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スズムシソウ(鈴虫草、学名:Liparis makinoana)はラン科の植物。和名は花の唇弁スズムシの雄の羽に似ていることから。

スズムシソウ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: ラン目 Orchidales
: ラン科 Orchidaceae
: クモキリソウ属 Liparis
: スズムシソウ L. makinoana
学名
Liparis makinoana
和名
スズムシソウ(鈴虫草)

山野草として人気が高いため盗掘が激しく、野生個体は著しく減少している。環境省レッドデータの記載は無いが、地域版レッドデータでは多くの県で絶滅危惧I類になっている。自然公園条例などで採集禁止植物に指定されている地区もあるが、実効性のある盗掘防止策がとられている例はないようである。

なお、キツネノマゴ科イセハナビ属スズムシバナが有り、これがかつてスズムシソウと呼ばれたことがあるので、注意を要する。イセハナビ属自体もスズムシソウ属と呼ばれたことがあり、現在でもオキナワスズムシソウやセイタカスズムシソウなど、この属にはその名を持つものが実在する。

特徴編集

北海道から九州朝鮮半島および沿海州の疎林内の林床に分布する。

地上に前年の枯れた葉柄に包まれた偽球茎があり、横から新芽を出して新しい偽球茎を形成する。古い偽球茎は一年で腐ってなくなる。葉は通常二枚、長さ5~10cm、幅3~5cm前後で縁はややちぢれることが多く、黄緑色で弱い光沢がある。花茎は二枚の葉の間から上に伸びあがり、高さ10~15cm前後、系統によっては30cmにも達することもある。は5~6月に咲き、幅10mm前後。側萼片は淡緑色で細く、外側に巻いて糸状になる。側花弁は淡紅紫色でやはり細いが唇弁は幅広く、淡紅紫色で半透明。数花から数十花が花茎先端につく。秋には根も葉も枯れ、枯れた根にささえられた偽球茎だけが地上に残って越冬する。

栽培編集

冷涼な気候、十分な空中湿度を好み、暖地での栽培には適さない。新しい偽球茎(園芸的にはバルブと呼ぶ)は通常1個しかできないため栄養繁殖が難しい。稀に2個目の小さい偽球茎が形成されて増殖することもあるが、10年以上栽培していてようやく3株になる、という程度で繁殖はしないに等しい。

また病虫害に非常に弱い。潅水過多になると地面に接する部分に雑菌が繁殖し、腐って倒れる。一方、空中湿度が低いと葉枯れを生じて衰弱死する。またナメクジやゴキブリが偽球茎を好んで食害し、食害をうけた個体は回復せずに枯れてしまうことが多いので、何らかの形で隔離栽培しなければ維持は困難である。

東北以北の栽培適地では長期維持できている例も無いではないが、「一輪車で塀の上を進む最長不倒記録」と比喩されるほどで、一般論で言えば繁殖どころか親株の維持すら難しい。

なお、暖地では人工交配してもほとんど結実しない。特に自家受粉では結実しても有胚率がきわめて低く、種子を得ること自体が難しい。種子が得られれば無菌播種は比較的容易だが、共生菌を使用していない場合、生長は非常に遅い。また、無菌容器内での育成はそれほど問題ないが、外部に出してからの育成が難しい。 (開花株になるまで無菌容器内で育成し、花芽のついた偽球茎を出荷することが技術的には可能だが、育成容器が非常識なサイズになり、育成期間も長くなるため営利的・実用的な面で実現はしにくいと思われる。)

保護編集

園芸用として商業的に大量採集される例が多いが、自生地は分散しており効果的な盗掘監視は難しい。一般園芸店で普通に販売されていることがあるが、流通価格は人工増殖して採算が取れる価格ではなく、おそらくほとんどすべてが野生採集由来と推測される。一般趣味家は盗掘品と知らずに購入してしまう場合が多く、しかも前述のように長期維持は難しく、栽培イコール消費となることを考えればきわめて問題が大きい。地域変種と思われる未記載系統が販売されている例もあり、絶滅回避のためにアツモリソウなどと同様、法的な販売規制を検討する必要もあろう。

なお、上記の流通状況の例外として四国産の濃色花系統、通称「四国黒スズムシ」がある。この系統は観賞価値が高く、園芸需要は多いが、野生個体はほぼ採集しつくされており、新規に採集品が入荷することはほとんどない。高額で販売でき、人工増殖でも採算がとれるため、クモキリソウ属では(斑入り個体などを例外にすれば)ほぼ唯一、商業増殖が試みられる種類となっている。

近縁種編集

クモキリソウ属は種類が多く、地域的な変異も多いため十分に分類研究は進んでいない。 学術的なものとは言えないが、生育状況から下記のように大別される場合もある。

  • 地生ー落葉種:本種のほかクモキリソウ、ジガバチソウなど。地上に生育する。
  • 地生ー常緑種:コクラン、ユウコクランなど。主として南方に分布し、冬も葉が残る。
  • 半着生ー落葉種:フガクスズムシなど、樹上の苔の中に根をはって生育する。
  • 着生ー常緑種:チケイラン、コゴメキノエランなどの南方種。樹幹などに直接着生する。

落葉種のほとんどは(難易度の差はあるが)いずれもスズムシソウと同様、長期栽培は難しい。 またコゴメキノエランは種の保存法により国内希少種に指定されており、原則として入手することはできない。シマクモキリソウLiparis hostifolia、ヒメジガバチソウL. krameri var. shichitoana、ヒメスズムシソウL. nikkoensis、クモイジガバチL. truncata、コゴメキノエランL. viridiflora絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト)に指定されている。