ヒルディブランドの挽歌ドイツ語: Hildibrands Sterbelied[1][2][注 1]は、『勇士殺しのアースムンドのサガ』の一部。このサガは全10章からなるが、そのうち9章目にある韻文。しばしば古エッダの一つに数えられる。

ヒルディブランドは祖父のかたきのスウェーデン王を殺した。王の娘の婚約者がアースムンドで、王の仇討ちを約束した。ところが実は彼はヒルディブランドの異母兄だった。2人は戦い、ヒルディブランドが倒れた。その死のまぎわに歌う6節の短い歌。

1節目は「兄弟殺しに生れついた者がどうなるか、予想するのはすこぶる難事だ。ダンメルクでドロットがあなたを生み、スヴィジオーズでわたしを生んだのだ。」(谷口幸男訳)

類似伝承 編集

  • 9世紀の『ヒルデブラントの歌』が知られている最古の類似伝承。ヒルデブラントテオドリック王の功臣。生き別れの息子ハドゥブランドに会い、自分が父だと自己紹介したら、ハドゥブランドは死んだ父の名をかたる偽者と誤解し、2人が戦う。結末は失われて不明。
  • デンマーク人の事績』第7では騎士ヒルディゲル (Hildiger) が弟ハルダン (Halfdan) と戦って死ぬ。その直前に兄だと打ち明ける。
  • シズレクのサガ』ではシズレク(テオドリック王)の功臣ヒルデブランドは、その子アリブランド (Alibrand) と戦う。腕試しであって殺し合いにはならない。
  • ニーベルンゲンの歌』のテオドリック王の功臣ヒルデブラントは、最後にクリームヒルトを殺すが、肉親殺しのエピソードはない。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 日本語題について、「ヒルディブランドの挽歌」の表記は西田 (1991), p. 204に、「ヒルデブランドの挽歌」の表記は谷口 (1973), p. 222にみられる。

出典 編集

参考文献 編集

  • 西田, 郁子「勇士殺しのアースムンドのサガ」『サガ選集』日本アイスランド学会(編訳)、東海大学出版会、1991年5月17日、203-229頁。ISBN 4-486-01152-X 
  • 『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口, 幸男 訳、新潮社、1973年8月30日。ISBN 978-4-10-313701-6 
  • Neckel, Gustav; Kuhn, Hans (1983). Edda: die Lieder des Codex Regius. 1. Text. (5 ed.). Heidelberg: Winter. ISBN 3-533-03081-4 
  • Simek, Rudolf; Pálsson, Hermann [in 英語] (2007). "Hildibrands Sterbelied". Lexikon der altnordischen Literatur (2 ed.). Stuttgart: Kröner. p. 180. ISBN 978-3-520-49002-5

関連項目 編集