表皮細胞増殖因子(KGF、Keratinocyte Growth Factor、ケラチノサイト・グロースファクター))は、成長因子の1つ[1]。FGF(線維芽細胞増殖因子)の1種でもあり、FGF-7とも呼ばれる[2]。下記のとおり多数の別称をもつ。

  • ケラチノサイト増殖因子[3]
  • ケラチノサイト成長因子[4]
  • ケラチン細胞増殖因子[5]
  • 角質細胞増殖因子[6][7][8]

歴史

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1989年にJ S Rubin、H Osadaらが発見した[9]。この際、論文のタイトル内で「上皮細胞で新たに同定された、特異的な成長因子」と報告されている[9]論文中で暫定的に用いられた名称がKGF(ケラチノサイト増殖因子)であり、以後もこの名称(および類似の名称)が定着した(冒頭記述のとおり)。国内の医学論文で「KGF」を主題とした論文では「表皮細胞増殖因子(KGF)」のタイトルで発表されている[1]このため、当頁の名称は「表皮細胞増殖因子」を採用している(以下、略称のKGFを用いる)。

発見の動機

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皮膚にとくに大きな影響を与える細胞は「線維芽細胞」と「上皮細胞」である。このうち「線維芽細胞の増殖は促進するが、上皮細胞の増殖は促進しない」という成長因子は、すでに発見されていた。血小板由来増殖因子(PDGF)などである[1]。この事実から「逆に、線維芽細胞の増殖は促進せず、上皮細胞の増殖は促進する」という成長因子が存在するのではないかと、考えられた。そのような因子を探索し、発見したのがRubinとOsadaらである。

性質

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発生

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KGFは線維芽細胞から発生する[10] 。線維芽細胞から発生するが、①線維芽細胞にはほぼ作用せず、②上皮細胞に作用する。この①、②の性質(発生した細胞に作用せず、別の細胞に作用する性質)をもつ増殖因子は「パラクリン型増殖因子」と呼ばれる。KGFはこの「パラクリン型」の増殖因子である[1]

作用発現

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KGFの作用は、KGF受容体(KGFR=KGF Receptor)との結合によって起こる[11]。KGF受容体は、上皮細胞に存在する[12]。上皮細胞は、下記4つの細胞を総称したものである(つまり、これらの場所にKGF受容体が存在する)[13]

  • 表皮細胞(体表面を覆う)
  • 上皮細胞(管腔臓器の粘膜を構成する)※狭義の上皮細胞
  • 腺房細胞(外分泌腺を構成する)
  • 腺細胞(内分泌腺を構成する)

なお、プロテオグリカンはKGFを含めた線維芽細胞増殖因子と、受容体の結合を安定化させることが報告されている(端的にいうと、プロテオグリカンはKGFの作用にプラスとなる可能性がある)[14]

使用

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化粧品表示名称は『ヒト遺伝子組換ポリペプチド-3』(rh-Polypeptide-3)である[15]。旧称は『ヒトオリゴペプチド-5』であった[16][17]。(※ポリペプチドとオリゴペプチドの混同に注意されたい)

脚注

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出典

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  1. ^ a b c d 表皮細胞増殖因子(KGF)『臨床検査』36巻1号(1992年1月) - 医書.jp
  2. ^ ヒト FGF-7(KGF)タンパク質 - コスモ・バイオ株式会社
  3. ^ ケラチノサイト増殖因子受容体系を用いた新たな膵臓癌治療戦略の検討 - KAKEN
  4. ^ ケラチノサイト成長因子(KGF / FGF7) - 富士フイルム和光純薬株式会社
  5. ^ ヒト卵胞中にケラチン細胞増殖因子(KGF)が存在する証拠 - J-GLOBAL
  6. ^ ヒト線維芽細胞成長因子7(Fibroblast Growth Factor, FGF-7) - バイオアカデミア株式会社
  7. ^ FGF-7とは - 特定非営利活動法人・日本EGF協会
  8. ^ 角質細胞増殖因子−2の治療的使用 - Google Patents
  9. ^ a b Rubin, Jeffrey S; Osada, Hiroyuki; Finch, Paul W; Taylor, William G; Rudikoff, Stuart; Aaronson, Stuart A (1989). “Purification and characterization of a newly identified growth factor specific for epithelial cells.”. Proceedings of the National Academy of Sciences (National Acad Sciences) 86 (3): 802-806. doi:10.1073/pnas.86.3.802. PMC 286565. PMID 2915979. https://doi.org/10.1073%2Fpnas.86.3.802. 
  10. ^ 気道のリモデリングと遺伝子型(第126回日本医学会シンポジウム) -日本医学会(JAMS)
  11. ^ 研究内容について - 長崎大学医学部
  12. ^ 研究紹介 - 広島大学
  13. ^ 上皮細胞が自律的に集団で移動する仕組みの発見 - 理化学研究所
  14. ^ ルミカンによるケラチノサイト増殖因子シグナル伝達経路の制御機構の開発と治療応用 - 科学研究費補助金研究成果補酵素
  15. ^ 成長因子化粧品原料 - Cytokines labs
  16. ^ ヒトオリゴペプチド-5 - Cosmetic-Info.jp
  17. ^ ヒト遺伝子組換ポリペプチド-3 - Cosmetic-Info.jp

関連項目

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