キリスト人間説は、3世紀に現れたキリスト教の一思想で、イエス・キリストの神性を否定、又は軽視する論。キリスト常人論ともいう。

正統派から異端とされた。

概説編集

2世紀以降、神の唯一性と三位一体思想をどう調和させるかということがキリスト教内で最も熱い議論を呼んでいた。その中で神の唯一性、唯一神観を強調したものがモナルキア主義であった。

キリスト常人説は、養子的キリスト論のひとつであり、モナルキア主義の中でも勢力論(デュナミス)的モナルキア主義といわれるもので、イエスがマリアから生まれた単なる人間であり、マリアに受胎した時もしくは洗礼者ヨハネから洗礼を受けた時、イエスの内部に神的力(デュナミス)が宿ったというものであった[1]。キリストの神性を低く見ることによって神の唯一性を保とうとしたのであるが、イエスの神性を父なる神と同等であると考えた正統派によって異端とされた。

3世紀アンティオキア司教であったサモサタのパウロスはこの思想の代表者であった。彼は神の唯一神観を強調してイエスの神性を否定し、常人性を強調したため、様態論(モドゥス)的モナルキア主義者からも攻撃されることになった。サモサタのパウロスの思想は268年アンティオキア教会会議において異端とみなされた。パウロスはローマ帝国の東方パルミラに逃れ、歴史から姿を消した。

ただ、この教会会議においてイエスの中では人間の霊魂の位置に神の言葉(ロゴス)があったということが強調されたが、この考え方は後に正統派によって否定されることになった。

脚注編集

  1. ^ 『初代教会史論考』pp.174-177。

参考文献編集

  • 『初代教会史論考』 園部不二夫著作集<3>、キリスト新聞社、1980年12月。

関連項目編集