フラサバソウ(学名:Veronica hederifolia)とはオオバコ科クワガタソウ属植物の一種。ヨーロッパ原産で、日本には外来種として定着している。別名を「ツタバイヌノフグリ」[1]といい、学名及び英名も同じ意味である。

フラサバソウ
フラサバソウ(テネシー州ナッシュビルで撮影)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: オオバコ科 Plantaginaceae
: クワガタソウ属 Veronica
: フラサバソウ V. hederifolia
学名
Veronica hederifolia
L.
和名
フラサバソウ
英名
Ivy-leaved Speedwell

分布 編集

ヨーロッパを原産地とする[2]

日本では明治初期に長崎県で初めて確認され[2]、今では全国に帰化している。

特徴 編集

草丈10-30cmほどの越年草[1]。薄紫色の小さな花をつける。オオイヌノフグリなどより発芽の時期が遅く、花期になっても子葉が残っているのが特徴。コゴメイヌノフグリタチイヌノフグリの中間のような形態を示し、毛が多い。しかし、コゴメイヌノフグリとは果実に毛がないことから区別できる[3]

道端などの草地に生え、雑草となっている。

名前のこと 編集

和名は、フランスの植物学者であるフランシェサバティエの名前を組み合わせたものである[1]

サバチェは江戸末期から明治にかけて日本に滞在した医者で、当時新設された横須賀造船所でフランス人技師や日本の役人の健康管理にあたり、また近隣住民にも医療を施した[4]。その一方で植物学者でもあった彼は熱心に植物採集を行い、標本を本国の友人で植物学者のフランシェに送った。この二人は連名で『日本植物目録』を出し、その中で本種が明治初年に長崎で採集されたことを記録していた。しかしその後日本でこれを採集したものがおらず、一度は誤りであろうと考えられた。ところがその後、明治44年に田代善太郎が長崎で採集した標本が国立科学博物館の奥山春季が発見し、二人の記録が正しかったと確認されたとして、この二人の名を並べてこの和名を発表したものである。ただし2人の名前を半分に切ってつなぐというのは何とも荒っぽい手法と思われ、近田他編(2006)ではこれをステレンキョウとテレスコと比較して論じている。ついでにサバチェに協力した日本人技師が佐波一郎だったという名前繋がりの奇妙な符合にまで触れている。

参考文献 編集

  1. ^ a b c 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日。ISBN 4-7980-1485-0 p.34
  2. ^ a b 鶴内孝之、古屋忠彦、村山祥子、島野至、松本重男「フラサバソウの生育,開花及び結実に及ぼす温度の影響 : オオイヌノフグリと対比して」『雑草研究』第33巻第3号、日本雑草学会、1988年10月31日、185-190頁、NAID 110003931886 
  3. ^ 大谷雅人、フラサバソウ、2012年1月20日閲覧。
  4. ^ この段、近田他編(2006),p.15-16

 

  • 近田文弘他編、『帰化植物を楽しむ』、(2006)、トンボ出版