ハズ油(ハズゆ、巴豆油、: croton oil: Crotonis Oleum)は、トウダイグサ目トウダイグサ科ハズ属の樹木であるハズ学名: Croton tiglium)の種子から調製される油脂である。ハズはインドおよびマレー諸島において自生あるいは栽培されている。少量を内用すると下痢を引き起こす。外用では炎症および腫れを引き起こす。伝統中国医学では、一部の塗布薬英語版の成分として使用されている。

ハズ油には有機化合物ホルボールエステル類が含まれており[1]発がん促進作用を示す[2]

その痛烈な剥離作用のため、今日ハズ油はケミカル・ピール(化学薬品を使った皮膚の剥離)による若返りのために用いられている。フェノール溶液と併せて使用される。

ハズ油は非常に刺激性が強く痛みを伴うため、実験動物に対して痛みや鎮痛、抗炎症薬、免疫学の研究のために使用されている[3]

第二次世界大戦中、アメリカ海軍は少量のハズ油を魚雷の燃料である中性穀物アルコール英語版に添加していた。これは、水兵がこのアルコール燃料を飲用するのを防止するためであった。アルコールはハズ油よりも低温で気化するため、水兵らは簡単な蒸留器を考案しアルコールとハズ油を分離していた[4]。こうして燃料アルコールから分離したアルコールは魚雷ジュースと通称された。

脚注 編集

  1. ^ Meyer-Bertenrath, JG (1969). “150 Years of croton oil research”. Experientia 25 (1): 1–5. doi:10.1007/BF01903855. PMID 4885798. 
  2. ^ Berenblum, I. (1941). “The cocarcinogenic action of croton resin”. Cancer Res. 1: 44-51. http://cancerres.aacrjournals.org/content/1/1/44.full.pdf+html. 
  3. ^ PubMed search for "croton oil"
  4. ^ Ostlund, Mike. Find 'em, chase 'em, sink 'em, Globe Pequot, 2006, p. 88. ISBN 1592288626

関連項目 編集