ベンス・ジョーンズ蛋白

ベンス・ジョーンズ蛋白(ベンス・ジョーンズたんぱく)は、尿中に含まれる分子量22-24kDaのモノクローナルなグロブリンタンパク質または免疫グロブリン軽鎖を指す[1]。ベンス・ジョーンズ蛋白の検出は、多発性骨髄腫または原発性マクログロブリン血症(ワルデンシュトレームマクログロブリン血症英語版とも呼ばれ、WMと略される。)を示唆する場合がある[要出典]

ベンス・ジョーンズ蛋白の結晶。

ベンス・ジョーンズ蛋白は、腎不全、溶骨性病変(または「打ち抜き像(punched-out lesion)」)、貧血、または骨髄中の多数の形質細胞などの標的臓器における症状の発現と関連して、特に多発性骨髄腫の診断に有用とされている。また、ベンス・ジョーンズ蛋白は、多発性骨髄腫の2/3の症例に認められる[2]

このタンパク質は免疫グロブリン軽鎖パラタンパク英語版)であり、腫瘍性英語版形質細胞によって産生される。多発性骨髄腫をはじめとする単クローン性γグロブリン血症などにおいては、単クローン性の形質細胞が増殖することで、κ<カッパ>型(ほとんどの場合)、或いはλ<ラムダ>型のどちらかの軽鎖(L鎖)となる[2]。そして、それらの増加がみられることで、κ/λ比は異常を示す。軽鎖は、免疫グロブリンの断片であったり、単一の均質な免疫グロブリンであったりする。軽鎖は、腎不全による腎臓の濾過機能の低下や骨破壊に伴うカルシウムの放出による高カルシウム血症、多尿による脱水アミロイドーシス、軽鎖そのものといった原因によって尿中で見つかることがある[要出典]

検出法

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軽鎖は、歴史的には尿検体を加熱すること(これによりタンパク質が沈殿する)で検出されていたが、現在では濃縮尿の電気泳動によって検出されている[3]。最近では、血清免疫グロブリン遊離軽鎖(FLC)検査法英語版が、特に非分泌型多発性骨髄腫[4][5][6]ALアミロイドーシス英語版[6][7][8] [9]に見られるような低レベルのモノクローナル遊離軽鎖を生成する患者に対して、尿検査より優れていることを示した多くの研究発表のもとで利用されている。

歴史

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ベンス・ジョーンズ蛋白は、1847年にイギリスの医師であるヘンリー・ベンス・ジョーンズ英語版によって記され、1848年に発表された[10]

参考文献

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  1. ^ Bernier, G. M. & Putnam, F. W. (1963). Nature (London), 200, 223±225.
  2. ^ a b Essential Haematology (Essential) (5th ed.). Blackwell Publishing Professional. (2006). p. 218. ISBN 978-1-4051-3649-5. https://archive.org/details/essentialhaemato00hoff 
  3. ^ Bence Jones Protein Test”. TheFreeDictionary.com. 2021年11月25日閲覧。
  4. ^ “Serum free light-chain measurements for identifying and monitoring patients with nonsecretory multiple myeloma”. Blood 97 (9): 2900–2. (May 2001). doi:10.1182/blood.V97.9.2900. PMID 11313287. 
  5. ^ Shaw GR (August 2006). [1212:NPCMEM2.0.CO;2 “Nonsecretory plasma cell myeloma--becoming even more rare with serum free light-chain assay: a brief review”]. Archives of Pathology & Laboratory Medicine 130 (8): 1212–5. doi:10.5858/2006-130-1212-NPCMEM. PMID 16879026. http://www.archivesofpathology.org/doi/10.1043/1543-2165(2006)130[1212:NPCMEM]2.0.CO;2. 
  6. ^ a b “Diagnostic performance of quantitative kappa and lambda free light chain assays in clinical practice”. Clinical Chemistry 51 (5): 878–81. (May 2005). doi:10.1373/clinchem.2004.046870. PMID 15774572. 
  7. ^ “Outcome in systemic AL amyloidosis in relation to changes in concentration of circulating free immunoglobulin light chains following chemotherapy”. British Journal of Haematology 122 (1): 78–84. (July 2003). doi:10.1046/j.1365-2141.2003.04433.x. PMID 12823348etal 
  8. ^ “Quantitative analysis of serum free light chains. A new marker for the diagnostic evaluation of primary systemic amyloidosis”. American Journal of Clinical Pathology 119 (2): 274–8. (February 2003). doi:10.1309/LYWM-47K2-L8XY-FFB3. PMID 12579999. 
  9. ^ “Quantitative serum free light chain assay in the diagnostic evaluation of AL amyloidosis”. Amyloid 12 (4): 210–5. (December 2005). doi:10.1080/13506120500352339. PMID 16399645etal 
  10. ^ Jones HB (1848). “On a new substance occurring in the urine of a patient with mollities ossium”. Philosophical Transactions of the Royal Society 138: 55–62. doi:10.1098/rstl.1848.0003. 

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