大学入学共通テスト

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大学入学共通テスト(だいがくにゅうがくきょうつうテスト)は、大学入試センター試験にかわり、2021年度大学入学者選抜(2021年1月中旬実施)からの導入が予定されている日本の大学共通入学試験である。独立行政法人大学入試センター(DNC)によって実施される。

会話文を題材とした問題や複数テキスト問題などが導入される[1]ほか、すでに延期が決定しているが、国語・数学での記述問題の導入や、英語での民間試験の活用が予定されていた。

概要編集

かつての大学共通第1次学力試験、現在の大学入試センター試験の流れを汲む試験であり、2020年度(令和2年度)より導入される。

大学入学共通テストは、2013年(平成25年)10月31日の教育再生実行会議第四次提言(高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について)において提言されたテストであり、高等学校教育の質の確保と向上を目的としている。2014(平成26)年の12月中央教育審議会答申、2016(平成28)年3月の高大接続システム改革会議「最終報告」等を経て、実施開始年度は2020年度で、2021年1月中旬に行われる2021年度大学入学者選抜からとなった[2]。検討の過程では、CBT方式(Computer Based Testing)の導入[3]や、新科目として「情報」の創設[4]なども考えられていた。

当初は「大学入学希望者学力評価テスト」という名称であった[5]が、大学入学共通テストという名称に変更された。2019年(平成31年)1月現在、「大学入学共通テスト(新テスト)」「共通テスト」などと表記されている[6]

出題される教科・科目は大学入試センター試験同様6教科30科目であるが、2024年度以降は簡素化が予定されている[7]

日程は大学入試センター試験と同様に、1月13日以降の最初の土曜日及び日曜日[8]

記述式問題の導入編集

国語と数学には記述式問題の導入が予定されていたが、2019年12月17日に導入の見送りが発表された。以下の内容は見送り決定以前の計画に基づくものである。

概要編集

国語と数学I・Aにはそれぞれ3問ずつの記述式問題の導入が予定されていた。

国語は現代文の部分に導入され、最も長いものは80〜120字で答えるものであった。小問は3段階で評価され、それをもとに大問全体として5段階で結果が出されることになっていた。なお、国語においては記述式問題の結果はマークシート部分とは別で提供されるため、大学側で選抜に利用しないという選択が可能であった。[9]記述式問題の導入に伴い、試験時間が従来の80分から100分に延長されることが予定されていた。[8]

数学については数式や語句を答える短答式の問題が導入されることになっていた。マークシート部分と一体で結果が出されるため、国語と異なり大学側が利用しないという判断をすることはできない予定であった。[9]また、記述式問題の導入に伴い、試験時間が現行の60分から70分に延長される予定であった。[8]

問題点編集

2019年7月4日時点で本試験での採点者に大学生のアルバイトを導入することが検討されており[10]、これについてインターネット上では批判的な意見もある。また、2019年8月30日、一般競争入札により、ベネッセグループ傘下でテスト採点を手がける学力評価研究機構が採点業務を行う事業者に決定したが、模試や教材を販売している企業が採点を担うことを疑問視する声もある[11]

導入の見送り編集

2019年12月17日、文科省より共通テストでの記述式問題の導入を見送る旨の発表がなされた。実際の採点者が実施数か月前まで確定しないことや採点ミスのリスク、自己採点との不一致率の高さなどが理由として挙げられている。[12]これを受け、大学入試センターでは配点や試験時間などを再検討するとしている。

英語民間試験の活用編集

英語については民間試験の活用が予定されていたが、2019年11月1日に、これを延期し、再検討すると発表された。以下の内容の一部は延期決定前の計画に基づくものである。

概要編集

共通テスト英語では、「話す」「書く」も含めた4技能を評価の対象とするため、民間試験の活用がなされる[13]予定であった。

共通テストでの英語民間試験の活用においては、大学入試センターが運営する大学入試英語成績提供システムを通し、英語民間試験の成績が受験生本人を介さずに大学側に提供される予定であった。利用できるのは受験年度の4月〜12月(但し例外措置あり)に受けた指定の民間試験2回分までであり、成績の紐付けには共通IDというものが使用されることとなっていた。

手続きとしては、民間試験の受験時に受験生が大学入試センターへの結果通知に同意することによって試験結果が受検生と大学入試センターに対して通知され[14]、各大学出願時に「資格・検定試験の成績請求票」を大学に提出し、大学が入試センターに対して共通テストの成績と併せて民間のテストの結果を請求する[14]という仕組みであった。

試験での成績は客観的に決まるものではなく、多くの場合それぞれの試験団体が判断したCEFRとの対応により評価される。[15]

経緯編集

英語については、文部科学省の英語教育の在り方に関する有識者会議で、楽天会長の三木谷浩史が民間試験の利用を強く主張し、当初文部科学省は、本テストの英語の試験はすべて民間の資格・検定試験を利用する方針であったが、大学や高等学校の要望もあり、大学入試センター試験と同様のマーク式の問題を4年間は継続することを決定した。

2017年11月、大学入試センターにおいて、「大学入試英語成績提供システム」運営要項が施行された。2017年(平成29年)11月から12月にかけて行われた「大学入試英語成績提供システム」への参加を申し込んだのは、実用英語技能検定TOEICTOEFLを含む9試験(7団体)であった[注 1][16]。2018年3月に、そのうちリンガスキルを除く8試験がシステム参加要件を満たしていると発表され、CEFRとの対照表も公表された[17]。しかし、このうち2020年度に全都道府県で受検できるのは3試験のみで、検定料にも幅があり、受検機会の公平性など、依然として課題は残されていた[18][19]。大学からも、「4技能を評価する手段としては適切」と評価する声がある一方で「各試験で測る力が異なり公平性担保が困難」と懸念する声も上がっていた[20][21]。大学入学共通テストを含む、大学の入学者選抜における英語4技能の評価などについては、IIBC日本英語検定協会などの民間試験実施団体が構成する英語4技能 資格・検定試験懇談会が「英語4技能試験情報サイト」で情報を発信している[22]

2018年12月、民間試験の受験結果を認めない大学は東北大学・名古屋大学・東京大学の3校であった[23]。2019年5月、全国の国立大学82校のうち、少なくとも13校が「中学卒業程度」(国際指標「CEFR」の6段階で最低レベルのA1)を出願資格とすることが判明し、民間試験の活用方針変更の動きも出ていると報じられた[24]。北海道大、東北大、京都工芸繊維大は、公平性に問題があるなどとして活用しないことを決めている[25]

2019年7月には、TOEICが大学入試英語成績提供システムへの参加を取り下げることを発表した[26]。TOEICはTOEIC Listening & ReadingとSpeaking & Writingでそれぞれ「聴く・読む」と「話す・書く」の2技能ずつを測定しており、二つの試験は別々に実施されるため、システムの要請に合致しないと判断したためである[26]

問題点編集

英語民間試験に関しては、以下のような問題点が指摘されてきた[27]

  • 受験会場が遠い地方の受験生に不利になる
  • 種類が異なる試験の成績を同列に比較できるのか
  • 仕組みが複雑で、大学ごとに試験の成績の利用法が異なる
  • 採点の質や公平性を確保できるのか疑問である
  • 障害のある受験生への対応

また、大学入試において、全受験生に対して4技能の能力を測定する妥当性に関しても疑問視されている[28]

文部科学省では2018年12月から、非公開の有識者会議を開いていた。受験料や地域の格差に関する課題が繰り返し指摘されていたが、文部省はこの議論の詳細を明らかにしていない[29]

延期編集

大学入試英語成績提供システムは、2020年4月に運用開始される予定[30]であったが、2019年11月1日に英語の民間試験を5年後(令和6年度)実施に向けて検討することが発表された。文部科学省と民間試験団体との連携、調整が十分でなかったことから準備が十分に整わず、導入見送りを文部科学大臣が判断したとされている。なお、文科省は2025年度入試での再開を目標に検討を行っているという。[31]

4技能を民間試験によって測るようになったことを理由として、間接的に話す・書く力を測っていたとされる発音・アクセント問題及び語句整序問題は廃止されたが、この方針は民間試験の活用が延期されても見直されていない[32]

試行調査(プレテスト)編集

大学入試センターは、試行調査として、試験の本格的な導入前にプレテストを行っている。

平成29年度編集

2017(平成29)年度のプレテストは11月及び2月に実施された。参加する高等学校等が会場となり、試験監督も教員が行ったほか、日程も定められた期間の中から参加校が設定するよう委ねられた[33]。問題、正解、解答用紙等は大学入試センターのホームページで公開されている[34]

平成29年11月実施
11月13日から11月24日の間に実施され、約1900校の高等学校等が参加した[33]。大学入試センターはこのプレテストの趣旨について「改善されたマークシート式問題及び、記述式問題における条件設定や採点基準、採点体制、採点期間等について検証を行うため」としている[33]。また、このプレテストでの正答率等の分析を行い、その結果を踏まえて問題構成等を再検討するとしている[33]
国語および数学I・数学Aでは記述式の問題も出題され、試験時間は国語が100分、数学が70分に設定された[注 2][33]。リスニングを含めた外国語の試験は実施されなかった[33]
記述式を含む国語および数学I・数学Aは原則として高校2年生を対象に、全問マークシート式の地理歴史・公民、理科、数学II・数学Bは原則として高校3年生を対象に行われた[33]
平成30年2月実施
2月13日から3月3日の間に実施され、約160校の高等学校等が参加した[35]
このプレテストは原則高校2年生を対象に実施され、英語の筆記(リーディング)とリスニングが、マークシート式で出題された[35]。試験時間は筆記が80分、リスニングが30分に設定された[36]
また、2月5日から3月3日には、点字教育を受けた者を対象に、記述式問題の解答方法等に関する配慮のあり方について検証するためのプレテストも実施された[37]。出題科目は国語と数学Iの2科目で、視覚特別支援学校のうち15校から約45人が受検した[37]

平成30年度編集

2018 (平成30)年度のプレテストは11月10日、11日の2日間にかけて実施された[38]。平成29年度実施のプレテストが参加を希望する高等学校等を会場としていたのに対し、平成30年度「A日程」は原則として大学入試センターの会場となっている全大学を会場とした[38]

高校2年生以上を対象に国語と数学の試験の他、自己採点、アンケートを実施する「A日程」(10日午後のみ)と、原則高校3年生を対象に、大学入試センター試験とほぼ同様の時間割で国語、数学、地理歴史・公民、理科、英語、リスニングの試験を実施する「B日程」(10日、11日)を、全国の受検予定者数は約8万4,000人だった。国語、数学Iで記述式問題の出題(それぞれ小問3題。国語は30字以内、40字以内、80字〜120字をそれぞれ1題。数学Iは数式を記述する問題、または問題解決のための方略等を端的な短い文で記述する問題。)[39]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ IELTSは2つの団体が重複して申し込んでいる。
  2. ^ 大学入試センター試験では国語が80分、数学が60分。

出典編集

  1. ^ Company, The Asahi Shimbun. “試行調査から見える、大学入学共通テストの傾向と対策│変わる教育 変わる大学入試 河合塾×朝日新聞デジタル│朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2019年12月19日閲覧。
  2. ^ 高大接続改革の実施方針等の策定について”. 文部科学省 (2017年7月13日). 2018年2月6日閲覧。
  3. ^ PCでテスト! 新大学入試の回答方式はどうなる? 2016年1月Z会・ミライ研究室・新大学入試の基本。2018年2月11日閲覧
  4. ^ 大学入学共通テストで「情報」出題を検討 文科省”. www.asahi.com. 2019年1月19日閲覧。
  5. ^ 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」検討・準備グループ”. www.mext.go.jp. 2019年1月20日閲覧。
  6. ^ 大学入学共通テスト、どう捉える”. www.asahi.com. 2019年1月19日閲覧。
  7. ^ こう変わる!大学入試 ~2020年度からセンター試験に代わる試験を実施~”. Kei-Net(河合塾). 2018年2月6日閲覧。
  8. ^ a b c “国語と数学の試験時間を延長 大学入学共通テスト大綱案”. 毎日新聞. (2019年5月29日). https://mainichi.jp/articles/20190529/k00/00m/040/258000c 2019年5月30日閲覧。 
  9. ^ a b 「大学入学共通テスト」とは?|こう変わる!大学入試|Kei-Net”. www.keinet.ne.jp. 2019年12月8日閲覧。
  10. ^ 「共通テスト」採点にバイト学生 認める方針 疑問視の声も”. www3.nhk.or.jp. 2019年8月3日閲覧。
  11. ^ 「新テスト」記述式問題採点をベネッセグループが落札。1民間企業に頼り切りの大学入試改革でいいのか?”. news.yahoo.co.jp (2019年9月1日). 2019年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月5日閲覧。
  12. ^ 日本放送協会. “記述式問題 導入見送り発表 萩生田文科相”. NHKニュース. 2019年12月19日閲覧。
  13. ^ こう変わる!大学入試 ~2020年度からセンター試験に代わる試験を実施~”. Kei-Net(河合塾). 2018年2月6日閲覧。
  14. ^ a b 「大学入試英語成績提供システム」の活用イメージ(検討中)(参考資料2) (pdf)”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
  15. ^ 「大学入学共通テストの課題」(視点・論点)”. NHK. 2019年9月5日閲覧。
  16. ^ 大学入試英語成績提供システムへの参加の申込のあった資格・検定試験一覧(別紙) (pdf)”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
  17. ^ 「大学入試英語成績提供システム」の参加要件確認結果について”. 大学入試センター (2018年3月26日). 2018年5月8日閲覧。
  18. ^ 「迷走する大学入学共通テスト」(時論公論)”. NHK (2018年5月4日). 2018年5月8日閲覧。
  19. ^ 新共通テスト: 民間英語試験、8種類対象 公平性など課題”. 毎日新聞 (2018年3月26日). 2018年5月8日閲覧。
  20. ^ 13国立大が合否に活用明言 共通テスト英語民間検定”. 佐賀新聞 (2018年4月30日). 2018年5月8日閲覧。
  21. ^ 民間の英語試験、13国立大が「活用」 共通テスト 公平性に懸念の声”. www.tokyo-np.co.jp (2019年3月1日). 2019年10月25日閲覧。
  22. ^ 英語4技能試験情報サイト”. 英語4技能 資格・検定試験懇談会. 2019年7月3日閲覧。
  23. ^ 東北大、英語の民間試験を使わず 「公平公正損ねる」”. www.asahi.com (2018年12月5日). 2018年12月6日閲覧。
  24. ^ 国立大13校、英語「中卒程度」で出願可 民間試験活用に疑問”. 毎日新聞 (2019年5月8日). 2019年5月8日閲覧。
  25. ^ TOEIC 大学入学共通テスト撤退へ 運営複雑理由に 受験生に影響”. 毎日新聞 (2019年7月2日). 2019年7月2日閲覧。
  26. ^ a b 「大学入試英語成績提供システム」へのTOEIC Tests参加申込取り下げのお知らせ”. 国際ビジネスコミュニケーション協会 (2019年7月2日). 2019年7月2日閲覧。
  27. ^ (時時刻刻)見送り、世論おそれ 閣僚辞任続き与党「風圧に耐えられない」 英語民間試験:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2019年11月24日閲覧。
  28. ^ 大学受験に英語の「話す」は本当に必要か?開始前に大混乱の英語教育改革”. WEDGE Infinity(ウェッジ) (2019年6月21日). 2019年12月8日閲覧。
  29. ^ 日本放送協会. “英語民間試験延期 文科省 課題繰り返し指摘も公開せず”. NHKニュース. 2019年11月6日閲覧。
  30. ^ 「大学入試英語成績提供システム」の概要 大学入試センター(2018年12月28日)
  31. ^ 萩生田文科相 英語試験 抜本的に見直し 5年後実施に向け検討NHK NEWS WEB 2019年11月1日
  32. ^ 大学入学共通テストの英語の出題・配点 民間試験利用「延期」の影響は?|高校生新聞オンライン|高校生を応援するニュース・情報サイト”. 高校生新聞オンライン. 2019年12月8日閲覧。
  33. ^ a b c d e f g 「平成29年11月に実施する大学入学共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)の趣旨について」 (pdf)”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
  34. ^ 平成29年度試行調査_問題、正解表、解答用紙等”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
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  36. ^ 外国語科「英語」に関する実施概要 (pdf)”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
  37. ^ a b 受検上の配慮(点字問題)の概要 (pdf)”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
  38. ^ a b 資料1「大学入学共通テストの導入に向けた試行調査(プレテスト)について」 (pdf)”. 大学入試センター. 2018年2月6日閲覧。
  39. ^ 高大接続改革シンポジウム 平成30年度(2018年度)試行調査(プレテスト) 河合塾

関連項目編集

外部リンク編集