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生物の分類(せいぶつのぶんるい)では、生物を統一的に階級分類する方法を説明する。分類学学名Category:分類学ウィキスピーシーズも参照のこと。

目次

上位の分類階級編集

生物に関する科学的知見が蓄積されるにつれ、生物の分類は何度も修正されたが、特に20世紀末の分子系統解析の成果により、大きな修正が測られた。本稿ではこの分子系統解析の成果に基づいた近代的な系統分類を述べる。

 
生物全体に3ドメインへの分類

ドメイン編集

まず、分子系統解析(の一つである16S rRNA系統解析)によって得られた大きな成果は、生物全体がドメインと呼ばれる3つの単系統群細菌(Bacteria)、古細菌(Archaea)、真核生物(Eukaryota))に分類される事がわかったことである[1][2][3][4][5]。これは、これまで「原核生物」と称されていた真核生物以外の生物群が実は細菌古細菌という2種類の系統に分かれていた事を意味する。また(後生)動物のような我々のよく知る多細胞生物はいずれも真核生物に属するが、単細胞生物は、細菌真核生物古細菌のいずれのドメインにも属する。

 
細菌(青字)、真核生物(緑字)、古細菌(赤字)の関係。左は古細菌を単系統とする説(3ドメイン系統樹)、右はエオサイト説。エオサイト説に従えば、古細菌は真核生物を除いた側系統群であるということになる。

エオサイト説編集

なお、真核生物は古細菌から進化したとする有力な仮説(エオサイト説)がある。この仮説を認めた場合、古細菌は側系統群で、真核生物と古細菌をあわせた全体が単系統群である事になる為、単系統群のみを分類群とする原則に従えば、3つのドメインにわけるよりも、「真核生物+古細菌」と「細菌」の2つに分けるほうが適切という事になる。しかし本稿では、2018年現在多くの学術書等で採用されている3ドメイン説を前提に話を進めるものとする。

従来の分類との関係編集

3ドメイン説とそれまでの説の関係を以下にまとめた:

リンネ
1735年
2界説
ヘッケル
1894年
3界説
ホイタッカー
1969年
5界説
ウーズ
1977年
6界説
ウーズ
1990年
3ドメイン説[6]
具体例[7]
  原生生物 モネラ界 真正細菌 細菌 大腸菌、放線菌、藍色細菌
古細菌 古細菌(アーキア) メタン生成菌好熱好酸菌
原生生物 原生生物 真核生物 藻類原生動物変形菌類
植物 植物 菌界 菌界 キノコカビ地衣植物
植物 植物 コケ類シダ類種子植物
動物 動物 動物 動物 無脊椎動物脊椎動物

上の表の「動物界」、「植物界」などに登場する「界」という語は、生物の分類階級の一つで、3ドメイン説が登場するまでは最上位の分類階級として位置づけられていた。それに対し3ドメイン説ではまず生物全体を3つのドメインに分け、これらドメインよりも下位の分類階級として「界」を扱う。なお、日本の初等教育では3ドメイン説以前の二界説(2011年まで)ないし五界説(2012年以降)に基づいて生物の分類を説明している[8]

真核生物のスーパーグループ編集

分子系統解析によるもう一つの大きな成果は、真核生物がいくつかのスーパーグループという単系統群に分類でき、さらにそれらスーパーグループがいくつかのクラスターという単系統群にまとめられる事がわかった事である。以下に国際原生生物学会による公式的な分類体系(Adl et al. 2012)の概観を表に示した[9]

クラスター スーパーグループ 下位分類、具体例

アモルフェア

Amorphea

オピストコンタOpisthokonta ホロゾア Holozoa動物襟鞭毛虫 など)
Nucletmycea菌類 など)
アメーボゾアAmoebozoa ツブリネア Tubulinea古アメーバ類 Archamoebae原生粘菌(プロトステリウム目)Protosteliida変形菌(ホコリカビ類)Myxogastria

タマホコリカビ類 Dictyosteliaディスコセア DiscoseaGracilipodidaマルチシリア MulticiliaProtosporangiidaFractovitelliida

Schizoplasmodiida

エクスカバータ

Excavata

メタモナス類 Metamonadaフォルニカータパラバサリアプレアクソスチラ
Discobaユーグレノゾアヘテロロボサジャコバ類 など)
マラウィモナス Malawimonas
ディアフォレティケスDiaphoretickes アーケプラスチダArchaeplastida 緑色植物 Chloroplastida緑藻植物陸上植物など)
紅藻 Rhodophyceae
灰色藻 Glaucophyta
SAR

Sar

ストラメノパイル Stramenopiles 不等毛植物褐藻珪藻ラフィド藻黄金色藻黄緑藻など)、

オパリナ類ビコソエカ類ラビリンチュラ類サカゲツボカビ卵菌ディクチオカ藻ペラゴ藻、、シヌラ類など

アルベオラータ Alveolata 渦鞭毛藻アピコンプレクサ繊毛虫 など
リザリア Rhizaria クロララクニオン藻有孔虫放散虫 など

なお、未だこれらのスーパーグループに分類できていない生物もあるが、表を簡単にする為、それらの生物に関しては省略した。完全な表は真核生物の項目を参照。

下位の分類階級編集

ドメインやスーパーグループといった上位の分類の下には、 (kingdom) やphylum/division)といった、伝統的な分類階級がある。これら伝統的な分類体系は、あくまでも人が扱いやすくするための人為的なものである側面があることに注意する必要がある。ただしさまざまな分野で伝統的な分類体系を系統学の知見を反映させた体系に組替える動きが盛んである。

階級編集

以下では現時点で生物分類でほぼ一般的に使われている分類体系フレームを記述する。

和名 英名 ラテン語名 例:ヒト 例:ローズマリー 例:エノキタケ 例:大腸菌 例:A. ペルニクス
ドメイン: domain: regio: 真核生物 真核生物 真核生物 細菌 古細菌
: kingdom: regnum: 動物界 植物界 菌界 なし プロテオ古細菌界[10]
: phylum
/division
:
phylum
/divisio
:
脊索動物門
(脊椎動物亜門)
被子植物門 担子菌門 プロテオバクテリア門 クレン古細菌門
: class: classis: 哺乳綱 双子葉植物綱 菌蕈綱 γプロテオバクテリア綱 テルモプロテウス綱
: order: ordo: サル目 シソ目 ハラタケ目 腸内細菌目 デスルフロコックス目
: family: familia: ヒト科 シソ科 キシメジ科 腸内細菌科 デスルフロコックス科
: genus: genus: ヒト属
Homo
ローズマリー属
Rosemarinus
エノキタケ属
Flammulina
エスケリキア属
Escherichia
アエロピュルム属
Aeropyrum
: species: species: H. sapiens R. officinalis F. velutipes E. coli A. pernix
  • 門は、動物学と細菌学ではphylum、植物学、菌類学ではdivision/divisioと使い分ける。
  • 中間的分類が必要なときの階級名は、その分類単位よりも上位の分類には、大 (magn-)・上 (super-) を、下位の分類には、亜 (sub-)・下 (infra-)・小 (Parv-) などの接頭語を各階級の頭につけて生成させる。
  • subfamily亜科)とgenus(属)の間をさらに細分する必要があるときは、tribe(動物では族、植物では連)を使う。
  • subgenus亜属)とspecies(種)の間をさらに細分する必要があるときは、section(節)を使う。

分類名の接尾辞編集

属より上位の分類名には、植物・藻類・菌類については国際藻類・菌類・植物命名規約、動物・原生動物では国際動物命名規約、細菌・古細菌では国際原核生物命名規約で定められた規則的な接尾辞が付けられている。

分類単位
Taxon
植物
Plants

Algae

Fungi
動物
Animals
細菌古細菌
Bacteria, Archaea
Division/Phylum -phyta -phyta -mycota    
亜門 Subdivision/Subphylum -phytina -phytina -mycotina    
Class -opsida -phyceae -mycetes   (-ia)
亜綱 Subclass -idae -phycidae -mycetidae   (-idae)
Order -ales -ales -ales   -ales
亜目 Suborder -ineae -ineae -ineae   -ineae
上科 Superfamily -acea -acea -acea -oidea  
Family -aceae -aceae -aceae -idae -aceae
亜科 Subfamily -oideae -oideae -oideae -inae -oideae(現在使用されていない)
族(連) Tribe -eae -eae -eae -ini -eae(同上)
亜族(亜連) Subtribe -inae -inae -inae -ina -inae(同上)

分野によっては慣習的に、よく使われる語尾がある。たとえば、動物門の -zoa、綱の -morpha、目の -iformes、-ida、古細菌門の -archaeota などである。しかしこれらはルールではなく、例外が多い。原核生物では門の語尾を-aeotaに統一する提案が出されており、2018年以降に提唱された門はこの語尾を持つことが多い。

一般的分類例編集

原核生物編集

細菌(ドメイン:バクテリア)編集

古細菌(ドメイン:アーキア)編集

真核生物編集

原生生物界編集

植物界編集

菌界編集

動物界編集

分子系統学的分類例編集

 
全生物を対象にした系統樹の1例。色は生物分類表に従っている

20世紀後半から勃興した、タンパク質アミノ酸配列や核酸塩基配列決定法の技術、そしてそのデータを用いて系統の類縁関係を推定する解析手法の進展に伴って、従来の生物系統分類法は大きな変革を迫られている。特に、これまで他のグループに所属させることができないために一括りに分類されていた、原生生物や藻類、一部の菌類につき系統が大幅に見直されつつある。学問上は二界説ないし五界説は既に瓦解したと言っても過言ではない。ここではキャヴァリエ=スミス (Thomas Cavalier-Smith) らが中心となって提唱している分子系統学的分類の一例を示す(ただし現生生物のみ)。従来の界、門、綱との整合性は今後の課題である。この分野は現在さらに進展しつつあるため、今後も大小の変更があり得る。

歴史編集

アリストテレスの分類編集

どのような分類体系が合理的かは、アリストテレス以来さまざまな工夫がされ、案が出されてきた。彼の『動物誌』では動物分類は次のようになる。

  1. 有血動物
    1. 胎生
      1. 人類
      2. 胎生四足類
      3. 鯨類
    2. 卵胎生
      1. 軟骨魚類
    3. 卵生
      1. 鳥類
      2. 卵生四足類
      3. 無足類
    4. 不完全卵生
      1. 魚類
  2. 無血動物
    1. 不完全卵生
      1. 軟体類
      2. 軟殻類
    2. 蛆生あるいは自然発生
      1. 有節類
    3. 無性生殖または自然発生
      1. 殻は類
      2. その他

アリストテレスの権威が絶対とされた中世は、この動物分類が支配的であった。

リンネの分類編集

近代的な分類法の刷新はリンネから始まった。

リンネは種の学名に二名法(属名と種小名の2語で表す)を採用し、分類を体系づけた。また、属・種の上位分類として、綱・目を設けて、階層的な分類体系とした。

現在の生物分類でもこのルールは変わっていないが、リンネの時代に比べると階層構造はより多段階となっている(後述)。

しかしリンネの分類自体が現在もそのまま生きているわけではない。例えば、リンネはクジラ魚類に分類していたがこれは誤りであった。また植物おしべの本数を元に分類したことは有名だが、現在の植物分類ではこの分類手法は捨てられている。

また、リンネの時代には「進化」の概念がなかったため、リンネの分類はあくまでも形態の類似異同の差異による操作に限られる限界があった。

五界説編集

ドメインの提唱編集

1937年シャットン (E. Chatton) は、生物全体を原核生物 Prokaryota真核生物 Eukaryota の2つの empire に分類した。

1990年、ウーズは、原核生物を細菌(バクテリア)と古細菌アーキア)に分割し、また階級名をドメインとした。ウーズによれば、生物全体は、真核生物細菌古細菌に分かれる。

脚注編集

  1. ^ Adl, Sina M.; Simpson, Alastair G. B.; et al. (2012), “The Revised Classification of Eukaryotes”, J. Eukaryot. Microbiol. 59 (5): 429–493, http://www.paru.cas.cz/docs/documents/93-Adl-JEM-2012.pdf 
  2. ^ 伊藤元己 (2012/5/1). 太田次郎、赤坂甲治、浅島 誠、長田敏行. ed. 植物の系統と進化. 新・生命科学シリーズ. 裳華房. ISBN 978-4785358525.  p6
  3. ^ Lisa A. Urry; Michael L. Cain; Steven A. Wasserman; Peter V. Minorsky; Jane B. Reece 池内昌彦、伊藤元己、箸本春樹 、道上達男訳 (2018/3/20). キャンベル生物学 原書11版. 丸善出版. p. 655. ISBN 978-4621302767. 
  4. ^ P. レーヴン; J. ロソス; S. シンガー; G. ジョンソン (2007/5/1). レーヴン ジョンソン 生物学〈下〉(原書第7版). 培風館. p. 518. 
  5. ^ 藤田敏彦 『動物の系統分類と進化』 裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2010年4月28日ISBN 978-4785358426p91
  6. ^ Woese C, Kandler O, Wheelis M (1990年). “Towards a natural system of organisms: proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya.(生物の自然機構について:古細菌、細菌、真核生物の3ドメインの提案)”. Proc Natl Acad Sci U S A 87 (12): 4576-9. PMID 2112744. 
  7. ^ ここに載せた具体例は下記より引用:藤田敏彦 (2010/4/28). 動物の系統分類と進化. 新・生命科学シリーズ. 裳華房. ISBN 978-4785358426.  p91
  8. ^ 中学校理科教科書「未来へ広がるサイエンス」”. 啓林館. 2018年7月11日閲覧。
  9. ^ Adl, Sina M.; Simpson, Alastair G. B.; et al. (2012), “The Revised Classification of Eukaryotes”, J. Eukaryot. Microbiol. 59 (5): 429–493, http://www.paru.cas.cz/docs/documents/93-Adl-JEM-2012.pdf 
  10. ^ 古細菌の界分類については安定していない。ここではユーリ古細菌界とプロテオ古細菌界に2分する方式を採用した

関連項目編集