4000シリーズ 汎用ロジックIC

4000シリーズは、RCAによって1968年に最初に販売されたCMOS汎用ロジックICである[1]。 同時期の他のあらゆるロジックファミリ(7400シリーズなど)よりも広い電源電圧範囲を有していた(Bシリーズの場合、3Vから18Vまでが推奨された)。 4000シリーズの初期の時代に活動していたほぼすべてのICメーカーが、4000シリーズを製造した。 その命名規則は、現在でも使われている。

ソルダーレスブレッドボード上のCD4007A

歴史 編集

 
RCAによって製造された最初期のCD4029AカウンターIC。16ピンのデュアルインラインパッケージ(DIP-16)に収められている。

4000シリーズは、Transistor-transistor logic(TTL)の7400シリーズに対して低消費電力かつより多用途な代替品として、RCAから1968年にCD4000 COS/MOSシリーズとして販売された[1]。 その論理機能は新しく導入されたCMOS(相補型MOS)技術で実装された。 初期段階でRCAは"COS/MOS"と命名して販売していたが、より短いCMOSという用語がその技術を表す業界好みの言葉として登場した[2]。 4000シリーズの最初のチップは、アルバート・メドウィン英語版によって率いられたグループによって設計された[3]

初期の頃、TTLに基づいた設計と比べて4000シリーズは比較的低速度であったため広く普及することはなかった。 初期の4000シリーズは、1 MHzでしか動作しなかったが、同時期のTTLは10 MHzで動作した[2]。 速度の制限は、新しい製造方法によって最終的に克服された(メタルの代わりにポリシリコン(多結晶シリコン)の自己整合ゲートを使用したりした)。 これらのCMOSのICは、同時代のTTLと同等の性能を発揮した。 1970年代後半から1980年代にこのシリーズは、45xxと45xxxと命名された新モデルで拡張された。 しかし、それらは技術者によって今でも当然のように4000シリーズの一部とみなされている。 1990年代にいくつかの製造者(例えば、テキサス・インスツルメンツ)は、より高速な速度を提供するためにより新しいHCMOSに基づいた設計に4000シリーズを移行させた。

設計上で考慮するべき事項 編集

TTLと比較して、4000シリーズはより単純な回路設計を可能とし、全体的に比較的低消費電力であり、電源電圧の範囲が広く、負荷容量は大きく増大した(ファンアウトに影響する)。 このことは、4000シリーズをLSI設計のプロトタイピングで使うための理想的なものとした。 TTLの集積回路(7400シリーズなど)も同様にモジュール化されているが、CMOSの4000シリーズのような対称的なドライブ強度はなかったので、出力に接続される負荷に対してより多くの検討が必要だった。 TTLと同じようにバッファ回路使った設計は、より多くの電流を駆動できる(バッファ回路使った設計は、主にオクタルラッチや3ステートドライバーのような入出力デバイスのために使われる)。 しかし、バッファ回路使った設計は、正しく減衰・収束させない限り、リンギング(過渡振動)を招くリスクが少し高くなる[4][5]。 多くのモデルは、高度に集積された回路を含んでいる。完全に統合された7セグメント表示カウンター、ウォーキング・リングカウンタ(ジョンソンカウンタ)、そして全加算器を含んでいる。

一般的なチップ 編集

 
4001 ブロック図 (4つの2入力NORゲート)
 
4001 ピン配置. 赤は電源、緑は入力、青は出力
 
DIP-14パッケージに入ったCD4001B
(4つの2入力NORゲート)
論理ゲート
フリップフロップ
  • 4013 - 2個のD型フリップフロップ。各フリップフロップは、独立したDATA, Q, /Q, CLOCK, RESET, SET端子を持つ。
  • 40174 - 16個のD型フリップフロップ。各フリップフロップは、独立したdata, Q端子を持つ。CLOCKとRESSET端子は共通。/QとSETはない。
  • 40175 - 4個のD型フリップフロップ。各フリップフロップは、独立したdata, Q, /Qを持つ。CLOCKとRESSET端子は共通。SETはない。
カウンタ
  • 4017 - 10端子出力のデコーダー付きのデコードカウンタジョンソンカウンタ[6]
  • 4026 - 7セグメント数にデコードされた出力付きのデコードカウンタ。
  • 40110 - 7セグメントディスプレイデコーダ付きアップダウンデコードカウンタ。25 mA出力ドライバー付き。
  • 40192 - 4ビットBCDプリセット可能アップダウンデコードカウンタ
  • 40193 - 4ビット2進数プリセット可能アップダウンデコードカウンタ
デコーダー
  • 4028 - 4ビットBDCを10端子出力に変換するデコーダー(3ビット2進数を8端子出力へ変換する2進数デコーダーとしても使える)
  • 4511 - 4ビットBDCを7セグメントへ変換するディスプレイデコーダ。25 mA出力ドライバー付き。
タイマー
  • 4047 - 外部RC発振器付きの単安定/無安定マルチバイブレータ
  • 4060 - 外部RC発振器付きの14ビットリプルカウンタ。シュミットトリガ入力に32.768 kHzの水晶振動子を接続可能。
  • 4541 - 外部RC発振器付きの16ビットリプルカウンタ。
アナログ回路
  • 4051 - 単一の8チャンネルアナログマルチプレクサ
  • 4066 - 4個のSPSTアナログスイッチ

関連項目 編集

出典 編集

  1. ^ a b 1963: Complementary MOS Circuit Configuration is Invented”. Computer History Museum. 2019年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月15日閲覧。
  2. ^ a b Wright, Maury. Milestones That Mattered: CMOS pioneer developed a precursor to the processor EDN, 6/22/2006”. 2007年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年7月1日閲覧。
  3. ^ R. Jacob Baker (2010). CMOS: Circuit Design, Layout, and Simulation (3rd ed.). John Wiley & Sons. p. 7. ISBN 978-1-118-03823-9 
  4. ^ Understanding Buffered and Unbuffered CD4xxxB Series Device Characteristics. Texas Instruments
  5. ^ Lancaster, Don. CMOS Cookbook, ISBN 0-672-21398-2
  6. ^ TEXAS INSTRUMENTS CMOS Counter/Dividers CD4017B, CD4022B Types

参考文献 編集

定期刊行物
書籍
歴史的資料
歴史的データブック

外部リンク 編集