圏論においてコンマ圏(こんまけん、: comma category)とは、圏の構成法の一つを言う。特定の構成はスライス圏(slice category)とも呼ばれる。コンマ圏という名称は1963年にウィリアム・ローヴェアが句読点コンマにちなんで使用した表記に由来する[1]

普遍性極限、余極限を含む幾つかの概念は、コンマ圏として扱うことができる。

定義編集

圏を C, D, E、関手を S : DC, T : EC とする。

下方の対象からなる圏編集

C の対象を b とする。b の下方の対象からなる圏(the category of objects under b)とは、b をドメインとする射 f : b → c を対象、コドメイン間の射 h : c → c' を射とする圏である。

形式的には、b の下方対象からなる圏 (b↓C) とは、b をドメインとする射 f : b → c とそのコドメイン c との組 <f,c> を対象、射 h : <f,c> → <f',c'> は C の射 h : c → c' で h・f = f' を満たすものからなる圏である[2]

上方の対象からなる圏編集

C の対象を a とする。a の上方の対象からなる圏(the category of objects over a)とは、a をコドメインとする射 g : d → a を対象、ドメイン間の射 k : d' → d を射とする圏である。

同じく形式的には、a の上方対象からなる圏 (C↓a) とは、a をコドメインとする射 g : d → a とそのドメイン d との組 <d,g> を対象、射 k : <d,g> → <d',g'> は C の射 k : d' → d で g・k = g' を満たすものからなる圏である[3]スライス圏(slice category)とも呼ばれ、(C↓a) の代わりに C/a と表記される[4]

関手の下方の対象からなる圏編集

C の対象を b とする。b の S-下方の対象からなる圏(the category of objects S-under b;(b↓S) )とは、b をドメインとする射 f : b → S d とそのコドメインの元となる対象 d との組 <f,d> を対象、コドメインの元となる対象間の射 h : d → d' で f' = S h・f を満たすものを射 h : <f,d> → <f',d'> とする圏である。

関手の上方の対象からなる圏編集

C の対象を a とする。a の T-上方の対象からなる圏(the category of objects T-over a;(T↓a) )とは、a をコドメインとする射 g : T e → a とそのドメインの元となる対象 e との組 <e,g> を対象、ドメインの元となる対象間の射 k : e → e' で g = g'・T k を満たすものを射 k : <e,g> → <e',g'> とする圏である。

一般形:コンマ圏編集

コンマ圏(the comma category;(T↓S) )とは、圏 C の射 f : T e → S d とドメイン・コドメインの元の圏の対象 e ∈ ObjE, d ∈ ObjD との三組 <e,d,f> を対象、圏 E の射 k : e → e' と圏 D の射 h : d → d' で f'・T k = S h・f を満たすものの組 <k,h> : <e,d,f> → <e',d',f'> を射とする圏である。なお、射の合成 <k',h'>・<k,h> は <k'・k,h'・h> で定義される。

脚注編集

  1. ^ 演算子としての「コンマ」の使用は混乱を招く可能性があるため、標準表記が変更されても名称はそのままとなっている。ローヴェア自身も「コンマ圏」という用語を適切だとは考えていないという。Lawvere(1963) p.13
  2. ^ CWM(1997) pp.45-46
  3. ^ CWM(1997) pp.45-46
  4. ^ Sheaves(1992) p.12

関連項目編集

参考文献編集