オーメン:ザ・ファースト

オーメン:ザ・ファースト』(原題: The First Omen)は、2024年4月公開のアメリカ合衆国ホラー映画

オーメン:ザ・ファースト
The First Omen
監督 アルカシャ・スティーヴンソン
脚本 ティム・スミス
アルカシャ・スティーヴンソン
キース・トーマス英語版
原案 ベン・ジャコビー
原作 デヴィッド・セルツァー
(キャラクター創作)
製作 デヴィッド・S・ゴイヤー
キース・レヴィン
製作総指揮 ティム・スミス
出演者 ネル・タイガー・フリー
ビル・ナイ
ソニア・ブラガ
ラルフ・アイネソン
タウフィーク・バルホーム英語版
音楽 マーク・コーヴェン英語版
撮影 アーロン・モートン
編集 ボブ・ムラウスキー
製作会社 ファントム・フォー・フィルムズ
配給 アメリカ合衆国の旗 20世紀スタジオ
日本の旗 ウォルト・ディズニー・ジャパン
公開 アメリカ合衆国の旗日本の旗 2024年4月5日[1]
上映時間 119分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 アメリカ合衆国の旗 $30,000,000[2]
前作 オーメン (2006年の映画)
次作 オーメン(時系列)
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悪魔の子ダミアンを巡る1976年オカルト・ホラー映画『オーメン』の前日譚にあたる[3]

概要 編集

『オーメン:ザ・ファースト』は、6月6日6時に生まれた悪魔の子ダミアンと、その周囲で起きる怪事件を描いたクラシック・ホラー『オーメン』へと繋がる前日譚で、『オーメン』のフランチャイズ映画としては、2006年公開の第1作のリメイク以来、18年ぶりの新作となる。

全米では公開初日を含む3日間の興行収入が約836万3000ドル、同時公開の日本でも初日3日間で興行収入が6448万円、観客動員数4万6169人を記録している[4]

本国アメリカでは当初、映画配給協会MPAにより、かつての成人指定と同等のNC-17にレーティングされたが、監督とプロデューサーたちの粘り強い交渉と一部の修正を経てR指定になった(詳細は#検閲との戦いを参照)。

日本公開時は映倫の審査により、PG12区分(12歳未満の鑑賞者には保護者の助言や指導が必要)に指定された。

あらすじ 編集

1971年、アメリカ人女性のマーガレット修道女になるべく、ローマの教会内にある孤児院にやってきた。シルヴィア修道院長の歓迎を受け、未婚の母の手助けもしているという施設内を案内されるマーガレットは、“悪い子の部屋”に閉じ込められている年長の少女カルリータを気にかけるようになる。同年代のルームメイト、ルスに誘われて夜のディスコへ繰り出したマーガレットは、酒を飲んでイタリア人男性のパオロと踊っているうちに気が遠くなる。翌朝、全身汗まみれで目覚めるが、前夜のことは全く覚えていなかった。

ある日、街中でブレナン神父と出会ったマーガレットは、カルリータの周辺で危険なことが起きるから注意するよう警告される。その後、孤児院の分娩室で、恐ろしいものが妊婦の股間から出てくる光景を見て気絶し、さらに子供たちと一緒に中庭で遊んでいる最中、修道女アンジェリカが身体に火を点けて首吊り自殺を遂げた。不可解な出来事が続いたマーガレットは、一度は無視したブレナン神父を訪ねることにする。

ブレナン神父は人々の心から信仰心が薄れている今、教会内の急進派たちが反キリストを巻き起こして不安を煽っていると語る。カルリータは反キリスト主義者が求めている悪魔の子であり、教会を破門されて資料を閲覧できない自分の代わりに、彼女の出生記録を調べて欲しいとマーガレットに依頼する。マーガレットはディスコで踊ったパオロを見つけ、声をかけるが、彼は動揺し「知らなかったんだ、すまない」と言いながら異常なまでにマーガレットに怯えている。パオロは「数字を探せ」と話した直後、突進してきた自動車と壁に挟まって死亡する。

ブレナン神父の言葉には半信半疑なマーガレットだったが、修道院長の留守中に部屋に忍びこみ、隠し扉の向こうにある地下室で“スキアーナ”と書かれたファイルを発見。どのファイルにも獣の数字 666が身体についた新生児の写真が貼られており、いずれも死産だった。これまで獣と交わって孕まされた女性たちは、スキアーナという同じ名の女児を出産し、カルリータはその唯一の生き残りであった。マーガレットは捕まり、“悪い子の部屋”に監禁されるが、その時に絶叫するカルリータの口蓋に獣の数字を見た。マーガレットが地下室から持ち出したファイルを読んだガブリエル神父は、閉じ込められている彼女を救出し、ブレナン神父のもとへ向かう。ガブリエルもまた、ブレナンから反キリストの動向を示唆されていたが、証拠がなく相手にしなかったのだ。

マーガレットはブレナン神父が個人的に保管していた、スキアーナと走り書きのある赤子の写真に違和感を抱き、持ち出した資料の中から写真が剥がれ落ちているファイルを見つけ出した。生き延びた新生児はカルリータ以外にもう1人いたことと、それが誰なのかを知り、マーガレットはディスコで失神した日のフラッシュバックを起こす。あの夜、反キリスト派に拉致されたパオロとサタニストたちに囲まれ、かつてカルリータの母たちがそうであったように、悪魔のペニスを挿入されながら受胎のための交尾をしている自分を思い出すのだった。

反キリスト派は悪魔と人間の女性の間に産まれた男児を欲しており、悪魔と獣姦完遂した自分が妊娠していれば、お腹の子は一刻も早く殺さねばならない。マーガレットはブレナン神父やガブリエル神父とともに、中絶手術を受けようと車を走らせるが、本当の恐怖はまだ始まったばかりだった。

キャスト 編集

マーガレット
演 - ネル・タイガー・フリー[5][6][7][8]
ローマの教会に奉仕活動のためにやってきたアメリカ人女性。
ローレンス枢機卿
演 - ビル・ナイ[5]
ローマの司祭。
シルヴィア
演 - ソニア・ブラガ[5]
孤児院の修道院長
ブレナン神父
演 - ラルフ・アイネソン[5]
マーガレットに反キリストの動向を警告する神父。
ガブリエル神父
演 - タウフィーク・バルホーム[1]
孤児院で働く若い男性の神父。
ハリス神父
演 - チャールズ・ダンス
教会の司祭
パオロ
演 - アンドレア・アルカンジェリ
ディスコでマーガレットと踊った男。
ルス
演 - マリア・カバイェロ
マーガレットのルームメイトの女性。
カルリータ・スキアーナ
演 - ニコール・ソラス[9]
孤児院でマーガレットが関りを持つ年長児の少女。その出生には謎が多い。

スタッフ 編集

製作 編集

ハリウッド・リポーターは2016年4月に、ベン・ジャコビーが脚本を書いた『オーメン』前日譚の制作が進んでおり、映画プロデューサーのアントニオ・カンポスが監督の交渉に入ったと報じた[10]。2022年5月には、アルカシャ・スティーヴンソンが監督に就任し、製作総指揮を務めるティム・スミスと共に脚本のリライトも担当することが報じられた[11]

女流監督のアルカシャ・スティーヴンソンは、70年代のホラー映画を観て育ち、特に大好きな作品が『オーメン』であったという。本作の製作総指揮と脚本を兼任しているティム・スミスと強制生殖をテーマにした映画の話をしていたスティーヴンソンは、プロデューサーの1人が友人だったため、脚本を見せてもらい、若い女性の視点から描かれていることに惹き込まれた。「この映画は内容やストーリーの性質上、女性の身体の自立性について語っています。同時にホラー映画たらしめる部分は、これが身体を侵害されるボディ・ホラー英語版という点でしょう。このようなイメージを通して身体を探求することは非常に興味深いことです」と、『オーメン:ザ・ファースト』のテーマ性を語っている[12]

ネル・タイガー・フリーが2022年8月下旬に主役にキャスティングされ、次いでタウフィーク・バルホーム、ソニア・ブラガ、ラルフ・アイネソン、ビル・ナイが出演し、デヴィッド・S・ゴイヤーとキース・レヴィンがプロデューサーを務めることが2024年1月に発表された[13]。 オリジナル版の大ファンだったというフリーは 「自分のキャラクターが『オーメン』の世界のどこに当てはまるのかを考えて、かなり夢中になりました。『オーメン』だけでなく、ニコラス・ローグの『赤い影』や、ダリオ・アルジェントの『サスペリア』など、他の作品とのジャンル的な繋がりにもそそられました。ヨーロッパで悪意の力に遭遇したアメリカ人の戦いの話ですよね」と語った[14]

音楽には『バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』や『ブラック・フォン』などのサウンドトラックを手がけたマーク・コーヴェン英語版が起用された。『オーメン』シリーズに敬意を表すコーヴェンは、ジェリー・ゴールドスミスによるオリジナル・テーマ曲「アヴェ・サタニ」英語版も採り入れながら、本作のために新たなスコアを書き下ろした[15]

検閲との戦い 編集

分娩シーンを理由にアメリカの映画配給協会MPAは、本作のレーティングをNC-17に指定した。監督のスティーヴンソンは「もし私たちが女性の体のホラーについて話すつもりなら、それは強制生殖について語ることになるので、性的ではない形でも女性の体を直接見せなければなりません。このショットは必要であり、とても誇りに思っています」と主張。プロデューサーのデビッド・S・ゴイヤーとキース・レビンはスティーヴンソンの意見を支持し、R指定に変更させるために長い戦いと議論を続けた[16]

スティーヴンソンは当初、MPAが本作をNC-17に指定したと聞いた時「ショックを受けた」という。「を正面から撮ったカットがあり、その膣口から悪魔の手が出てきます。この映画の中には沢山の血と暴力があって、悪魔の陰茎のクローズアップもある。それなのに映画の審査で毎回フラグが立ったのは膣のアップシーンだけ。MPA審査委員会との交渉プロセスには、本当にイライラさせられた」「最終的には、悪魔の手が完全に膣から伸びたショットで、陰唇にピントが合わなければ許容できる、ということが妥協点になった。それで時間調整のために悪魔が膣内から出てくるところを真横から撮ったショットを追加したの。でもこれが却って生々しくなった。審査委員会はこのシーンをむしろ暴力的に変えたように思う」と話した[14]

最終的にスティーヴンソンはR指定にするため、該当シーンを当初の約13秒から現在の上映版まで短縮したが、着地点には非常にこだわった。MPAとの検閲の戦いの一方でスティーヴンソンは、これが観客にどのように受け取られるかについて緊張していた。「その間ずっと、ゴイヤーとキースはとても私に協力的でした。その言葉に怯まない彼らと一緒に仕事をしたいと心から思いました。人々が“膣”という言葉を言えるかどうかは、大きなリトマス試験紙になると思います」と明かしている[16]

評価 編集

レビュー集積サイトのRotten Tomatoesでは、162 件の批評家レビューのうち 81% が肯定的で、平均評価は 6.9/10 となっている。同ウェブサイトの総意は「この前日譚は、50年近い映画シリーズの枠内でありながら、しばしば恐ろしいものを描き出し、フランチャイズにとって明るい未来を予想させる」としている。『シカゴ・サンタイムズ』の映画評論家リチャード・ローパーは「アルカシャ・スティーヴソンの強烈で熱狂的なスタイルで監督され、ネル・タイガー・フリーによる感動的な演技と、ソニア・ブラガ、ビル・ナイを始めとするサポートキャストの素晴らしい演技が特徴」と絶賛した[17]

出典 編集

  1. ^ a b D'Alessandro, Anthony (2023年11月16日). “'The Omen' Prequel 'First Omen' Lands Spring 2024 Release”. Deadline Hollywood. 2023年11月16日閲覧。
  2. ^ Box Office: ‘Godzilla x Kong’ to Tower Over ‘Monkey Man,’ ‘First Omen’”. Variety. 2024年4月18日閲覧。
  3. ^ “オカルト映画「オーメン」の前日譚を描く「The First Omen」予告編が公開”. 映画ナタリー. (2024年1月4日). https://natalie.mu/eiga/news/555790 2024年1月4日閲覧。 
  4. ^ “【閲覧注意…だけど最後まで観たら“ゾクっとする”】「オーメン ザ・ファースト」新生活が突如不穏になる映像”. 映画.com. (2024年4月13日). https://eiga.com/news/20240413/3/ 
  5. ^ a b c d Squires, John (2024年1月3日). “The First Omen – First Trailer for New Prequel Movie Creates Something to Fear”. Bloody Disgusting. 2024年1月3日閲覧。
  6. ^ Kroll, Justin (2022年8月31日). “‘Servant’ Star Nell Tiger Free To Star In ‘Omen’ Prequel ‘First Omen’ For 20th Century” (英語). Deadline. 2024年1月4日閲覧。
  7. ^ Blistein, Jon (2024年1月3日). “The Devil Gets a Due Date in Sinister New Trailer for 'The First Omen'” (英語). Rolling Stone. 2024年1月4日閲覧。
  8. ^ “「オーメン」前日譚、主演はネル・タイガー・フリー”. 映画.com. (2022年9月11日). https://eiga.com/news/20220911/13/ 2024年1月5日閲覧。 
  9. ^ a b c d e f g h i j オーメン:ザ・ファースト”. 映画.com (2024年4月19日). 2024年4月19日閲覧。
  10. ^ ‘The Omen’ Movie Prequel in the Works (Exclusive)”. hollywoodreporter.com. 2024年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月18日閲覧。
  11. ^ ‘The Omen’ Prequel ‘The First Omen’ Sets Arkasha Stevenson As Director For 20th Century Studios Movie”. DEADLINE. 2024年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月18日閲覧。
  12. ^ “『オーメン:ザ・ファースト』監督が語る、ホラー映画の“金字塔”への挑戦”. MOVIE WALKER. (2024年4月12日). https://moviewalker.jp/news/article/1191202/ 2024年1月19日閲覧。 
  13. ^ ‘The First Omen’ Trailer: Nell Tiger Free Encounters Evil In Rome In 20th Century Studios Prequel”. deadline.com. 2024年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月18日閲覧。
  14. ^ a b ‘The First Omen’ Director Arkasha Stevenson and Star Nell Tiger Free Detail the Scene That Nearly Earned Them an NC-17 Rating”. THE WRAP. 2024年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月19日閲覧。
  15. ^ Cool Stuff: Hail Satan With The First Omen Soundtrack On Vinyl From Mutant”. Slashfilm. 2024年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月18日閲覧。
  16. ^ a b THE FIRST OMEN: A Battle With The Devil And An NC-17 Rating”. FANGORIA. 2024年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月18日閲覧。
  17. ^ The First Omen”. Rotten Tomatoes (2024年4月19日). 2024年4月19日閲覧。

外部リンク 編集