ネララビン (nelarabine) は、 T細胞性急性リンパ性白血病およびT細胞リンパ芽球性リンパ腫の治療に用いられる化学療法薬である。開発コード506U78として知られていた。薬剤名はアラノンジー[1]

ネララビン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 アラノンジー
Drugs.com monograph
ライセンス EMA:リンクUS FDA:リンク
胎児危険度分類
  • US: D
法的規制
  • JP: 劇薬、処方箋医薬品
  • US: -only
投与経路 経静脈投与
薬物動態データ
生物学的利用能n/a
血漿タンパク結合<25%
代謝By adenosine deaminase, to 9-β-D-arabinofuranosylguanine
半減期30 minutes (nelarabine)
3 hours (ara-G)
排泄Renal
識別
CAS番号
121032-29-9 チェック
ATCコード L01BB07 (WHO)
PubChem CID: 3011155
IUPHAR/BPS 7090
DrugBank DB01280 チェック
ChemSpider 2280207 チェック
UNII 60158CV180 チェック
KEGG D05134  ×
ChEMBL CHEMBL1201112 ×
化学的データ
化学式C11H15N5O5
分子量297.268 g/mol
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ネララビンは、アラビノシルグアニン・ヌクレオチド三リン酸(araGTP)のプロドラッグであり、 プリン ヌクレオシド類似体の一種であり、これはDNA合成の阻害および細胞毒性を引き起こす[2]。前臨床試験はT細胞がネララビンに特に感受性があることを示した。2005年10月に、少なくとも2つの化学療法レジメンによる治療に反応しなかった、またはその後に再発した急性リンパ芽球性白血病およびT細胞リンパ芽球性リンパ腫についてFDAにより承認された[3]。それは後に2005年10月に欧州連合で承認された。

ネララビンは日本ではアラノンジー、米国でArranon Gとして、EUではAtrianceとしてノバルティスより販売されている[4][リンク切れ]

効能効果 編集

再発または難治性の下記疾患については、以下のものが挙げられる。

  • T細胞急性リンパ性白血病
  • T細胞リンパ芽球性リンパ腫

作用機序 編集

ネララビンはアデノシンデアミナーゼによって速やかにara-Gに脱メチル化された後、デオキシグアノシンキナーゼ及びデオキシシチジンキナーゼによって細胞内で5'-一リン酸化体にリン酸化される。5'-一リン酸化体は再度細胞内で三リン酸化体のara-GTPにリン酸化される[5]。白血病芽球内にara-GTPが蓄積すると、デオキシリボ核酸(DNA)にara-GTPが優先的に取り込まれる。DNAに組み込まれたara-GTPのためにDNA伸長・合成が阻害されて、最終的に細胞死が誘導される[6]

ネララビンはヒトT細胞性白血病細胞株に対して強い細胞障害活性を示したが、ヒトB細胞株に対する細胞障害活性は弱かった。

副作用 編集

重篤な副作用については、以下のものが挙げられる。

  • 神経系障害[1]
    • 傾眠、感覚性及び運動性ニューロパシー、感覚減退、てんかん様発作
  • 感染症[1]
    • 致死的な日和見感染のおそれ
  • 肝障害[7]
    • 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸[1]
  • 横紋筋融解症[1]

脚注 編集

  1. ^ a b c d e アラノンジー KEGG
  2. ^ Nelarabine”. Guide to Pharmacology. IUPHAR/BPS. 2015年8月21日閲覧。
  3. ^ Cohen, M. H.; Johnson, J. R.; Justice, R; Pazdur, R (2008). “FDA drug approval summary: Nelarabine (Arranon) for the treatment of T-cell lymphoblastic leukemia/lymphoma”. The Oncologist 13 (6): 709–14. doi:10.1634/theoncologist.2006-0017. PMID 18586926. 
  4. ^ http://www.novartisoncology.com/products/atriance.jsp
  5. ^ Lambe,C.U.et al., Cancer Res.1995;55(15);3352.
  6. ^ Rodriguez,C.O.Jr.et al., Cancer Res.1999:59(19);4937.
  7. ^ 飯野昌樹、「ネララビン投与後著明な肝障害を来したT-cell lymphoblastic lymphoma」 臨床血液 2009年 50巻 1号 p.49-51, doi:10.11406/rinketsu.50.49

関連項目 編集

外部リンク 編集