韓国の時代劇

朝鮮半島の歴史を題材とし、韓国で制作された時代劇、歴史劇の総称

韓国の時代劇朝鮮半島の歴史を題材にした時代劇について記述する。韓国では「史劇(サグク、ハングル:사극)と呼ばれる。

解説 編集

韓国における時代劇の制作、放送は1962年、本格的にテレビ放送開始され、キム・ジェヒョン(金在衡)監督の『国土万里』から始まり、主に朝鮮王朝(李氏朝鮮)時代を舞台にしたのが多かったが、近年は古朝鮮三国時代高句麗百済新羅)、高麗王朝近現代を舞台にした作品も多くなった。日本の時代劇は、狭義では江戸時代以前を舞台とした作品を指し、明治時代以降から近代までを舞台とした作品は歴史劇という現代劇のサブジャンル[1]として区別されているのに対し、韓国の時代劇は概ね歴史劇に該当する作品であっても時代劇として括られている。

  • 古代~李氏朝鮮時代における韓国史を扱った歴史書は『三国史記』『三国遺事』『高麗史』『朝鮮王朝実録』以外ほとんど残っていないこともあり、その時代を舞台にした作品は各種設定や人物等、製作時期が新しくなるに連れて非現実的なものや、史実には存在しない物語美術といった派手できらびやかなものが数多くなっている。このような一部の時代劇は『フュージョン時代劇』と呼ばれている
  • 時代劇専門の放送枠を現代劇とは別に持つ日本と異なり、韓国ではテレビドラマの放送枠に現代劇に混じって編成されるのが一般的である[2]。時代劇専門の放送枠は韓国では例外で、韓国放送公社の「KBS大河ドラマ」のみであり、「NHK大河ドラマ」の韓国版となっていることから、実在の人物を題材としたものが主体である。「CNTV」といった日帝時代以前(大韓民国成立以後は扱っていない)を舞台とした時代劇専門の衛星放送ケーブルテレビチャンネルも存在し、「時代劇専門チャンネル」の韓国版にあたる。

作品一覧 編集

時代劇の各作品を舞台となった時代、放送時期別に一覧する。

先史時代(神話) 編集

古朝鮮 編集

三国時代 編集

統一新羅、渤海 編集

高麗王朝時代 編集

朝鮮王朝(李氏朝鮮)時代(大韓帝国も含む) 編集

初期 編集

前期  編集

中期 編集

後期 編集

末期 編集

日本統治時代 編集

連合軍軍政時代、大韓民国建国以後 編集

時代考証 編集

韓国の経済発展が進むに従って、作中での人々の衣装が史実と関わりなく派手になっていく傾向がある。

  • 考証上、現代の韓国人には解りにくい朝鮮語の単語が出てくるため、多くの作品でそのような言葉が使われる場面に合わせて意味解説テロップが左下に小さく記されている。
  • 例としては同じイ・ビョンフン監督作品で1980年代の『朝鮮王朝500年』(第6部『暴君 光海君』、第7部『傀儡王 仁祖』など)では白衣民族と称されたように平民や下層民は白衣一色であるが、同時代を扱った2010年代の『馬医』では身分を問わず原色の極彩色となっている。
  • 李氏朝鮮兵の定番の装束である帽子(戦笠)と三又槍(鐺鈀)は、14世紀李朝初期の設定作品からよく見られる。ただし、実際の軍装への採用は、戦笠は1619年サルフの戦い前後、鐺鈀は1592年朝鮮出兵以降である。19世紀李朝末期の装束を、そのまま全時代の参考にしたため言われる。
  • 宮脇淳子は、韓国の時代劇について、「韓半島の歴史は日本の世界史教科書ではほとんど取り上げられることはありません。お隣りの国なのに、歴史文化日本人にあまりにも知られていなかったので、少しくらいウソが入っていても普通の日本人の目が向くのは悪くないと思ったのです[3]」「『朱蒙』がつくられるまでは、韓流歴史ドラマにおいてほとんど戦争モノはありませんでした。『朱蒙』をきっかけに『俺たちも強かったんだぞ』と言いたくなったのでしょうが、基本的に朝鮮の軍隊は負けてばかりですから、必然的にウソになっていきます。新羅にしても、史実では高句麗に攻められ、に攻められ、ほとんどそのたびに白旗を上げていますから、ドラマで描かれるほど精強な軍隊ではありません。後に高麗がモンゴルに攻められた時も、王様と軍隊は民を見捨ててスタコラサッサと江華島に逃げ込んだし、豊臣秀吉文禄・慶長の役の時の李氏朝鮮軍にしても、明軍が出てくるまでは連戦連敗でした。明らかになっている史実では、朝鮮半島にあった国はほとんど負け戦だから、せめて誰も証明できない古代で『ホントは昔は強かった』という夢を見たいのでしょう。できればそっとしてあげたいところですが、最近の際限ない妄想を見ると、ひと言、言わずにはいられないわけです[4]」と評している。

脚注 編集

  1. ^ 明治時代を舞台とした歴史劇に該当する作品であっても、江戸時代から始まる作品は時代劇として扱われていることが多い(現代劇が主の連続テレビ小説でも『あさが来た』のみが該当する)。
  2. ^ 日本でも現代劇の放送枠に時代劇が編成されることもあるが、舞台が江戸時代寄りで中高年層向けが主の時代劇であっても現代劇に揃えて戦国時代(特に織田信長物)、大奥タイムトラベル系等の若年層をターゲットとする作品を主とすることから、極稀に挿入されるのが実情となっている。
  3. ^ 宮脇淳子『朝鮮半島をめぐる歴史歪曲の舞台裏 韓流時代劇と朝鮮史の真実』扶桑社扶桑社新書〉、2020年4月30日、4頁。ISBN 978-4594084523 
  4. ^ 宮脇淳子『朝鮮半島をめぐる歴史歪曲の舞台裏 韓流時代劇と朝鮮史の真実』扶桑社扶桑社新書〉、2020年4月30日、42-43頁。ISBN 978-4594084523 

参考文献 編集

  • 『韓国ドラマ 時代劇王』1巻~(刊行中)、TOKIMEKIパブリッシング発行、2008年~。

関連項目 編集