コッカリル 90mm低圧砲英語: Cockerill 90 mm low-pressure gun)は、ベルギーのコッカリル(CMI)社によって開発された低圧砲。戦車砲ないし車載歩兵砲として運用される。

コッカリル 90mm低圧砲
Mk.3 90mm砲を装備したCM90砲塔搭載のSIBMAS AFSV-90
マレーシア陸軍所属の車両
種類 戦車砲
原開発国 ベルギーの旗 ベルギー
開発史
製造業者 CMI
諸元
銃身 36-48.5口径長

口径 90mm
初速 700 - 1,345 m/s (2,300 - 4,410 ft/s)
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来歴 編集

1974年CMI社は、装甲戦闘車両向けの90mm砲の開発に着手した。このとき、主力戦車主砲は既にロイヤル・オードナンス L7を代表とする105mm砲にシフトしていたことから、この新しい90mm砲は低反動の低圧砲として、主力戦車よりも小型・軽量の車両での運用に重点をおいて開発された。

高低圧理論を応用した低圧砲であり、使用する砲弾はMECAR、ロイヤル・オードナンスGIAT社などによって供給された。Mk.1に続いて開発されたMk.2では、後座長を300mmから500mmに増加させ、改良型の駐退復座機が採用された。また、Mk.3では、さらに閉鎖機にリコッキング機能が付与されているほか、反動も13,000kgから8,500kgに軽減されている。

Mk.1-3砲の砲身は、いずれも特殊なエレクトロスラグ再溶解法(ESR)によって精錬されている。通常は3段式の砲口制退器が採用されているが、1986年に登場したMk.3 MA1では、APFSDS弾の運用に対応して、単段式とされた。

Mk.3 編集

コッカリル Mk.3 90mm砲は、7トン前後の装甲戦闘車両への搭載を狙って設計されており、当初はCM90砲塔システムに搭載されてのセールスが行われていたが、後にCM90を改良したCSE90に移行した。合計で約2,300門のMk.3 90mm砲が生産されている。

CM90
2名用砲塔。Mk.3 90mm砲と、同軸に配された7.62mm機銃、OIP射撃統制システム、キャデラック・ゲージ・テキストロンの二軸式安定化システムを備えており、防弾能力はSTANAG 4569規格レベル1を基本として、顧客の要求に応じてレベル4まで強化することができる。
CSE90
CM90をベースに、ナイトビジョンの搭載など、ベトロニクスを強化した改良型。

Mk.3 90mm砲は、下記のような車両への適合性が実証されている。

Mk.8 編集

コッカリル Mk.8 90mm砲は、10トンないし20トン級装甲戦闘車両への搭載を狙って設計されており、LCTS90砲塔システムに搭載されてのセールスが行われている。1992年-1993年にかけて最初の試作砲が完成し、1996年クウェート軍が採用したのを皮切りに、現在までに4ヶ国が採用している。

Mk.8 90mm砲は、Mk.3よりも砲腔内圧を高め、砲身長も延長することにより、高初速を確保している。これにより、従来の105mmに匹敵する対戦車能力を獲得した。

LCTS90は、安定化された昼間用/熱線暗視サイトと弾道計算コンピュータを備えている。また、砲手用サイトとは独立して、車長用にも全周捜索可能なサイトが設けられている。砲弾の搭載弾数は37発である。また、自己防護用として、66mm、76mmないし80mmの発煙弾発射機を砲塔側面に搭載しているほか、オプションとして、レーザー光線警戒装置を搭載して発煙弾発射機と連接することで、レーザー照射を受けた場合に、その方向に自動的に煙幕を展開できる。

採用国 編集

  クウェート

  カタール

  サウジアラビア

  • LAV-AG(Light Armoured Vehicle-Assault Guns)

  ベルギー

  • AIV(Armoured Infantry Vehicle: モワク ピラーニャIIIC; 8×8)

諸元表 編集

Mk.3 Mk.8
口径 90mm
砲身長 3,248mm(36口径長) 4,365mm(48.5口径長)
砲重量 456 kg (1,010 lb) 725 kg (1,600 lb) [1]
薬室圧力 210 MPa (30,000 psi) 310 MPa (45,000 psi)
砲口制退器 単段式
初速(APFSDS使用時) 1,200メートル毎秒 1,345メートル毎秒
射程 6,000メートル
仰角30度)
7,800メートル
(仰角20度)
侵徹長(APFSDS使用時) 100mm
(1,000m、60度)
300mm
(2,000m)

脚注 編集

参考文献 編集

関連項目 編集