アルハムドゥリッラー

「アッラーに栄光あれ」、もしくは「アッラーに感謝を」の意で、アラビア語圏(イスラム教圏)でよく用いられる慣用表現

アルハムドゥリッラー(アル=ハムドゥ・リ・ッラーヒ、al-ḥamdu li-llāh, : ٱلْحَمْدُ لِلَّٰهِ‎)とは、「アッラーに称賛あれ(神に称賛あれ)」「アッラーに賛美あれ(神に賛美あれ)」の意で、タフミード(アラビア語: تَحْمِيد‎, taḥmid)と呼ばれる[1]文言。イスラム教徒が多用する慣用表現で、英語では「Praise be to Allah」や「Praise to Allah」などと訳されている。

コーランに記載されており、イスラム教のズィクル(唱念)、日常会話ほか頻繁に使用される。ムハンマドによると、この語を唱えれば70の疾病を免れるとしており、信者は魔除けとしても唱えている[2]

日本語のカタカナ表記ではアルハムドゥリッラー以外にも多くの表記揺れがあり、アルハムドリッラー、アルハムドリラー、アルハムドリッラ、アルハムドリラなど多岐にわたる。口語アラビア語等では定冠詞のアルを含まないハムドゥリッラー、ハムドゥリッラ、ハムドリッラー、ハムドリッラ、ハムディッラ、ハムデッラなども用いられている。

クルアーンの記述 編集

直訳すると「(すべての)賞賛は(アッラー(アッラーフ))にあり(/あれ)」という意味で、クルアーンの冒頭にもこの言葉が出てくる[3]

الْحَمْدُ لِلَّٰهِ رَبِّ ٱلْعَالَمِينَ

al-ḥamdu li-llāhi rabbi-l-ʿālamīn
万有の主、アッラーにこそ凡ての称讃あれ

— 『クルアーン』 第1章開端第2節

*第1章は直前の第1節(バスマラ)に続くためウスマーン版における発音記号上は「ٱلْحَمْدُ لِلَّهِ رَبِّ ٱلْعَـٰلَمِينَ」となり「アル=ハムドゥ」の「ア」を読み飛ばすためのワスラ記号がついているが、実際のクルアーン朗誦では第1節と第2節の間に息継ぎを入れるため「اَلْحَمْدُ لِلَّهِ رَبِّ ٱلْعَـٰلَمِينَ」となり「ル=ハムドゥ・リッラーヒ・ラッビ・ル=アーラミーン」ではなく「アル=ハムドゥ・リッラーヒ・ラッビ・ル=アーラミーン」と聞こえる[4]

用法 編集

 
「アルハムドゥリッラー」と書かれたアラビア書道の作品。

アラビア語圏やイスラーム諸国では「おかげ様で」の意味で会話に頻繁に用いられ、良いことがあった時だけでなく、苦難・災害に遭遇した時の両方で口にされる。

アラビア書道作品の題材としても多用されている。

脚注・出典 編集

  1. ^ P. Bearman,; Th. Bianquis; C.E. Bosworth; E. van Donzel; W.P. Heinrichs, eds. (2012). "taḥmīd". Encyclopaedia of Islam, Glossary and Index of Terms (2nd ed.). Brill. 2024年1月30日閲覧
  2. ^ アラビアンナイト バートン版 千夜一夜物語拾遺 訳者:大場正史 p.249
  3. ^ クルアーン』1:2 (第1章開端第2節)
  4. ^ Surah Al-Fatihah - 1-7” (英語). Quran.com. 2024年2月7日閲覧。

関連項目 編集