サイレージ
サイレージ (silage) とは家畜用飼料の一種で、飼料作物をサイロ(silo)などで発酵させたもの。一般には、青刈りした牧草を発酵させたもの(牧草サイレージ)を指す。それ以外にも穀物を用いたサイレージ(コーンサイレージ)や、藁を用いた藁サイレージ(straw silage)などのバリエーションがある。
概要編集
収穫した牧草や飼料作物を、地面に建設されたサイロに詰めたり、ベーラーという農業機械を使ってロールベールラップサイロを作る。その中で牧草は嫌気性菌による発酵により乳酸や酢酸などの有機酸の成分比率を増やし、pHが低くなることにより、牧草の腐敗の原因となるカビや好気性菌類の活動を抑え長期保存が可能になる。こうした発酵過程を成功させるために、水分量の調整や乳酸菌などの添加物を投入するなど、農家毎にさまざまなノウハウが培われている。
手際よく発酵したサイレージは豊富なカルボン酸などの有機酸が含まれることとなり、ウシなどの家畜の良好な肥育に大きく貢献する。発酵により発生した有機酸において乳酸の占める割合が高いものが良質なサイレージとされる。また、pH4.5以下が望ましいとされる。一般に水分含量は75%前後に調整されるが、40%程度に調整したものを特にヘイレージ(haylage、低水分サイレージ)と呼ぶ。ヘイレージは気密性が悪いと好気的発酵が行われ、品質の低下を招くので注意が必要である。
各種サイレージ編集
牧草サイレージ編集
青刈りした牧草をバンカーサイロなどに移すか、以下のようにラップサイレージを作る[1]
- ロールベーラーで畑の牧草を集め、円筒状に固める
- ラップマシーンを用い牧草の周りをラッピングし、ロールベールをつくる
- 約1ヶ月乳酸発酵させたものをウシに供する
コーンサイレージ編集
トウモロコシは牧草の中では栄養価が高く、収穫量が多い[1]。
- ハーベスターで、トウモロコシの実と茎葉の全てを細かく刻みながら刈り取る
- バンカーサイロへ運び入れる
- フロントローダーで踏み込んで空気を抜きビニールで密封する
- 約1ヶ月乳酸発酵させたものをウシに供する
イアコーンサイレージ編集
雌穂(しずい)の一部あるいは全体を収穫し、サイレージとして密封貯蔵したものを広くイアコーンサイレージと呼ぶ。輸入穀物を主原料とした配合飼料や、圧片トウモロコシの代替となる新しい国産濃厚飼料として期待されている[2][3]。
雌穂は、子実(grain:グレイン)が約 8 割で、残り 2 割は繊維含量の高い芯(cob:コブ)や穂皮(husk:ハスク)で構成されている[4]。食用トウモロコシの場合、子実が可食部。
藁サイレージ編集
稲わら、麦わらを使ったサイレージ。主に牛用に製造される。基本的な作り方は牧草サイレージと同一である。ベーラーという農業機械を使ってロールベールラップサイロに仕上げる。藁は稲作においては廃棄物扱いであるため、有効活用法として農林水産省が支援している。[5][6]
ギャラリー編集
- サイレージを作るサイロの種類
脚注編集
出典編集
- ^ a b らくのう家の一年 らくのうマザーズ
- ^ サイレージの種類 雪印種苗株式会社
- ^ 新しい国産濃厚飼料"イアコーンサイレージ" 農研機構
- ^ イアコーンサイレージの調製・利用技術~トウモロコシの新たな利用方法を考える~ 牧草と園芸 第63巻第1号(2015年) (PDF)
- ^ 田んぼで生まれるロールベールラップサイロ - 埼玉県 — Mozilla Firefox
- ^ 稲わらについて:農林水産省 — Mozilla Firefox
関連項目編集
- 酪農
- 乳酸発酵
- ロールベールラップサイロ
- ベーラー
- 動物のお医者さん - エピソードのひとつに、酪農農家のサイレージの作り方について描かれている。
外部リンク編集
- サイレージ調製 釧路農業改良普及センター発行資料
- ホールクロップサイレージ 社団法人宮城県農業公社