マルコフの不等式は、測度論的には、(X, Σ, μ) を測度空間とし、f を拡張実数値(無限大もとりうる)可測関数とし、t > 0 とすれば、
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であることを述べる。空間の測度が 1 である特別な場合(つまり確率空間である)には、次のように言い換えられる:
X を任意の確率変数とし、a > 0 とすると、
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測度空間が確率空間である場合は証明が単純で分かりやすいので、この場合の証明をまず別に示そう。
任意の事象 E に対して、IE を E の特性確率変数、つまり E が起きるならば IE = 1、そうでないならば = 0 であるとする。すると、事象 X ≥ a が起きるならば I(X ≥ a) = 1 であり、X < a ならば I(X ≥ a) = 0 である。そこで
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ゆえに
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ここでこの不等式の左辺は
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と同じであることが解る。従って
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となり、 a > 0 だから、両辺を a で割ればよい。
任意の可測集合 A に対して、1A をその特性関数、つまり x ∈ A ならば 1A(x) = 1 、そうでなければ 0 としよう。At を At = {x ∈ X| |f(x)| ≥ t} として定義すれば、
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となり、ゆえに
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ここで、この不等式の左辺は
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と同じであることに注意しよう。すると
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であり、また t > 0 であるから、両辺を t で割れば
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となる。
- マルコフの不等式は、チェビシェフの不等式の証明に用いられる。
- X を非負整数値確率変数とする(組合せ論でよくあるように)と、マルコフの不等式で a = 1 とすることにより が得られる。X をある集合の濃度とすると、これからこの集合は空集合ではないことが証明される。このように存在証明への応用も可能である。