場の一種。緊急用離着陸施設[1]緊急発着場とも呼ばれる。略称はEHLF[1]

ビル屋上に設置された緊急離着陸場

米国編集

連邦航空局(FAA)はビル火災の多くの実例を調査分析した結果、1990年代初めの報告書「ヘリポート・デザイン・アドバイザリー・サーキュラー」で緊急用離着陸施設の有効性を強調し、高層ビルの設計においては屋上にヘリコプター施設を設けることが望ましいと勧告した[1]。連邦航空局の分析ではヘリコプターは高層ビル火災での人命救助や消火活動に有効だが、あらかじめ緊急用施設があればもっと安全に効率よく救助活動ができた事例が多くみられたとしている[1]

連邦航空局の勧告を受けて、ロサンゼルスサンディエゴなどの都市は条例で高層ビルに設置義務を課している[1]

日本編集

航空法に定めるヘリポートとは異なり、航空機使用事業や航空機運送事業の用に供することはできない。あくまで火事等の緊急時に消防防災ヘリなどが救助活動及び消火活動に利用することのみが目的の施設であり、それ以外の目的でのヘリコプターの離着陸は許可されない。この意味からも航空法でいう「ヘリポート」とこの「緊急離着陸場」とは似て非なるものとされる。

なお緊急離着陸場と同様の目的で設置を求められているものに緊急救助用スペースがあるが、この緊急救助用スペースにはヘリコプターは着陸することができずホバリングにより救助活動を行う。

航空関係者の間では、緊急離着陸場はHマーク(エッチマーク)、緊急救助用スペースはRマーク(アールマーク)と呼ばれている。

歴史編集

昭和63年(1988年)にロサンゼルスの超高層ビル(ファーストインターステートバンクビル火災英語版)で大規模火災が発生した折に、屋上に避難した多くの人をヘリコプターで救助した。この事例を受け、日本では、平成2年(1990年)に建設省住宅局建築指導課および消防庁消防課、同予防課、同救急救助課から「高層建築物等におけるヘリコプターの屋上緊急離着陸場等の設置の推進について」との通達が出され、それ以降、急速に普及することになった[2]

高層ビル火災においては、はしご車による救助活動に限界があるため、当初は高さ31mを超える高層建築物への設置を指導することとなった。

構造・強度編集

 
反復利用されるヘリポートと緊急離着陸場の構造比較

緊急離着陸場は火事の場合しか利用されないため日本中のほとんどの緊急離着陸場には実際にヘリは一度も下りることはない。このため反復利用が前提のヘリポートに比べると緊急離着陸場の構造は簡易なものとなっている。

ヘリポートの基準は航空法で細かく定められているのに対し、緊急離着陸場の基準は各自治体の消防に任せられている。

ただし床の強度に関してはICAO(国際民間航空機関)の基準に従うことになっており、着陸する機体の全備重量の2.5倍を2点(2車輪あるいは2スキッド)で支持できることとされる。

コンクリート製の緊急離着陸場の場合、コンクリート上面を防水層で覆う必要があるが、その防水層を守るための保護モルタル(軽量コンクリート)の強度までは求められない。これは反復利用のヘリポートとは異なり、基本的に一度もヘリコプター着陸することのない施設に大きなコストをかけることができないための措置である。救助活動でヘリコプターが着陸して保護モルタルが割れても大きな問題にはならない。補修すればすむからである。

大きさ
一般的に着陸帯の面積は20m×20mで各自治体消防によって異なる。東京消防では着陸する機体によって20m×20m、24m×24mなどに区分され、大阪市消防は機体に関係なく20m×20mである。
マーキング
離着陸場には黄色線で着陸帯の矩形を示し、その中央部に同じく黄色でHのマークを表示する。
脱落転落防止施設
着陸帯周りには、救助隊員・要救助者等の転落を防止するための措置を講じなければならない。この施設の形状等は各自治体消防によって異なる。例えばその施設の幅は東京では1.5m以上であるが名古屋市消防は2.0m以上とされる。

脚注編集

関連項目編集