ク10は、大日本帝国陸軍が試作した滑空機軍用グライダー)。開発・製造は前田航研工業によって行われた。制式化はなされていない。

概要 編集

特殊飛行訓練用として[1][2]陸軍航空技術研究所から無制限曲技用グライダーの発注を受けた前田航研は[1]前田健一所長を設計主務者として[3]1942年昭和17年)初頭にク10の設計を開始した[1][2]。試作1号機は前田航研の糸島工場で[4]1943年(昭和18年)12月末に完成し[2][4]元岡飛行場[5]同年12月25日に初飛行した[2][4]1945年(昭和20年)の終戦までに10数機[2][6](または35機[5])が製造され、陸軍に納入されている[2][6]

ク10は、航空機強度規定の第5種機に相当する[6]中翼のソアラーで、機体は全木製[2]。あらゆる曲技飛行を行える[2]、単座の無制限曲技グライダーとしては日本初の機体だった[2][6]。また、初期型と後期型の2タイプが存在し、後期型では翼幅の短縮などがなされている[2]

諸元(後期型) 編集

出典:『日本グライダー史』 228頁、『日本陸軍試作機大鑑』 121頁。

  • 全長:6.94 m
  • 全幅:13.00 m(初期型:13.60 m)
  • 主翼面積:16.0 m2
  • 自重:270 kg(初期型:220 kg)
  • 全備重量:350 kg(初期型:300 kg)
  • 急降下制限速度:350 km/h(初期型)
  • 滑空速度:80 - 100 km/h[2]
  • 最良滑空速度:76 km/h[3]
  • 乗員:1名

脚注 編集

  1. ^ a b c 『日本グライダー史』 131頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 『日本陸軍試作機大鑑』 121頁。
  3. ^ a b 『日本グライダー史』 228頁。
  4. ^ a b c 『日本グライダー史』 131・132頁。
  5. ^ a b 『日本航空史 昭和前期編』 838頁。
  6. ^ a b c d 『日本グライダー史』 132頁。

参考文献 編集

  • 佐藤博『日本グライダー史』海鳥社、1999年、131,132,228頁。ISBN 978-4-87415-272-0 
  • 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年、121頁。ISBN 978-4-87357-233-8 
  • 『日本航空史 昭和前期編』日本航空協会、1975年、838頁。全国書誌番号:70021375