鍬潟(くわがた)は、上方落語の演目の一つ。東京にも移植されている。

概略 編集

あらすじ 編集

ある男、背が小さいのを友人から馬鹿にされてコンプレックスを抱いていた。そんな男に、別の友人が「相撲をやれば体が大きくなる」とアドバイスする。「自分が相撲なんて……」という男に、その友人がある逸話を語り始める。


その昔、鍬潟という四股名の相撲取りがいた。この人もそれほど背は高くなかった。ある時、その鍬潟と当時最強と謳われた大関雷電との取組が組まれた。下馬評では雷電が圧倒的有利。だが、鍬潟はある秘策をもって当日の土俵に臨んだ。行司の「ハッケヨイ」の声に立ち上がると、雷電は「こんな小兵は一突きで持ってってやろう」と手を突き出すが、なぜか手がツルリと滑って突きが利かない。実は鍬潟の秘策というのが、前日の夜に体に油を塗っておいて、この油でもって雷電の突きを躱す作戦だった。ならばと腕を掴んで引っ張り込もうとするが、やはりツルリと滑って上手く掴めない。持て余しているうちに、鍬潟に足を取られた雷電、土俵中央でひっくり返されてしまった。

場所が終わって数日後、油のからくりに対して怒りがまだ収まらない雷電は鍬潟に文句を言ってやろうと彼の家を訪ねる。鍬潟はやはりずるい勝ち方だと思ったのだろう、玄関先で平伏して雷電に平謝りに謝った。そんな鍬潟の生活ぶりを見て雷電が驚いた。

鍬潟は妻と3人の子供を抱えていたのであるが、当時は子供を設けると相撲が弱くなるという言われていた。それにもかかわらずあれだけの相撲が取れることに雷電は感心し、これからは自分と兄弟分の付き合い、しかも自分が弟分になろうと言ったという。

この逸話を聞いて男は奮起して、友人の紹介である相撲部屋に通うようになる。

ある日、稽古でくたくたになった男は家に帰ってくるなり、ばったりと倒れて寝てしまう。やがて、目が覚めた男、母親がかけてくれたのか、布団がかかっていることに気が付く。手を伸ばしてみると、不思議なことに昨日までは布団から出なかったはずの手が出る。足を伸ばしてみると、やはり足が出る。

「おっ母、相撲は大したものだ。昨日は布団から出なかった手や足が、出るようになった」

すると母親が、「何言ってんだい、今かかっているのは座布団だよ