フレシェ分布(英語: Fréchet distribution) は逆ワイブル分布としても知られている。フレシェ分布は、ガンベル分布(タイプIの極値分布)、ワイブル分布(タイプIIIの極値分布)とともに、一般化極値分布(generalized extreme value distribution)の特別なケースである。フレシェ分布はタイプIIの極値分布と呼ばれる。

フレシェ分布
確率密度関数
フレシェ分布の確率密度関数
位置パラメータが0の場合
累積分布関数
フレシェ分布の累積分布関数
位置パラメータが0の場合
母数 形状 (shape) パラメータ.
(以下の2つのパラメータを追加できる)
尺度 (scale) パラメータ (default: )
位置 (location) パラメータ (default: )
確率密度関数
累積分布関数
期待値
中央値
最頻値
分散
歪度
尖度
エントロピー , ここで はオイラー・マスケローニ定数。
モーメント母関数 モーメント  ならば存在する。
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フレシェ分布の名称は、フレシェ分布を発見した数学者モーリス・ルネ・フレシェに由来する(高橋・志村、2016)。

研究の発展編集

モーリス・ルネ・フレシェは、1927年に、Fréchet (1927) において、最大値の漸近分布を考察している(Kotz and Nadarajah 2000)。フレシェ分布の研究は、さらに、ロナルド・フィッシャーとL・H・C・ティペットの1928年の共著論文によってなされている(Fisher and Tippett, 1928)。Fisher and Tippett (1928) は、極値分布がガンベル分布(タイプI)、フレシェ分布、ワイブル分布(タイプIII)の3つのいずれか1つのみであることを示した。エミール・ユリウス・ガンベルは、フレシェ分布を含む極値分布の研究を詳細に行い、1958年に極値統計学の書籍をまとめた(Gumbel, 1958)。

定義と性質編集

フレシェ分布の累積分布関数は

 

である (Alves & Neves 2011) 。ここで、α > 0は、形状パラメータである。フレシェ分布の確率密度関数は

 

となる。

フレシェ分布の期待値と分散は以下の通りとなる (Alves & Neves 2011)。

  • 期待値は となる。
  • 分散は となる。

ここで、 ガンマ関数であり、

 

である。

ガンベル分布(タイプI)、フレシェ分布(タイプII)、ワイブル分布(タイプIII)は、一般化極値分布(The Generalized Extreme Value Distribution)として単一の分布関数で表現できる(Coles, 2013, p. 47)。

一般化フレシェ分布編集

位置パラメータm (最小値)と尺度パラメータs > 0を含めることで、フレシェ分布を一般化することができる (Alves & Neves 2011)。一般化フレシェ分布の累積分布関数は

 

である。一般化フレシェ分布の確率密度関数は

 

となる。

応用例編集

  • 水文学 において、フレシェ分布は、1日当たり降水量の年間最大値のような極端な現象に適用される。
  • 金融において、フレシェ分布は、市場収益をモデル化するために使われてきた (Alves & Neves 2011) 。
  • 国際経済学貿易論)において、リカード・モデルを連続財・多数国モデルに拡張した著名な研究Eaton and Kortum (2002) は、国iの各財を生産する効率性( ) の分布が次のフレシェ分布に従うと仮定した。
 
  • ここで、 が形状パラメータ(定義式の )に相当する。 が小さいほど、効率性の分散が大きくなり、比較優位の役割が大きくなる。 は、分布の場所を左右する追加的なパラメータである。 が大きいほど、効率性が高められ、絶対優位が強くなる(Eaton and Kortum, 2002)。

関連文献編集

  • Alves, I. F., & Neves, C. (2011). Extreme value distributions. International encyclopedia of statistical science, 493-496. https://www.researchgate.net/publication/234154838_Extreme_Value_Distributions
  • Beirlant, J., Goegebeur, Y., Segers, J., & Teugels, J. L. (2006). Statistics of extremes: theory and applications. John Wiley & Sons. https://doi.org/10.1002/0470012382
  • Coles, S. (2013). An Introduction to Statistical Modeling of Extreme Values. Springer Science & Business Media. https://doi.org/10.1007/978-1-4471-3675-0
  • Eaton, J., & Kortum, S. (2002). Technology, geography, and trade. Econometrica, 70(5), 1741-1779. https://doi.org/10.1111/1468-0262.00352
  • Eaton, J., & Kortum, S. (2012). Putting Ricardo to work. Journal of Economic Perspectives, 26(2), 65-90. https://doi.org/10.1257/jep.26.2.65
  • Fréchet, M., (1927). "Sur la loi de probabilité de l'écart maximum." Ann. Soc. Polon. Math. 6, 93.
  • Fisher, R. A., & Tippett, L. H. C. (1928, April). Limiting forms of the frequency distribution of the largest or smallest member of a sample. In Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Society (Vol. 24, No. 2, pp. 180-190). Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/S0305004100015681
  • Gumbel, E.J. (1958). "Statistics of Extremes." Columbia University Press, New York.
  • Kotz, S.; Nadarajah, S. (2000) Extreme value distributions: theory and applications, World Scientific. https://doi.org/10.1142/p191
  • 高橋倫也, & 志村隆彰. (2016). 極値統計学. 近代科学社.

関連項目編集