逆行形(ぎゃっこうけい、英語:inverse form)は、他動詞節の被動者項の有生性が、動作主項の有生性よりも高いことを示す動詞の形式。語形変化を伴わない場合を含め、逆行態(ぎゃっこうたい)ということもある。被動者項の有生性が動作主項の有生性より低い場合は順行形(じゅんこうけい、direct form)が用いられる。

逆行態自体は言語を問わず見られるが、日本語のような主題優勢言語においては、一般的に逆行態は好まれない。例えば「そのニュースは我々を驚かせた。」のような逆行態の文は日本語使用者に違和感を感じさせる。この場合、有生性の高い主体を主題としての主語とし「我々はそのニュースに驚いた。」と表現される。

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典型的な例は北米のアルゴンキン語派に見られる。アルゴンキン語派では、「二人称一人称三人称近接形 (proximate)>三人称疎遠形 (obviative)」の階層の中で、被動者項が動作主項よりも左側にある場合に、逆行形が用いられる。

(1) ne -waapam -aa -wa
1SG -見る -順行 -3
私は彼を見る。
(2) ne -waapam -ek -wa
1SG -見る -逆行 -3
彼は私を見る。

(1)では、見られる「彼」が見る「私」よりも階層の左にないので、順行形が用いられている。 (2)では見られる「私」が見る「彼」よりも階層の左にあるので逆行形が用いられる(例はフォックス語、Comrie 1989: 129)。

関連項目 編集

参考文献 編集

  • Comrie, Bernard. 1989. Language Universals and Linguistic Typology.