10回クイズ(じっかいクイズ、じゅっかいクイズ)とはクイズ遊びの一つで、解答者にある単語を10回言わせたあと、誤答とその単語が似ているような問題を出し、解答者の誤答を誘うものである。問題自体は落ち着いて考えれば非常に簡単なものであるが、つい間違って答えてしまう。クイズというよりも、言葉遊びに近いものである。10回10回クイズとも呼ばれる。

概要 編集

代表的なクイズとその解答は以下のものである。

質問者「『ピザ』と10回言ってください」
解答者「ピザ、ピザ、ピザ……」
質問者「(腕を折り曲げて指で示しながら、)それではここをなんと言うでしょう?」
解答者「ヒザ?」
質問者「残念、肘(ひじ)です」

このクイズには次の三つの要素が現れている。

  • 繰り返し唱える語(“ピザ”)
  • 想定される誤答(“ひざ”)
  • 正答(“ひじ”)

唱える語と誤答は音が近接していて、誤答と正答は意味が近接している。この例では、“ひざ”と“ひじ”はともに体肢の関節を表すという点で意味が近接している。

解答者は“ピザ”と唱えた後で指し示された肘(ひじ)を見ると、肘に関連のある多くの語の中で“ピザ”と近接する音を持つ“ひざ”をまず連想し(プライミング効果)つつ、“ピザ”と“ひざ”の音の違いを意識する。このとき、誤答しないように警戒している解答者は、“ピザ”と“ひざ”の音の違いに引きずられないことに気を取られて、肘に関連のある多くの語の中に紛れた正答である“ひじ”を想起しづらくなるのである。

歴史 編集

日本では1987年秋に「鴻上尚史のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)で取り上げられ、翌1988年1月には同番組の番組本「10回クイズちがうね」(扶桑社ISBN 4-594-00219-6)が出版されたことで一気に流行に火がつき、その後「笑っていいとも!」(フジテレビ)など多くの番組でこの遊びをベースとしたコーナーが作られた。

事実上の元祖といえる同番組では、最後の落ちのところで「ち~が~う~ね!」と叫んでから正解を言うスタイルが採用され、これが他の多くの番組でも使われた。ただしブーム自体は1年程度で沈静化した。

2004年12月8日放送のフジテレビ「トリビアの泉」のトリビアの種のコーナーで心理学から日本大学名誉教授大村政男筑波大学心理学系教授太田信夫東京国際大学名誉教授志津野知文、言語学から上智大学外国語学部教授菅原勉専修大学文学部日本語日本文学科教授永瀬治郎同志社大学言語文学教育センター教授山内信幸の計6人が「心理学と言語学の学者が考える最も引っかかりやすい10回クイズ」というテーマで議論した結果[1]

質問者「『ニシン』と10回言ってください」
回答者「ニシン、ニシン、ニシン……」
質問者「赤ちゃんが生まれることは?」
回答者「妊娠?」
質問者「出産です」

が考案された[1]

応用 編集

クイズを応用して、卑猥な言葉や解答者にとって失礼な言葉、長い言葉などを言わせるゲームもある。(一般的には最後に「ごくろうさま。」「おつかれさん。」といわれる『ただ言わせたいだけ』の応用編)

脚注 編集

  1. ^ a b フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 11』講談社、2005年。 

参考文献 編集