アリラン』は、趙廷来長編歴史小説。著者の代表作の一つとされる。

1994年から刊行されたはじめ、全9巻で300万部が売れた[1]

内容編集

李榮薫による批判編集

李榮薫は、「商品化された民族主義[2]」の事例として『アリラン』を分析して、歴史小説としての資格と内容のどちらも未達と批判している[3]

歴史小説一つを完成するためにトラック一台分量の資料を渉猟した司馬遼太郎を想起しながら、趙廷来はどの位の資料を渉猟したのかと問うて、「一種の狂気虐殺の狂気と逆の意味の狂気」「私はいち小説家がこのようなおびただしい虚構の史実を、さも堂々と歴史的史実として叫ぶことができるという事実が、不思議でしょうがない」「日帝下植民時期は収奪と虐殺でいっぱいになり、怒りと憎悪だけで説明できるような時代ではなかった。受難と侮蔑の時代だったが、新しい学習と成就の時代でもあった。植民地期の民族史的ないし世界史的意義を全体的に理解するためには、このような均衡の取れた視点が必要だ。私はこれから、誰か新しい歴史小説家が出て植民地期の収奪と開発を象徴する金堤と群山の歴史を省察した歴史小説をまた書いてくれることを待ちこがれてやまない。」と評して[4]、趙廷来の「植民地時代の歴史を具体的で総体的に知らせるために小説を書いた」という言葉は空虚でしかないと批判している[5]

また、史実さえ覆い隠した事例が枚挙に暇がないほど多いとして、具体的には、平和だった金堤日露戦争後、日本人地主に奪われたという描写は、金堤は19世紀まではが生えた荒れ地だったが、ここが穀倉地帯として開発され始めたのは1910年以後になる。この金堤を日本人に奪われたのではなく、ここを穀倉地帯に開発したのは日本人であり、農地を奪われた朝鮮人が故郷を捨て満州に移住したという描写とは違い、水利組合を通じて金堤が開発されることによって朝鮮人が集まり始めたこと[6]、日本の千島列島で朝鮮人4千人が虐殺されたとする小説の事件は事実ではないこと[7]土地調査事業を舞台に、事業の実務を担った朝鮮人買弁が日本人の巡査と結託して、土地の申告書を知らない愚かな農民から土地を奪い[8]、土地を奪われた農民が買弁たちに抗議し、体当たりして傷を負わせ、日本人巡査がその農民を木にくくりつけ、即決処刑で銃殺するシーンを描いて、即決処刑が4千件以上に上ると主張していることを、「小説家の想像力というものはあまりにも逞しく、鳥肌が立ってしまいそうです。くだんの作者は、たとえ当時が植民地時代であっても、法が存在していたという事実を完全に無視しています。一介の巡査が人を即決で処刑するなんて。日本が1911年に公布した『朝鮮刑事令』という法に、はたしてそのような条項があるのか聞いてみたいものです。」と批判している[9]

あたかもポルトガルの貿易商人がアフリカ南米の未開地域に入り込み、放蕩の限りを尽くしたように、植民地時代の農村を描いて[10]、朝鮮人は、村人が罪もなく銃殺されても、指をくわえて見ている惰弱で卑怯な野蛮人として、一人の小説家により空前絶後の野蛮時代として描かれる[11]。そのことを「はたして本当にそうだったのでしょうか。ともあれ、小説を読んだ数多くの若者は、その時代を野蛮な時代だと考えることでしょう。そうすると、ひいては彼らこそ野蛮人のように乱暴に二十世紀の歴史というものを考えることでしょう。なんとも恐ろしいことです。」と批判する[12]

脚注編集

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参考編集

  • 李榮薫『大韓民国の物語』文藝春秋、2009年2月。ISBN 4163703101
  • 이영훈 교수, 이번엔 <아리랑> 비난 파문. viewsnews. (2007-05-28). https://www.viewsnnews.com/article?q=16449 2016年9月10日閲覧。.