アジピン酸(アジピンさん、adipic acid)は、ジカルボン酸の一種。IUPAC命名法ではヘキサン二酸 (hexanedioic acid) と表される無臭の無色結晶性粉末である。

アジピン酸
アジピン酸の構造
識別情報
CAS登録番号 124-04-9
E番号 E355 (酸化防止剤およびpH調整剤)
KEGG D08839
特性
化学式 C6H10O4
モル質量 146.14
示性式 HOOC–(CH2)4–COOH
外観 無色粉末
密度 1.36, 固体
融点

152

沸点

338

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

性質

編集

水への溶解度は、15 ℃において 1.4 g/100 mL と小さく、エーテルにも難溶。アセトンには可溶であり、エタノールには易溶。加熱により分解して吉草酸などを生じる。酸解離定数は、pKa1 = 4.42, pKa2 = 5.42 である。

製法

編集

シクロヘキサンを酸化することによって得ることができる。古くより、シクロヘキサンをまずシクロヘキサノールシクロヘキサノンとしてから、硝酸酸化でアジピン酸とする方法がとられてきた。アジポニトリル加水分解でも得られる。

用途

編集

ヘキサメチレンジアミンと共に6,6-ナイロンの原料として工業的に重要とされる。 共に6,6-ナイロンの原料となるヘキサメチレンジアミンは、アジピン酸からアジポアミドアジポニトリルを経由して得られる。また、オキソアルコールとのエステル化で得られるアジピン酸エステルは、可塑剤として用いられる。

アジピン酸あるいはそのエステルは,水素化して 1,6-ヘキサンジオールとなり,これは主としてポリエステルポリウレタンに用いられる。

参考文献

編集
  • 熊本卓哉「アジピン酸の工業的合成とその利用(基礎化学品製造の実際と高校での教育実践)」『化学と教育』第60巻第6号、日本化学会、2012年、266-269頁、doi:10.20665/kakyoshi.60.6_266ISSN 0386-2151