Lumarnity®とは日揮グローバル株式会社 が月面開発を推し進めるにあたり設定した、月面社会の将来像、月面スマートコミュニティの名称であり、Lunar Smart Community®から名付けられた。いずれも日揮グローバル株式会社 (日揮グループ) の保有する登録商標である[1]

概要

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月は"極めて孤立した地"であり、地球からの物資は質・量ともに制約がある[2][3]。そのような極地において、人類の安心で快適な長期滞在を実現するためには、月面社会全体におけるエネルギーの自給網と、限られた資源の再生・循環網の構築が重要となる[4][5][6][7]。Lumarnity®はこれらを兼ね備えたスマートコミュニティとして、Lunar Sumart Community®より名づけられた[1]

月面における持続可能な居住基地

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地球から月への物資補給は質・量ともに制約がある。そのような極地で人類が長期滞在するには、食料自給と資源再生による「持続可能な居住基地」が必須となる[4][5][6][7]。この居住基地では、人の排泄物・野菜の根・排水などを再生し、それらを養分として野菜や微細藻類の栽培、魚の養殖などを実施。同時に、野菜や微細藻類によって、人が吐き出した二酸化炭素を酸素に再生する。究極的には、全ての資源を循環させ、永遠に無補給で運用することが理想となる。[8][9][10][11]

なおマクロな視点で考えた場合、地球も宇宙の中で孤立した非常に高度な資源循環型システム(生物地球化学的循環を参照)である。その地球ですら、全ての資源を循環再生することはできず、人類活動によって、温暖化や資源枯渇が進んでいる。完全な資源循環は宇宙と地球の両方で求められている技術である。

月面におけるスマートコミュニティの定義

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地球におけるスマートコミュニティは一般的に「主に再生可能エネルギーを利用して家庭や職場などで必要なエネルギーを自給自足したうえで、余剰エネルギーを地域内で融通し、エネルギーを有効活用する地域共同体」とされている[12]。一方で月面においてはエネルギーに限らず、酸素や食料はもちろんのこと、二酸化炭素や排泄物も貴重な資源となる。この点を踏まえたうえで、同社は、月面スマートコミュニティを「電力・水素・酸素・二酸化炭素・食料・排泄物などの資源を自給自足・再生し、互いに融通し合うことで資源を有効活用する共同体」と定義している[1]

前述の「持続可能な居住基地」は、単独での資源循環が可能であるが、トラブルが発生した際は他の設備に助けて貰う必要がある。また食料や酸素が余った場合は、他の設備に引き取って貰うことで、無駄を削ることもできる。地球からの迅速な物資支援が難しい月面においては、地球以上に資源の循環・共有・最適化が必要になる。これが、同社の考える月面スマートコミュニティであり、サステナブルな月面世界の一例である[1]

脚注

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出典

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  1. ^ a b c d 月に循環型インフラを。「Lumarnity®」(Lunar Smart Community ®)の紹介資料|サステナビリティハブ”. サステナビリティハブ. 2024年3月10日閲覧。
  2. ^ Grace, L. D., Raymond, M. W, and Ralph, F. F (2021). “Sustaining Astronauts: Resource Limitations, Technology Needs, and Parallels between Spaceflight Food Systems and those on Earth”. Sustainability 13 (9424). https://www.mdpi.com/2071-1050/13/16/9424. 
  3. ^ Grace, L. D., Sara, R. Z., and Scott, M. S., (2020). “Space Food for Thought: Challenges and Considerations for Food and Nutrition on Exploration Missions”. The Journal of Nutrition 150 (9): 2242. https://jn.nutrition.org/article/S0022-3166(22)02310-0/fulltext. 
  4. ^ a b Raymond, M. W. (2017). “Agriculture for Space: People and Places Paving the Way”. Open Agriculture 2 (1): 14-32. 
  5. ^ a b 川崎一義, 他, ed (2019). “月面農場ワーキンググループ検討報告書 第1版”. JAXA Repository (宇宙航空研究開発機構(JAXA)). https://jaxa.repo.nii.ac.jp/records/2797. 
  6. ^ a b Irene, L. S., Bernard, F., Olga, B., Frans, B., Alexandre, M., Kent, N., Ayako, O., Daniel, S., and Agata, M. K. (2016). “Space Analog Survey: Review of Existing and New Proposal of Space Habitats with Earth Applications”. 46th International Conference on Environmental Systems. ICES-2016-367. 
  7. ^ a b Frank, V. (2021). “NASA looks for Volunteers to test Survival in a Simulated Manned Mission to Mars”. REDSTAR CV&M– Mission to Mars. https://www.researchgate.net/publication/354031241_REDSTAR_CVM_-_Mission_to_Mars_-_NASA_looks_for_Volunteers_to_test_Survival_in_a_Simulated_Manned_Mission_to_Mars. 
  8. ^ Yasuhiro, T.. 65th Japan Society for Aeronautical and Space Sciences. JSASS-2021-4286. 
  9. ^ Yuming, F., Zhihao, Y., Yao, D., Hui, L., Beizhen, X., and Hong, L (2021). “Establishment of a closed artificial ecosystem to ensure human long-term survival on the moon,”. bioRxiv. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.12.426282v1. 
  10. ^ Silverstone, S. E., and Nelson, M. (1996). “Food production and nutrition in Biosphere 2: Results from the first mission September 1991 to September 1993”. Advances in Space Research 18 (4-5): 49-61. 
  11. ^ Jeremy, W., and Celine, G. (2017). “MELiSSA the minimal biosphere: Human life, waste and refuge in deep space.”. Futures 92 (Sep.): 59. 
  12. ^ 「スマートコミュニティ」へようこそ”. 経済産業省. 2024年4月3日閲覧。

外部リンク

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