おとまが渕(おとまがふち)は、愛知県春日井市西行堂川を舞台に語り継がれている伝承である。

縁記 編集

昔、牛山村南の細丸川(現在、西行堂川)という流水に、「おとまが渕」と名付けられた渕があった。細丸川と言われていた頃は多くの生き物が生息しており、漁も行われていた。ところが、ある年の6月16日、村の者が、いつものようにこの渕で魚を捕ろうとしたがその日は不思議なことに魚影が一向に見当たらなかった。やっと1匹捕まえることができたので川から上がり一服していると何と渕の底から「おとま、おとま」と、叫ぶ声がするのである。すると、捕らえた魚がその、叫びに呼応し「き。き。」と答え川渕に飛び込んでいった。そんなことがあったので村の者たちは、不気味に思い「おとまが渕」に潜ることはなくなった。不気味なことは魚が叫ぶだけでなく雨天の夜になにかが牛馬などをこの渕に引きずり込んだと言われている。 — 「おとまが渕」[1]

類似伝承 編集

  • 「おこまが渕」
  • 「牛巻の渕」[2]
  • 「たたらが渕」[3]

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明暦2年(1658年)6月1日「おとまが渕」の底から、竜が昇天し、黒雲が立ちこめ一帯の村に豪雨や氷が降り注いだ。竜が昇天してから1、2年の内に「おとまが渕」は浅くなってしまったという[1]

脚注 編集

参考文献 編集

  • 春日井郷土史研究会『春日井のむかし話』 下、春日井市、2014年。 
  • 福田祥男『愛知県伝説集』(増補)名古屋泰文堂、1974年。全国書誌番号:75018806 
  • 春日井市教育委員会『郷土誌かすがい』第32号、春日井市教育委員会、1988年、全国書誌番号:00035867