骨造成とは、痩せてしまった既存のに対し、自家骨、人工骨などを用いて骨を増幅させる術式[1]。主に歯科の分野で、抜歯後、幅・高さがなくなってしまった顎骨に対し、骨を回復させインプラント、義歯などを安定させる為に行われる[1]


概要 編集

顎骨に対する、自家骨を用いる方法としては、古くから腰付近の骨である腸骨から自分の骨を移植する方法がとられてきた。しかし、この術式は入院を要し、患者への負担が非常に大きい。そこで近年では人工骨、あるいは顎の骨の一部を用いて骨造成が行われる場合が多い。人工骨としては、ハイドロキシアパタイト、ベータTCP、炭酸カルシウムなどが用いられる。特定の構造からなる多孔質アパタイトはそれ自体に骨誘導能が存在し, その骨誘導能は骨濃度が1/300程度の希薄な懸濁液が含浸されることで強化される。[2]

口腔内の骨造成は薄い歯肉と顎骨との間に人工骨を入れるため、歯肉が裂開し感染を起こすなど非常に難易度が高く、術者の技量に左右される。また使用される人工骨の性状も骨形成に大きく影響するとされている。古くから、顎骨の骨造成としてGBR法が普及されている。このGBR法は骨がある程度残存している条件で良い結果を残している。しかし、垂直的に広範囲に骨造成を行う際は限界がある。近年では、水平的・垂直的両方の骨造成を実現させる方法としては、小木曽誠・峯野誠司らが提唱したケーシング法によりそれが可能となっている。[1]

外傷,腫瘍,外科的侵襲などによる骨欠損部また抜歯,義歯の長期装用などによる顎堤萎縮部の骨の回復治療に際して,これまでは二次的侵襲を伴うものの自家骨移植が最善の方法とされてきた1~3)。骨を用いない方法としては従来,骨親和性が良好で骨伝導能を有するアパタイトやリン酸三カルシウム(TCP)などのセラミックスによる人工骨が用いられてきた4~7)。しかし,これらの人工骨は移植床の骨との接合部で両者が結合するものの,人工骨のスペースが骨組織になるわけではない。骨欠損部への単なる補填材の応用には限界があり,真の骨再生を得るためには骨誘導能を生じさせる因子また素材の開発が必要である。この観点からさまざまな増殖因子の研究が行われ8~10),また骨髄幹細胞を用いた組織工学的手法による再生医療の研究が精力的に進められている11~13)。最近ではこれらの研究とは別に,特殊な構造の多孔質アパタイトには骨誘導能があることが報告されるようになった14~31)。[3]

アパタイトは従来,骨伝導能は有するが骨誘導能はないとされてきた1~3)。しかし現在,連通する数百μmのマクロ気孔およびその気孔壁にも1μm以下~数μmの間隙を有する特殊な構造の多孔質アパタイトは,異所性においても骨組織形成能があると考えられている。この特殊構造多孔質ハイドロキシアパタイトの骨誘導能に関し,Ogisoら4)が行った,6mm立方サイズに生理食塩水のみを含浸した気孔率約85%の多孔質アパタイトを成犬の皮下脂肪組織に埋入した実験においては,ブロック内の一部に骨組織が形成されるものの形成の開始時期は埋入後6週程度と比較的遅く,骨組織形成発現部位が不規則であり,また12週にいたっても骨組織形成領域はブロック内の一部にとどまるとされている4)。この程度の骨組織形成能では臨床応用が難しいと考えられるが,この多孔体にわずかな量の微細骨粉を含浸させることでその骨誘導能が飛躍的に向上することが認められた4,5)。本実験で使用した気孔率約82%,圧縮強度約2.4 MPaの特殊構造多孔質ハイドロキシアパタイトブロックについても,先の報告と同様の方法による成犬背部皮下への埋入実験4,5)を行い,骨粉の有無によって骨様組織形成速度には差を認めるものの,形成量および構造に差は認められないことを確認している。臨床応用を考えた(28)口病誌2008,75/2121場合,骨 様組織がより早く形成されるため骨粉の含浸による骨誘導能の強化の意義は大きいと考えられる。[4]

脚注 編集

  1. ^ a b c 論文掲載:J-GLOBAL提唱者:小木曽誠 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野),山村将夫(東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野),峯野誠司(東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) ,  山下靖雄(東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野)
  2. ^ 論文掲載:J-GLOBAL 多孔質アパタイトおよび超微細骨粉を用いた異所性骨組織形成
    提唱者:小木曽誠 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , ,峯野誠司(東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 服部重孝 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 山村将夫 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 山下靖雄 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 松本智勇 (ペンタックス)
  3. ^ 峯野誠司 (東京医歯大) , 小木曽誠 (東京医歯大) , 服部重孝 (東京医歯大) , 山村将夫 (東京医歯大) , 山下靖雄 (東京医歯大) , 松本智勇 (ペンタックス). “骨粉含浸多孔質アパタイトブロックの異所性骨形成に及ぼす栄養貫通孔の効果”. J-GLOBAL. 2023年3月20日閲覧。
  4. ^ 小木曽誠 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 山村将夫 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 峯野誠司 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野) , 山下靖雄 (東京医歯大 歯 顎顔面解剖学分野). “多孔質アパタイトおよび超微細骨粉を用いた異所性骨組織形成”. 2024年4月23日閲覧。

関連項目 編集

1.ケーシング法