零因子

0でない因子同士をかけて0になるような元

抽象代数学において、零因子(れいいんし、: zero divisor)とは、環の乗法において、

以外の元と掛けたのに零となるようなが、少なくとも一つ存在する

ような元のことである。 これは環の乗法における因子の特別な場合である。

定義 編集

  の元   は、  となる   が存在するとき、すなわち

 

を満たすときに左零因子(ひだりれいいんし、ひだりぜろいんし、: left zero divisor)と呼ばれる。この定義では非零元の存在を要求するから、自明な環における0は零因子ではないが、自明な環以外では、0は必ず零因子となる。

また、この定義は、xax に送る R から R への写像が単射でないことと同値である[1]。同様に、環の元 a右零因子とは、ある y ≠ 0 が存在して ya = 0 となることである。

左または右零因子である元は単に零因子と呼ばれる[2]。左かつ右零因子である元 a両側零因子(two-sided zero divisor)と呼ばれる(ax = 0 となる零でない xya = 0 となる零でない y とは異なるかもしれない)。環が可換であれば左零因子と右零因子は同じである。

環の零因子でない元は正則である(regular)または非零因子(non-zero-divisor)と呼ばれる。0でない零因子は0でない零因子(nonzero zero divisor)または非自明な零因子(nontrivial zero divisor)と呼ばれる。

脚注 編集

  1. ^ Bourbaki 1989, p. 98.
  2. ^ Lanski 2005, p. 342.

参考文献 編集

  • Bourbaki, N. (1989), Algebra I, Chapters 1–3, Springer-Verlag .
  • Lanski, C. (2005), Concepts in Abstract Algebra, American Mathematical Soc. 

関連項目 編集