Digital Homicide Studios L.L.C.は、かつてアメリカ合衆国のアリゾナ州ユマを拠点にしていたコンピュータゲーム開発会社であり、2014年6月11日にジェームズとロバートのロマイン兄弟によって設立されたこの企業はImminent UprisingECC Games(のちにポーランドにある同名の企業から抗議を受けた後は "Every Click Counts Games"に改名)といった多数の変名を用いてコンピュータゲームの販売を行っていた。

Digital Homicide Studios L.L.C.
元の種類
有限責任会社
業種 コンピュータゲーム
設立 2014年6月11日
創業者
  • ジェームズ・オリバー・ロマイン・ジュニア(James Oliver Romine Jr.)
  • ロバート・ロマイン(Robert Romine)
解散 2016年12月2日
本社
アリゾナ州ユマ
アメリカ合衆国
事業地域
Worldwide
主要人物
  • James Oliver Romine Jr.
  • Robert Romine
製品 The Slaughtering Grounds

2014年8月14日にはデビュー作であるForsaken Uprisingアーリーアクセスという形で、ダウンロード販売サービスSteamで配信開始され、同年12月3日には製品として配信された。

2016年、Digital Homicideは、同社の第二作The Slaughtering Groundsを酷評したコンピュータゲームの批評家ジム・スターリング英語版から中傷を受けたとして、1500万USドルの損害賠償を求める訴訟を起こした[1]。 また、同社のソフトに対して否定的な評価を下したSteamのユーザー100人から個人攻撃を受けたとして、彼らに対しても1800万USドルの損害賠償を求める訴訟を起こした[1]

これを受け、Steamの運営元であるValve Corporationは、「顧客に対して敵対的な態度をとったDigital Homicideとの取引を停止した」として、SteamからDigital Homicideの製品をすべて削除した。その結果、いずれの訴訟も取り下げとなった。

訴訟 編集

Digital Homicideは、2014年10月31日に初めての製品版となるThe Slaughtering Groundsを発売した。

当初、このゲームはあまり注目されなかったが、元エスケーピスト英語版のライターであるジム・スターリングが貧相なグラフィックと多数のバグ、操作性の悪さ、短いループの繰り返しであるBGM、そして既存のものを使っただけのモデルとテクスチャについて酷評した挙句[2]、「新たなるクソゲー・オブ・ザ・イヤー2014候補( "new 'worst game of 2014' contender")」と名付けたことにより[3]、注目を集めた。さらにスターリングは、Steam上のレビューページから否定的なレビューを消したり、自社作品を批判したユーザーのアクセスを禁じるといったDigital Homicideの姿勢についても批判した。

これを受けたDigital Homicideはスターリングに対して著作権侵害を理由とした権利者削除英語版を申請した[3]

2016年3月4日、ジェームズ・ロマインはスターリングから激しい中傷を受けたとして、1,000万USドル(のちに1,500万USドルに引き上げ[4])の損害賠償を求める訴訟を起こした[3][5]

同年9月12日には、Digital Homicideの作品について否定的な評価を下したSteamユーザー100人から個人攻撃を受けたとして、1,800万USドルの損害賠償を求める訴訟を起こし、 Steamの運営元であるValve Corporation に対しては、これら100人のユーザーの個人情報を確認するための召喚状を要求した[6][7]。これに対し、Valveは「顧客を敵に回すようなDigital Homicideとの取引を停止した」として、Digital Homicideの全製品(ゲーム本体:21本、ダウンロードコンテンツ:15本)をSteam上から削除した[4]。同年10月2日、設立者の一人であるジェームズ・ロマインは「Steamから自社製品がすべて削除された結果、商売が成り立たなくなった」と述べ、Steamユーザーに対する訴訟を取り下げた[8]

訴訟と技術面の双方で行き詰まりをみせてから何か月かした2017年2月、ジェームズ・ロマインはスターリングの弁護士との訴訟を取り下げることに合意した。

ジェームズはこの訴訟を取り下げ、もうスターリングを訴えるつもりはないとし、二度とスターリングがフェアユースかどうか考えることなくデジタル・ミレニアム著作権法違反でほかの動画を訴えることはしないとした[9]

開発作品 編集

発売年 作品名 開発会社として使用された名義 販売会社として使用された名義 発売日
2014 The Slaughtering Grounds Imminent Uprising Digital Homicide Studios 2014年10月31日
Forsaken Uprising 2014年12月3日
2015 Temper Tantrum Digital Homicide Studios 2015年5月22日
Deadly Profits 2015年5月29日
Medieval Mercs 2015年7月1日
Devils Share Every Click Counts Games(ECC Games) Game Portal Publishing 2015年7月31日
Attrition: Nuclear Domination Micro Strategic Game Designs Micro Strategic Game Designs 2015年8月7日
Galactic Hitman Every Click Counts Games(ECC Games)[注釈 1] Game Portal Publishing[注釈 1] 2015年9月17日
2016 Krog Wars Digital Homicide Studios Digital Homicide Studios 2016年4月12日
Starship: Nova Strike 2016年4月12日
Dungeons of Kragmor 2016年4月29日
Mini Attack Submarine 2016年5月27日
Winged Knights: Penetration 2016年5月27日
Withering Kingdom: Arcane War 2016年5月27日
Wyatt Derp 2016年5月27日
Wyatt Derp 2: Peacekeeper 2016年5月27日
The Decimation of Olarath 2016年6月17日
Gnarltoof's Revenge 2016年6月17日
Paranormal Psychosis 2016年6月20日
Withering Kingdom: Flurry of Arrows R. Romine R. Romine 2016年8月26日
Operation: Global Shield J. Romine Digital Homicide Studios 2016年9月2日

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ a b 当初は "Gham"という代理人の名義が使用されていた

出典 編集

  1. ^ a b Matthew Handrahan (2016年9月23日). “ファン訴訟を起こしたDigital HomicideのゲームをSteamが削除”. GameIndustry.biz. 4Gamer.net. 2017年10月19日閲覧。
  2. ^ Sterling, Jim (2014年11月10日). “The Slaughtering Grounds: A Steam Meltdown Story”. The Escapist. Defy Media. 2016年5月1日閲覧。
  3. ^ a b c Klepek, Patrick (2016年3月17日). “Angered Game Developer Sues Critic Jim Sterling For $10 Million”. Kotaku. Gawker Media. 2016年5月1日閲覧。
  4. ^ a b Parsons, Don (2016年9月16日). “[Updated Digital Homicide's Games Removed From Steam]”. TechRaptor. 2016年9月17日閲覧。
  5. ^ Cosimano, Mike (2016年3月17日). “Indie developer Digital Homicide sues Jim Sterling”. Destructoid. ModernMethod. 2016年5月1日閲覧。
  6. ^ Grosso, Robert (2016年9月16日). “Digital Homicide Suing 100 Steam Users for 18 Million”. TechRaptor. 2016年9月17日閲覧。
  7. ^ Good, Owen S. (2016年9月17日). “Steam removes games of developer seeking subpoena for users' information (Correction)”. Polygon. Vox Media. 2016年9月23日閲覧。
  8. ^ Good, Owen S. (2016年10月3日). “Developer seeking Steam users' identities for lawsuit withdraws case, saying his studio 'is destroyed'”. Polygon. Vox Media. 2016年10月3日閲覧。
  9. ^ Yin-Poole, Wesley (2017年2月22日). “Jim Sterling comes out on top as lawsuit with Digital Homicide dismissed”. Eurogamer. Gamer Network. 2017年2月22日閲覧。