o-クレゾールフタレイン英語: o-Cresolphthalein) は中和滴定に用いられる酸塩基指示薬である。水に不溶だが、エタノールには溶ける。pH8.2までは無色だが、9.8より大きい範囲では紫色になる。定量分析にも利用され、o-クレゾールフタレイン存在下での吸着ストリッピングボルタンメトリーによって痕跡量のタリウム定量分析することがでる。その検出限界は60 ng[1]

o-クレゾールフタレイン
識別情報
CAS登録番号 596-27-0
ChemSpider 62217
バイルシュタイン 5-18-04-00193
特性
化学式 C22H18O4
モル質量 346.38 g mol−1
外観 白い粉末
融点

223 °C, 496 K, 433 °F

への溶解度 不溶
溶解度 エタノールに可溶
酸解離定数 pKa 9.61
危険性
Sフレーズ S22-S24/25
関連する物質
関連物質 フェノールフタレイン
チモールフタレイン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
クレゾールフタレイン (pH指示薬)
pH 8.2以下 pH 9.8以上
8.2 9.8

誘導体 編集

カルシウムの定量分析における代表的な発色試薬であるo-クレゾールフタレインコンプレクソンは、o-クレゾールフタレインとイミノ二酢酸から合成される[2][3]

o-クレゾールフタレインを亜鉛で還元することで得られるo-クレゾールフタリンは、吸光光度法によるシアンの定量分析に利用される。o-クレゾールフタリンはシアンの存在下で(II)イオンを還元して銅(I)イオンにすると共に自身は酸化されてo-クレゾールフタレインに戻るという反応を起こす。このようにしてシアンの含有量に対応して生成したo-クレゾールフタレインはpH9.8以上のアルカリ条件下で発色するので、その発色度合いを吸光光度計で測定することで定量される。最大吸収波長は568 nm、モル吸光係数6.5×104変動係数5.5 %の際の定量限界はシアンイオンとして0.5 μg[4]

出典 編集

  1. ^ J. Wang and J.M. Lu, "ADSORPTIVE STRIPPING VOLTAMMETRY OF TRACE THALLIUM", Analytica chimica acta, 282(2), 1993, pp. 329-333
  2. ^ “試薬の基礎知識 カルシウムの測定試薬”. 東洋紡ニュースレター (東洋紡) 10. (2007). http://www.toyobo.co.jp/seihin/dsg/technical/newsletter/img/010.pdf. 
  3. ^ 原田哲彌、木村和三郎 (1958). “界面活性剤分析法の研究 (第2報) キレート滴定による界面活性剤の新半微量容量分析法 “キレート滴定・カチオン交換” 法 (“メタルフタレイン-EDTA” 法)”. 油化学 7 (No. 3): p. 144. doi:10.5650/jos1956.7.142. 
  4. ^ 藤沼弘、斉加実彦 (1976). “ο-クレゾールフタリンによるシアンイオンの吸光光度定量”. 分析化学 25 (No. 1): pp. 21-24. 

参考文献 編集